62arts|青森 現代アートに出会う旅 5 青森公立大学 国際芸術センター青森(ACAC)
最後に訪れたのが、青森公立大学 国際芸術センター青森(ACAC)。
広大な敷地内にある野外彫刻が楽しめる施設ですが、大雨なうえにクマが出るかもとガイドさんが脅してくるんですけど〜?!
青森公立大学 国際芸術センター青森(ACAC)
2001年、八甲田山麓の豊かな自然のなかに開館した青森公立大学 国際芸術センター青森(通称ACAC)は、アーティスト・イン・レジデンス(AIR、滞在制作のこと)・展覧会・教育普及を行うアートセンター。現在は青森公立大学が運営しています。
建築
建築を手掛けたのは、国際的に活躍する建築家・安藤忠雄。創作棟と宿泊棟、展示棟の3つで構成される建物群は、「見えない建築」をテーマに、森に埋没させるような造りになっています。この建築をみるために、わざわざ訪れる建築ファン、安藤忠雄ファンも多いそう。
駐車場から籠目状に組まれた木のトンネルを通ると、馬蹄型の展示棟、少し離れたところに長方形の創作棟と宿泊棟があり、その先は遊歩道となっています。
馬蹄型の内側が階段状になっている展示棟は、パフォーマンスにも適しています。広い水盤も涼しげです。
AOMORI GOKAN アートフェス 2024 メイン企画
currents / undercurrents − いま、めくるめく流れは出会って
展示棟では、アートフェスのメイン企画が2024年9月29日まで開催中です。水や空気、電流などの流れを示す「current」と目に見えにくい流れや暗示を意味する「undercurrent」をキーワードに、国内外のアーティストが作品を発表しています。
青野文昭さんは、廃棄物の欠損や使われていた痕跡を手がかりに「なおす」方法を用いて作品を制作しています。六本木でみたことあるぞ!
本棚やタンスにたくさんの人影があるだけでも、モノの記憶が溢れ出てきたようで心がざわめきます。よくみると剣を持っている人影や首を掴まれている人影があり、本棚には「ソヴィエト共和国」と表紙に書かれた本があります。
この作品が示している出来事は、きっと過去であり現在、その叫びは普遍的なものです。
ニュージーランド出身のロビン・ホワイトは、滞在制作のなかで覚えた日本語を版画で表現しました。
異国の言葉について知ろうとするとき、まずはあいさつや簡単な単語から始めますよね。スタッフさんによると、ホワイトさんは「木を切った後の状態」(切り株?)のような、説明の難しい言葉を聞いてくるのだそう。
『翻訳できない世界の言葉』のようですね。
東北の民俗玩具や食文化、「気をつけて」「靴を脱いでください」といった言葉からは、滞在制作中の交流の様子を想像させます。
イスラエルに生まれ、イェルサレムとロンドンを拠点に活動するジュマナ・エミル・アブードは、パレスチナや抑圧された文化圏におけるストーリーテリング、水、先住民の権利を、ドローイングや映像、オブジェなどで表現しています。
ドローイングの横にある丸いガラスは、水面に見立てられています。このガラスが水鏡となって、鑑賞者は作品とともに自分や周りの景色も視界に入れることになります。
映像やドローイング、小さなオブジェが置かれた室内で、人の頭をもった蛇のようなドローイングが目に留まりました。
日本には、老翁(もしくは女性)の頭部にヘビの姿をした宇賀神(うがじん)という水と関わりのある神様がいます。水から連想されるイメージには、世界共通のものがあるのかもしれません。
抗いがたい時代の奔流、時を超えて脈々と受け継がれる文化や精神性、人々の交流。そうした流れのなかでいかに振る舞うべきか、考える私がいました。
野外彫刻群
次は、常設展示となる20数点の野外彫刻群を観に行きましょう!
「野外彫刻散策路マップ」によると、多くは建物周辺に集まっています。「雪で作品が見られないこともある」「風の強い日は森に入らないように」と注意書きもあり、かなり天候に左右されるようですね。
体験型作品
展示棟の屋根の下に大量のピースが人型(クマ型?)に置かれています。
桑沢デザイン研究所がやるハンド・スカルプチャー?
これはウェブサイトにもマップにも掲載がない作品ですが、先のハンド・スカルプチャーを銅鑼の下にある瓶に入れるように投げ、投げたらカウンターを手動で更新するというものです。かわらけ投げのようなものですね。
瓶が高い位置に設置されているので、上に放るように投げないと届きません。縄の張ってあるところから、思い切り投げ込みます。
飛距離は出ましたよ、水平方向に!
自然に溶け込む作品たち
多くの野外彫刻作品は、自然に溶け込んで発見しにくいとのこと。
これは地方芸術祭慣れしてないと、作品感知センサーに引っかからないヤツだ!
ただの道に見えると思いますが、両脇にある石が作品です。
左の《八甲田山》の表側には八甲田山、裏側には鈴木正治さんの代表的なモチーフのひとつであるレディ・ゴディバの伝説が刻まれています。
右は、ハンガリーのアーティスト、バラニ・ゾルターンの《共存》。角のない丸い石と長方形に整形された石の対比により、「自然に守られている人間の姿、あるいは自然との共存」が表現されています。
駐車場から組み木のトンネルを通って建物に到着するまでにも「あ、これ作品っぽいな」というものがいくつかあったのですが、パンフレットをみるとやはり作品でした。
淺井裕介さんは美術館の壁や道路などをキャンバスに、泥絵や白線で動植物の模様を浮かび上がらせる作品で知られています。
こちらは道路の横断歩道などに用いられる白線素材(クイックシート)を用いた作品で、芸術センターの利用者との協働で複数制作されました。
風雨・風雪で消えかけていますが、人の手によって出現した絵を人の手で消す、もしくは自然の力によって消えるまでが作品なのだそう。
大雨のため、屋根の下で休憩に入るツアー参加者たち。せっかく来たのだから、何か見応えのありそうな野外作品をみたい!
私は青木野枝さんの作品を探そうと、何とか看板を見つけましたが、ここ入るの? 獣道じゃん。
「マジ獣道。たまに道すらない」「何か、何となく独り言を言っておこう」「クマはヘビが苦手だから、ベルトを投げつければ怯むって『ゴールデンカムイ』に描いてあったぞ。ゴムパンのヒモしかないわ」
などと、万事を想定しつつワシワシと進んでいく。アート三昧で五感が刺激され、冒険心が出てきたのでしょうか。
ですが、早めにバスに引き上げると連絡があり、途中で引き返すことに。
遭難&クマ遭遇の可能性もあるので、ACACへは天気のいい日に複数人で訪問することをお勧めします。
★おまけ情報
青森の郷土料理「貝焼き味噌」をいただきました!
テレビか奈良さんのTwitter(現・X)で見て、食べてみたかったのですよ〜。
貝焼き味噌とは、魚の切り身と味噌をホタテ貝にのせて焼き、溶き卵で閉じたものです。
旅館の小鍋を煮るやつの上に、直にホタテ貝がのせられていました。固形燃料で温め、溶き卵を流し入れるのですが、「卵が固まる前にかき混ぜてください」(ひと塊りになってしまうので)とのこと。
もう良かろうと思って目を離したら、ひと塊りになっちゃったのですが
いつまで混ぜればいいですか……?
この貝焼きをご飯にかけて食べました。貝の旨みが沁みます。