パソコンによる油絵のエスキース
アイデアを油絵にする過程で、どうパソコンを使っているか紹介します。
今回の作品は0号(縦18cm 横14cm)の小品、万葉集シリーズ「たゆらき」、このところ続いている相聞(恋愛歌)の連作のひとつです。テーマ歌は
絶等寸の 山の峰の上の 桜花 咲かむ春へは 君し思はむ
(絶等寸の 山の上の 桜の花が 咲く春ごろになったら あなたも思い出してくださるでしょう)
絶等寸(たゆらき)は地名なので横に置いておいて、山と桜を文様の中心題材としました。その文様に入る前に歌の気持ちに合った人物の姿勢・仕草の形を探ります。
このアイデアスケッチは実際の0号の大きさを考えながら、グラフィックソフトPainterで描いています。絵コンテみたいなものです。パソコン画面では拡大自由なので実寸を忘れると小さすぎて描けないエスキースになってしまいます。
アイデアスケッチに従ってモデルにポーズを取ってもらいますが、この段階でのポーズの変更はよくあることです。イメージの中の人間と現実の姿のギャップは常にありますが、そこをどうするかは色々です。結果として現実の人間が取れないポーズになっても良いと思っています。
最初のPainterでの絵コンテみたいなアイデアスケッチにそのまま手を加えて最終的なエスキースの形を決めていきます。この辺りの柔軟性がパソコンの良いところです。
ここから定番のグラフィックソフトPhotoshopの登場です。まず文様のベースとなる地色を塗ります。ただ背景のグレーは実際は反射する真っ白な画面なのでエスキースと油絵はかなり違います。
第一案、着物の文様に山、髪飾りの文様に桜、文様をどんどん置いてみます。
第二案、着物を山と空、背景に桜をプラス、しかし、松皮段替わりの斜線がうるさく色も良くないですね。
第三案、第四案、、、、バリエーションを簡単に作れるのがパソコンの良いところ。紆余曲折を経てこれに決まりました。髪飾りの雄蘂のところに青貝を埋め込んだ効果もシミュレーションしています。
完成した油絵です。振り返ってみると最初のアイデアスケッチより少しポーズが堅苦しくなってしまったのが残念です。