見出し画像

1、リーダー像のステレオタイプ

リーダーというのは、一部の隙間もなくチームを引っ張っていくものであり、時に叱咤し、自分の理想に向かって突き進んでいく。

私も管理職になりたての頃は、知らず知らずの内に、こう自分にプレッシャーを与えていたように思います。

ある時、部下から「パラハラで訴えます。」と言われたこともありました。相当な動揺もありましたが、確かに気を急ぎすぎたのかもしれません。

退社後、独立したての頃は、それこそその考えを教えていた学校にも持ち込んでいました。自分の思い通りの型に懸命当てはめようとしていました。「アイデアを自由に発想する授業なのに、先生の厳しい態度が、自由に発言できない雰囲気を作っている。」と意見される事もあり、結果的に学生の心は離れ、クラスの雰囲気が最悪になったこともあります。

2、対話型アート鑑賞との出会い

それから数年経ち、対話型アート鑑賞に出会いました。

画像1

最初は、同僚3人でアートにタイトルをつけあいました。一人は「月の満ち引き」といい、もう一人は「仲間はずれ」だったかな。そして私は「雲の群れ」だっただろうか。そのアートには、小さな雲のようなものが月のように群れている様子を描いたものでしたが、確かにそれぞれ、そう言われればそう思えるもので、同じ物を見ていても、こうも印象は変わるものだと感心したものでした。

こうして対話型アート鑑賞の面白さに気づき、ファシリテーターとして関わり、およそ数百人の方々との出会いがありました。ファシリテーターは、同じアートを何百回と観ることになるのですが、その度に面白いように新しい視点や気づきが生まれます。毎回、「そんな発見があったのか!」と驚かされます。

そして、プログラムが終わると、ファシリテーター、参加者同士の関係性が、とても柔らかいものになります。そして、そもそも、なんといってもファシリテーターの方が楽しい!

ここに、ひょっとしたらリーダーとしてのコミュニケーションの本質があるように感じたのです。

3、対話型アート鑑賞で生まれる場とは?

画像2

対話型アート鑑賞は、多くの体験者から「何を言っても許される雰囲気があって、もっと言いたいという気持ちなった」との感想をいただきます。これは、昨今、チームビルディングにおいて肝要とされている心理的安全性! ヤフー、メルカリなど、多くのIT企業で取り入れられている1on1ミーティングにおいても、こうした関係性が大切だとされています。

某商社の研修を一手に引き受ける人材会社のご担当にも「心理的安全と言葉で言っても、なかなか伝わらないけれど、これほどまでに簡単に再現できるのはいいですね」とおっしゃっていただきました。

4、対話型アート鑑賞におけるファシリテーターの心構え

アクティブリスニング(ActiveListening)は、アメリカの臨床心理学者であるカール・ロジャース博士が1957年に提唱した「傾聴姿勢」のことです。カウンセリングに活用できるコミュニケーション技法の一つであり、日本語では「積極的傾聴」と訳されます。近年は、カウンセリングだけでなくビジネスシーンにおいても積極的に取り入れられています。 アクティブリスニングの特徴は、会話をする中で相手の感情や事実を読み取り、主体的に把握することにあります。相手の話を受動的に聞くだけでは、言葉に込められた本質を見極められません。アクティブリスニングによって、相手が抱える問題点や要望を発見し、自己解決へ導くことが可能です。企業においては、特に管理職やリーダー職である人が身につけておきたいスキルだと言えます。

管理職、リーダーにおいて必要とされる「積極的傾聴」。ただ、誰でもすぐに対応できるものではありません。そもそも上司からみれば、部下の業務にいろいろ注文をつけたくなるのは心情であり、特に中間管理職ともあろうものならば、事業部長と握った目標が常に頭をもたげ、部下の業務成果との差分が常に気になるものです。ついつい手取り足取りのマイクロマネジメントに終始してしまう...

人財育成を一足飛びに業務成果と同じような達成ペースで考えてしまうこともあるでしょう。上司が求める業務内容をそのまま伝えれば、短期的には業務は進むが、結局は部下はあなたの指示を待つ「指示待ち人間」になってしまう。中期には、あなたの業務を圧迫することになるのです。

さて、一方、対話型アート鑑賞におけるファシリテーターの「積極的傾聴」は、とてもシンプルです。

5、なぜ? ではなく、どこから?

参加者の発言に対して「なぜですか?」ではなく「どこからそう思ったのですか?」と問う。

参加者にとって「なぜ?、そう思ったのですか?」と問われると、訊問されたように感じるようです。結果、その場でいろいろ答えを見繕ってしまう傾向になります。「どこから、そう思ったのですか?」と聞くと、その答えのとっかかりを目の前にあるアートから探す事になります。結果、心理的なプレッシャーを感じることなく、今目の前に見えているアートという事実にもとづいて答える事ができるのです。

「どこから?」というのは、実は論理的思考でもあります。何か課題にぶち当たった時に、やみくもに解決案を探るのではなく、まずは客観情報から課題を探る。「どこから?」というのは、自分の判断の根拠を探す行為そのものです。

6、パレフレーズで共感を

参加者の発言に対して「○○○ということですね。なるほど、確かにそう見えますね。素晴らしい視点ですね!」と応える。

参加者の発言を言い方を変えて伝える「パラフレーズ」は共感を伝える有効な方法です。参加者の発言を積極的に理解しないと、パラフレーズはできません。理解している、共感していることをしっかり伝えることができます。加えて「確かにそう見えますね」と肯定するのです。こうすることで、自分がその場で受けいられていることを感じる事ができます。

加えて、もう一つ、とても単純ですが、当社のプログラムにおいて大切な進め方があります。

7、順番に話すという安心感

順番にひとりづつ、必ず全員に発言してもらう。

対話型アート鑑賞も、いまでは様々な団体で実践されているプログラムですが、その多くはファシリテーターが対話の場にもたらされる発言に応じて、随時、参加者に発言を投げかけて進行していきます。

これは、その投げかけられた視点を深堀するのに非常に有効な方法ですが、その対話を進行するファシリテーターに高い能力が求められます。

当社の対話型アート鑑賞は、あえてそれをせず、順番に発言してもらうことにしています。そうすることで、全員の発言機会が担保され、全員にとってのプログラムの満足度が高くなるのです。実際、当社の調査でも、参加者の満足度は発言量と比例するという結果が得られています。

これが、外国人がはいると少々進め方は異なってきます。以前、東京工業大学で「外国人のみのグループ」「日本人のみのグループ」で行ったところ、外国人グループでは「私も言いたい!」とアジャイルに対話が進行しました。一方、日本人グループは、順番に発言を促すことによって安堵感をもって発言が促されました。参加者の特性に応じて、多少の調整は必要になってくるのだと思います。

8、リーダーの素養としての傾聴力

傾聴というと、”単に聞くだけ”といった印象を持たれる方もいると思いますが、その実、それなりの工夫は必要です。”積極的”傾聴は、参加者の発言を肯定しながら促し、そしていかにして共感を伝えるかです。

それによって、心理的安全性が担保され、上司、部下、同僚との関係性がゆるやかに変わってくるはずだと思います。

記事:フクフクプラス アートファシリテーター 磯村歩


チームビルディング SNS等広報用画像_修正-03-01

対話ができるチームをつくる テレワーク時代の組織づくり チームビルディング 向け「アートでおしゃべり」特設サイト


いいなと思ったら応援しよう!