52arts|山形市 歴史ミュージアムめぐり(中編) 山形市郷土館(旧済生館本館)
同じく霞城公園内にある山形市郷土館(旧済生館本館)は、かつて診療所兼医学校として使われていた擬洋風建築の建物で、国の重要文化財に指定されています。
和洋折衷の擬洋風建築
擬洋風建築とは
欧米の建築を日本の職人が真似た建物のこと。建物全体の形や窓や柱の意匠は西洋風ですが、瓦屋根や板張りの壁には日本の木造建築の技術が使われています。
この山形市郷土館(旧済生館本館)は、当時横浜にあったイギリス海軍病院を参考にしています。土木県令・鬼県令と呼ばれた初代山形県令・三島通庸(みしまみちつね)のもと、土木寮として銀座煉瓦街にも携わった官僚・原口祐之(はらぐちすけゆき)を棟梁として、山形の宮大工と300人の職人たちの手によって建設されたました。
ユニークで複雑な造り
多角形の塔にドーナツ型の回廊と、ユニークな組み合わせの建物となっています。
回廊に接続する1層目は8角形、お椀型の屋根がついた2層目は16角形、ドーム型の屋根の3層目は8角形。見た目は3層ですが実は4階建てと複雑な構造をしています。回廊は14角で、8つの部屋に分かれています。
数字がややこしいですね。
屋根下の角材や板張り、柱といった部材の多さを、中間色の色味がカモフラージュして、ゴテゴテ感が抑えられています。
宮大工の技術が垣間見える
塔の上部には、螺旋階段を上って行きます。滑らかに螺旋を描くステップと手摺り、抜けのある造形が見事ですね。
ステップ側面の唐草の彫刻は、寺院の装飾のよう。柱のみで支える構造も、五重塔などに使われる心柱(しんばしら)を連想させます。
外観にしても塔内部や螺旋階段の造りにしても、かなり複雑なはずです。しかし、和と洋のテイストや色合いが調和して、素人目にはぎこちなさを感じさせません。
それは日本の宮大工が長年培った、高い技術力の賜物なのかもしれません。
山形の医学の歴史
東北医療の最先端
旧済生館は1878(明治11)年に建設され、翌年に診療所兼医学校として開院しました。オーストリア人の医師アルブレヒト=フォン=ローレツを招き、ドイツの医療器具や薬品が取り入れられるなど、東北地方でいち早く西洋医学を取り入れた医療施設でした。
かつて診察室などに使われていた回廊の各部屋には、済生館の歴史をものがたる医療器具・医学資料などが展示されています。木製の箱に収められた顕微鏡や天秤、ガラスや陶器の薬瓶などをみると、時代を感じますね。
医学校でもあったため、医学書や浮世絵といった資料も豊富です。当時の医学生がどのように医学を学んでいたのか、患者に体の仕組みや怪我・病気についてどのように説明していたのか、想像が膨らみます。
お花のプレゼント
受付には花の種の小袋があり、一人ひとつまで持ち帰ることができます。
私はマルバルコウソウをいただいたのですが、どこいったかな……。
★ミニ観光情報 蔵王温泉 大露天風呂
蔵王といえばスキーと温泉!
数ある蔵王温泉の中でも有名なのが「蔵王温泉 大露天風呂」。道中は道が狭くて運転が大変ですが、野趣あふれる露天風呂は行く価値ありです。
門をくぐって階段を降りていくと、山間を流れる清流の横に、天然の石を組んで造られた湯船があります(男女別)。
脱衣所もほぼ野外で、あまりの開放感にドキドキです。ですが、女湯(上流)・男湯(下流)の間にはしっかりと仕切り(壁)があるのでご安心ください。
泉質は日本有数の強酸性の硫黄泉で、お肌・血管の若返りと殺菌・美肌効果を期待できるとのこと。よく体を拭かないと、服に硫黄の匂いが染み付いて1週間くらい取れませんが、 それも旅の思い出でしょうか。
冬季は積雪のため休業してしまうので要注意! 営業期間やルートをご確認の上、お越しください。