47arts|華麗なるコンチェルト・シリーズ第23回《!?なコンチェルト》篠崎史門 阪田知樹(横浜みなとみらいホール)
2023年12月9日、神奈川フィルハーモニー管弦楽団によるティンパニに頭を突っ込むコンサートに行ってきました! (今更な記事化をお許しください)
Twitter(X)や「題名のない音楽会」などで聞き及んでいたトンデモ奏法。それが実際に上演(?)されると知り、これを逃すと二度と聴けないかもとチケットを取りました。
ステージにはモニターが置かれると公演情報にはありましたが、一応双眼鏡を引っ張り出してきました。
会場の横浜みなとみらいホールは駅直結の商業ビルの中にあり、利便性抜群!
私は横浜駅から寄り道をしながら徒歩で向かいましたが、さっと昼食を食べて向かうことができました。
カーター・パン「スラローム」
1曲目は、スキーの滑降を描写したというカーター・パン「スラローム」。序盤と終わりは聞き馴染みのあるフレーズで、開幕にふさわしいキラキラとした爽快な演奏でした。
こちらの曲目でも、「サンダーボード」と呼ばれるトタンの板を叩く、紙ヤスリを擦り合わせるといったユニークな演奏がありました。
おそらくクラシックのコンサートではよくある光景とは思いますが、普段行くコンサートがボンクリ・フェスなのでスタンダードがわからない。
カーゲル「ティンパニとオーケストラのための協奏曲」
2曲目がティンパニに頭を突っ込むやつ、カーゲルの「ティンパニとオーケストラのための協奏曲」です。マウリシオ・カーゲルは、オペラとは違う形で音楽に演劇の要素を取り入れようとしたアルゼンチンの作曲家で、このほかにも指揮者が倒れる「フィナーレ」という曲もあります。
ティンパニを演奏するのは、篠崎史門さん。いつもはステージの最後列に鎮座しているティンパニが指揮者の隣に据えられ、ソロパートもたっぷりです。
明確にメロディーがあるわけでも音を出すのが難しいわけでもない打楽器、と素人は考えてしまいがちかもしれません。けれど、叩き方とタイミングが的確といいますか、単体で目立つ音だからこそ、どの音も決めていかなければいけない。
やはりプロの演奏は違いますね。
通常のバチだけでなく、スネアドラム用のバチや先端が刷毛のようになっているブラシ、素手も駆使して、七色の音を奏でます。「トン、シャラ」と聴き慣れない音がして双眼鏡を覗くと、マラカスで叩いたあとに転がしている!
ただのおもしろ演奏ではなく、ティンパニの可能性を追求した曲なのですね。
後半、おもむろにメガホンを手にした篠崎さん。メガホンで叩くのかと思いきや、低音の美声で歌い出しました。そんなこともするのか。
そしてクライマックス、長い長い連打の末に、唐突に勢いよくティンパニにダイブ! 腰を深く折り、上半身をスッポリ埋めたまま、ステージの時が止まります。
すぐに拍手喝采となったような、しばらく静寂だったような、不思議な感覚でした。
ここで休憩の時間となりますが、その前に指揮者とティンパニ奏者のMCコーナーが設けられました。
「皆さんオチを知っているから、破れなかったらどうしようかと不安だった」という篠崎さん。1曲目から演奏していて2曲目も大活躍、そして3曲目もあるですから、突っ込むことだけに専念もできません。しかし、観客はこれを目当てに来るのですから、プレッシャーですよね。
なんと、年明けには別のフィルで同曲が演奏されるらしく、そのフィルの方が客席で聴いていたそう。カーゲルブーム到来か?
楽器の移動や入れ替えの間も、大穴の開いたティンパニはしばらく残され、皆さん写真撮影をされていました。
ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第6番 ニ長調 op.61a」(原曲:ヴァイオリン協奏曲)
3曲目はピアニストの阪田知樹さんによる、ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第6番 ニ長調 op.61a」。
阪田さんのお名前はしばしば拝見していましたが、演奏を聴くのは初めて。テンダー(Tender)なピアノの音色に、弦楽器の音が波のように重なり、会場が厳かな空気に包まれました。
アンコールは、ミュージカル音楽を多く作曲したガーシュウィン(ワイルド編)の「魅惑のリズム」。12月の横浜にふさわしい、ウキウキするような楽しい一曲でした。
久しぶりのクラシック・コンサート。すでに次のおもしろ企画に目を付けているので、定期的に音楽鑑賞もしていきたい所存です。
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