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Art|芸術鑑賞

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美術館・博物館の展覧会リポート、舞台鑑賞などです。
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記事一覧

65arts-1|ハニワと土偶の近代(東京国立近代美術館)

ハニワ(と土偶)展(東京国立近代美術館)に行ってきました! はにわ展(東京国立博物館)とのセット券を購入したので、こちらも楽しみです。 ハニワや土偶(出土遺物)を美的な関心を向けるようになったのはいつからか? 人々はハニワや土偶に何を投影してきたのか? 明治時代から現代にかけて美術作品やマンガ、映像作品に登場する、ハニワや土偶、土器のイメージの変遷を見ていきます。 注意! ⚫︎ハニワや土器は、ちょっとだけ出てきます ⚫︎作品だけでも圧倒されますが、パネルを読むとガッツリ

64arts|特別展 昭和モダーン モザイクのいろどり板谷梅樹の世界(泉屋博古館東京)

昭和に活躍したモザイク作家・板谷梅樹(いたやうめき)の展覧会に行ってきました! 2024年9月29日に閉幕で、所蔵先も少なく個人蔵が多い、実物を見る機会が滅多にない作家で、ご紹介してもご覧いただく機会がなさそうで、すみません……。 ルーツは陶片この展覧会は板谷波山記念館(茨城県筑西市)からの巡回展で、私は板谷梅樹の存在を記念館のチラシで初めて知りました。 板谷波山記念館 彼の父は陶芸家の板谷波山(いたやはざん)です。文様を浅く彫った薄肉彫(うすにくぼり)の素地に彩色した

63arts|青森 現代アートに出会う旅 番外編 三内丸山遺跡 さんまるミュージアム

青森県立美術館から小走りして、特別史跡「三内丸山遺跡」(さんないまるやまいせき)にやってきました! (時間の都合、遺跡は諦めてミュージアムだけ行きました) 三内丸山遺跡とは?1992(平成4)年から発掘調査が始まり、縄文時代前期~中期(紀元前約3,900~2,200年)の大規模な集落跡が発見されたことから、2000(平成12)年に国の特別史跡に指定。2021(令和3)年には、「北海道・北東北の縄文遺跡群」のひとつとして、世界文化遺産に登録されました。 遺跡エリアには、直径

62arts|青森 現代アートに出会う旅 5 青森公立大学 国際芸術センター青森(ACAC)

最後に訪れたのが、青森公立大学 国際芸術センター青森(ACAC)。 広大な敷地内にある野外彫刻が楽しめる施設ですが、大雨なうえにクマが出るかもとガイドさんが脅してくるんですけど〜?! 青森公立大学 国際芸術センター青森(ACAC)2001年、八甲田山麓の豊かな自然のなかに開館した青森公立大学 国際芸術センター青森(通称ACAC)は、アーティスト・イン・レジデンス(AIR、滞在制作のこと)・展覧会・教育普及を行うアートセンター。現在は青森公立大学が運営しています。 建築

61arts|青森 現代アートに出会う旅 4 青森県立美術館

青森県を代表する観光名所のひとつ、青森県立美術館。 美術館のシンボル《あおもり犬》は、観光パンフレットの表紙に採用されることも多く、「この犬をみるために青森に行こう!」と思わせる魅力があります。 その徒歩圏内には、世界遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」の一要素で、日本最大級の縄文集落跡・三内丸山遺跡(さんないまるやまいせき)があります。 青森県立美術館「強烈な個性によって創造の最前線を切り拓いてきた青森県のアーティストたち」とウェブサイトにある通り、青森県立美術館が所蔵す

60arts|青森 現代アートに出会う旅 3 弘前れんが倉庫美術館

現代美術家・奈良美智さんの出身地でもあり、日本におけるシードル(リンゴの発泡酒)発祥の地である弘前市。そんな弘前市の歴史を残し、これからも紡いでいく地域のクリエイティブ・ハブ(文化創造の拠点)が、弘前れんが倉庫美術館です。 弘前れんが倉庫美術館シードル工場の煉瓦倉庫当時の吉井酒造株式会社社長・吉井千代子さんと奈良さんの出会いによって誕生しました。 弘前の酒造メ-カー社長・吉井勇は、果実の加工技術の視察のために欧米を訪問、その時にシードルに目をつけました。1954(昭和29

59arts|青森 現代アートに出会う旅 2 十和田市現代美術館

人生で一度は行ってみたい美術館、そのひとつが十和田市現代美術館です。花の馬(チェ・ジョンファ《フラワー・ホース》2008)は、観光パンフレットなどでみたことがある人も多いのではないでしょうか。 十和田市現代美術館十和田市の官庁街通り全体を美術館に見立て、アートの展示やプロジェクトなどを行うまちづくりプロジェクト「Arts Towada」計画の中核施設として、2008年に開館。美術館スタッフや顧問、建築においても錚々たるメンバーが集結した、日本屈指の現代アートの美術館(しかも

