「現在」「過去」「未来」

トレーナーをしていて、つくづく感じることは、
「選手育成というものは、一朝一夕というわけにはいかないない」という事です。
物事には順序があって、
基本を教え土台を作り土台が出来上がってから応用編である上物を拵えていきます。
基本というものは、単調な練習でしか習得できず時間がかかるものです。
したがって、大抵の選手は基本をこれでもかというくらいやり抜くことができません。
途中でこの位でいいかな?と妥協して次へ進もうとするのです。

ところがなかには真髄を極められる迄、とことん追求できる選手もいます。
トップに行ける選手というのは、この当たり前といえば当たり前なんですが、こういった地道なことを積み重ねていける選手だと思います。

その位基本の習得というものには根気が必要だと思いますが、
習得できるスピードはやはり個人差があります。
何かしらのバックボーンがある選手、
運動神経の良い選手の方が習得のスピードは早い傾向にあります。

私は練習の最初の段階から、
その選手の「現在」・「過去」・「未来」を想像しながら練習を見ております。
「現在」がこうなのは、「過去」にこういった経験をしてきてるから、こういう癖になっている。
もしくは、先天的なものなのか?
といった部分も見逃さないように観察します。
この癖を直して、「過去」に経験してきた○○を生かして「未来」はこうなっていく、また、肉体的・性格的ポテンシャルを生かしたら…
といったイメージを私の中で作っていきます。
そして基本の習得がある程度できてきたら、
私の中にあるその選手の未来像のイメージを選手に伝えて対話していきます。
「俺はこう思っているけど、自分はどう思う?」
「僕は○○なスタイルでやりたいです!」といったやりとりを選手としていきます。
基本、選手の憧れのスタイルというものは、
自分に合っているかよりも、自分の好きな選手がそうだから…という事が多いです。
実際にそのスタイルがその選手に合っているのか?を心・技・体の側面からもみていきます。

心…性格的にそのスタイルがあっているか?臆病なのか?勇敢なのか?
技…そのスタイルを習得するには、技術の習得にはどの位時間が必要なの  か?またそれは可能なのか?
体…体格・体型・身体的特徴の見地からみてそれがあっているのか?
といった具合に進んでいきます。
ですから、みんな同じスタイルではなく、
美容師さんのように、カウンセリングで希望や悩みを聞き出して、
それを踏まえたうえで、トレーナーが感じたその人にあったスタイルを提案し、対話していくことによって、選手の不安を払しょくしていく。
そうやって提案したものを実際にデザインしていくことができるか?
がトレーナーの力量であり、使命であると考えます。
非常に時間と根気が必要な作業で、
途中で疑心暗鬼になったりとすんなりと行かない事もありますが、
提案した事に対する自信と信頼関係があれば、
自然と選手の心も体も共鳴し、
たとえ紆余曲折があったとしても、
結果として素晴らしいものが出来上がると思います。

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