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自然農法は、美味しい
昨年から月に数度、地元の明石農園さんへ援農(農業ボランティア)に通っている。通い始めた目的は、自分の健康を保つことだった。
健康に関する雑誌を読み漁ると、ウォーキングや筋トレなど何はともあれ運動せよと書いてあり、数年前からジムに通った。
ジムは良い。そこに通うだけで、家ではモチベーションが上がらないトレーニングができる。昔苦手意識があった水泳も、youtubeを見て練習し克服できた(多分綺麗な平泳ができるようになった)。
ただ、私としては少し違和感があった。ラットのようにランニングマシーンの上を走る自分を客観視した時に「私はお金を払ってまで何をしているんだろう?」と。
多分、昨年の8月に能登でボランティアをしたことも影響していると思う。まだ動ける自分の労働力を提供し誰かに貢献することは、シンプルで清々しかった。
自分の健康のため、そしてデスクワークの日常生活の中で使いきれない体力を、もっと社会や地球のために使いたいと思い、援農に至った。
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援農のボランティアは、単発的な参加者もいるがベテランメンバーが多い。その方々の多くが「自然農法の野菜は美味しい」と言う。特に夏に収穫したスイカが美味しかったらしい(私も来年は食べたい)。
明石農園さんに通って初めて知った自然農法という考え方。
自然農法(しぜんのうほう)とは、自然の摂理や生態系の調和を尊重し、農薬や化学肥料を使わずに農業を行う方法のことです。この農法は、自然界の力を最大限に活用し、持続可能な農業を目指すもので、主に以下の特徴を持ちます。
農薬や化学肥料を使っていないので、許可をいただいた上で収穫の際にそのまま味見をしたりする。今回はほうれん草も収穫した。すでに出荷が終わった野菜だったため、好きなだけ持ち帰って良いという。畑のサラダバー状態だ。
驚きは「ほうれん草が甘い」。畑に向かう途中、常連さんが「砂糖みたいに甘いんだよ」と教えてくれた表現が、45年の人生からは全く想像できなかったのだが、食べてみてわかった。
「甘い」、「美味い」、「砂糖みたいだ」。
寒い冬を生き抜くために、糖分を蓄えるのだという。
あまりにも自然な甘さで感動した。
野菜を育てる意義、それは生き抜くため、そして美味いを味わうため。美味いは幸せ。シンプルなことを学ばせていただいている。
そしてこんなに美味しいのに、もう出荷はしないという。
理由は、色が変わった葉もあり、出荷するための工数がかかりすぎるため。費用対効果。農業を続けるためにとても大事な視点だ。
ただ同時に、なんとも言えない残念さを感じた。
収穫しきれなかった野菜は、その畑の緑肥になるらしい。
緑肥(りょくひ)とは、植物を土壌改良や肥料として利用するために栽培し、そのまま土にすき込んで分解させることで土壌を豊かにする手法やその植物のことを指します。緑肥は自然農法や持続可能な農業の一環として利用され、土壌の健康を保ち、作物の生育環境を向上させるための重要な技術です。
帰って妻にも一口食してもらい、後日和風パスタにして二人で味わった。やはり、甘く、美味しかった。
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自然農法は、美味しい。
野菜を味わい、農業を続けられるって大事だ。
食物を育て、身を守る。家族や仲間、社会を守る。
農業という新しい扉を開きつつある(すでにハマっている)。