58arts|青森 現代アートに出会う旅 1 八戸市美術館

夏の青森へ、現代アートに会いに行ってきました! 2024年は青森のアートを五感で感じる「AOMORI GOKAN アートフェス」が開催中で、今回はその参加施設を訪れましたが、バスツアーで行ったのでフェスの展示や企画展は観たり観なかったりです。 八戸市美術館八戸市美術館は、アートを通した出会いが人を育み、人の成長がまちを創る「出会いと学びのアートファーム」がコンセプトの市立美術館です。アーティストや美術館スタッフと協働して美術館活動に関わる市民「アートファーマー」(東京都美

57arts|日常アップデート(東京都渋谷公園通りギャラリー)

毎日は新たな体験の記憶の繰り返し、そうした日常をさまざまな観点で表現する6名の作家の展覧会が、東京都渋谷公園通りギャラリーで開催中です。 同ギャラリーは、東京におけるアール・ブリュットなどの振興の拠点として展示やワークショップを行う施設で、展覧会は基本無料です。渋谷パルコの近く、渋谷区立勤労福祉会館の建物内にあります。 宮田篤(みやたあつし)壁一面に冊子の入った封筒がずらり。来場者は、気になる冊子を手に取って読むことができます。 宮田篤さんの《微分帖》(びぶんちょう)は

56arts|五感であじわう日本の美術(三井記念美術館)

「おいしそう」「いい香りがしそう」と想像しながら、三井記念美術館の所蔵作品を鑑賞してきました!   本展は、日本・東洋の古美術に親しんでもらう「美術の遊びとこころ」シリーズの第8弾。夏休み期間に合わせて、重要文化財を含む優れた絵画・工芸品を気負いなく鑑賞してもらおう! という趣旨で企画された展覧会です。 五感であじわうと言いつつ、ほとんどガラスケースの中なので観るだけです。 三井記念美術館って? 三井家が江戸時代から収集してきた国宝6点・重要文化財75点を含む美術品40

55arts|デ・キリコ展(東京都美術館)

「形而上絵画」で後世のアーティストに大きな影響を与えたジョルジョ・デ・キリコ(1888-1978)の展覧会に行ってきました! 東京都美術館で2024年4月27日~8月29日まで開催しています。 撮影禁止なので、公式ウェブサイトのスクショを使って紹介します。 デ・キリコを紐解く Q&Aデ・キリコってどんな人? 公式ウェブサイトによると、1888年、イタリア人の両親のもと、ギリシャに誕生。父の死後にミュンヘンに移り、アカデミーで絵画を学びます。 上の自画像・肖像画をみると、

53arts|山形市 歴史ミュージアムめぐり(後編) 山形県郷土館「文翔館」

山形県郷土館「文翔館」は、1916年(大正5年)に旧県庁舎および県会議事堂として建設され、1975年(昭和50年)まで実際に使用されました。1984年(昭和59年)に国の重要文化財に指定、現在は山形県郷土館として無料公開されています。 英国近世復興様式の建物 「英国近世復興様式」と検索すると文翔館しか出てこないのですが、近世のイギリスで流行した様式を復興=リヴァイヴァルした様式のようです。 近世が、東ローマ帝国の滅亡及び、ルネサンス・宗教改革・大航海時代あたり(15世紀

52arts|山形市 歴史ミュージアムめぐり(中編) 山形市郷土館(旧済生館本館)

同じく霞城公園内にある山形市郷土館(旧済生館本館)は、かつて診療所兼医学校として使われていた擬洋風建築の建物で、国の重要文化財に指定されています。 和洋折衷の擬洋風建築擬洋風建築とは 欧米の建築を日本の職人が真似た建物のこと。建物全体の形や窓や柱の意匠は西洋風ですが、瓦屋根や板張りの壁には日本の木造建築の技術が使われています。 この山形市郷土館(旧済生館本館)は、当時横浜にあったイギリス海軍病院を参考にしています。土木県令・鬼県令と呼ばれた初代山形県令・三島通庸(みしま

51arts|山形市 歴史ミュージアムめぐり(前編) 山形県立博物館

アート旅行記第2弾! 今回は山形市の歴史に触れる3つのミュージアムをめぐります。(行ったのは2022年冬)山形在住の友人の運転で行きましたが、徒歩でも1日で回れる距離です。 前回は福島県須賀川市をレポートしました↓ いにしえの山形を物語る二大スター山形県立博物館は、山形城跡を整備してつくられた霞城公園内の文化施設の一つです。山形城なの?霞城なの? と戸惑いますが、出羽の関ヶ原合戦「長谷堂合戦」の際に城郭が霞で隠れて見えなかったことから山形城は「霞ケ城」とも呼ばれ、そこから