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メガバンク出身「マゾ兄やん」:ベンチャー企業における銀行取引の裏話

今回は、マゾ兄やんさんから寄稿いただいた記事をご紹介します。
私の自己紹介記事も、ぜひあわせてチェックしていただけると嬉しいです。


初めまして。マゾ兄やんと申します。
新卒メガバンクに入社し、その後メーカー2社で海外勤務を経て、現在は商社でDX業務や投資業務などに携わっています。

谷本さんとはXで出会いましたが、同じ金融出身ということもあり、それ以来仲良くさせていただいております。メガバンクではベンチャー企業に対する新規営業にも携わっていました。今回はその話について書かせていただくことになりました。

Xでも、私の考えを発信しています。
https://x.com/mazoNiiiiiiii


自己紹介

自己紹介

まずは、メガバンクでのキャリアについて簡単に自己紹介させてください。

  • 1店舗目:関西地方の店舗、中小企業や上場子会社を担当

  • 2店舗目:東京都内の店舗、中堅企業・大企業担当と新規営業担当を兼務

メガバンクで大切にしてきたことは、お客様に価値を提供することでした。企業は通常、複数の銀行と取引がありますが、「最初に浮かぶ顔が自分でありたい」と常々思っていました。

そのために、とにかく勉強をした記憶があります。
FPや簿記などの資格はもちろん、お客様の業界や事業内容を理解するために、いろんな勉強をしました。

特に、私が新規営業で担当したベンチャー企業は、AIとブロックチェーンなどの業界でしたので、ディープラーニングG検定というAIに関する資格を取ったり、怪しげなブロックチェーンの講演会に出席したりしたこともあります。

今回は、ベンチャー企業の裏話についてお伝えしたいと思います。

ベンチャー企業とは

ベンチャー企業とは

まず、“ベンチャー”という単語はすごく広義となっており、設立間もない会社は全てベンチャーと一括りにされている節があるように思えます。ベンチャー企業は大きく分けると次の2種類に分類されると考えます。

①投資家から資金調達を行い、急成長を目指す企業
②外部株主は入れずに、コツコツと堅実にやっていく企業

それぞれ見ていきましょう。

急成長を目指す企業

①は増資(新株を発行し、ベンチャーキャピタルなどから出資を受け入れること)で得たお金で投資を行い、赤字を掘りながら上場を目指すパターンです。私がメガバンク時代に新規営業していたお客様のほとんどが①でした。

コツコツと堅実にやっていく企業

②は①と違って外部株主からの出資を受けません。ですから、資金調達の手段が金融機関からの融資が中心となります。設立間もない企業が金融機関から融資を受けることは、そう簡単ではありませんので、成長スピードも①と比較し、緩やかであることが一般的です。

今回は①の企業を対象とし、読者様のお役に立ちそうな裏話を書かせていただくことにします。

シリーズBを終えた頃から銀行融資を検討する

シリーズBを終えた頃から銀行融資を検討する

ベンチャー企業が投資家から資金調達を行うとき、1回目の資金調達をシリーズA、2回目をシリーズBなどと言ったりします。

シリーズA(1回目の資金調達)は、いわばビジネスのネタになりそうな構想に対してプロダクトを開発し、アーリーユーザーと実証実験を行うフェーズです。このフェーズの会社が銀行から融資を受けることは難しいでしょう。(もちろん、日本政策金融公庫や商工中金などの政府系金融機関でしたら、融資を受けられる可能性があります)

シリーズB(2回目の資金調達)を終えると、アーリーユーザーとの実証実験がある程度うまくいっており、クライアント数をどんどん増やしていくフェーズになっていることでしょう。このフェーズになってくると、民間の金融機関からの融資を検討してみましょう。

銀行の考え方として、人件費や広告宣伝費などのPLに表れる勘定科目に対して融資を検討することは難しいです。一方で、売掛金や棚卸資産などのBSに表れる勘定科目に対して融資を行う方が、銀行担当者にとっても稟議書の内容を組み立てやすく喜ばれます。

よって、シリーズAのフェーズでは売掛金の金額が小さいはずですから、まとまった融資額の根拠を説明するのが難しいということになります。「売掛金が数百万円しかないのに、なんで30百万円もの融資が必要なのだ?」と審査から指摘されると、担当者は説明に窮することになります。

一方、シリーズBを終えると、売掛金の金額も20百万円~1億円ほどに膨れ上がっているはずですから、銀行担当者も融資額の根拠を説明しやすくなるはずです。

銀行融資を検討する場合、シリーズBを終えた辺りからでも遅くないと考えます。それ以前から銀行と接点を持つこと自体は否定しませんが、それなりの説明コストがかかりますから、銀行回りよりも投資家回りの方に注力する方が良いかもしれません。

投資家の顔ぶれは重要

投資家の顔ぶれは重要

ベンチャー企業は新株を発行し、資金調達を行いますが、銀行は投資家の顔ぶれを見ています。「あそこのベンチャーキャピタルから出資を受けているということはイケてる会社なのかもしれない」といった具合です。

  • 金融系

  • 三菱UFJキャピタル

  • SMBCベンチャーキャピタル

  • 独立系

  • ジャフコ

  • グロービス・キャピタル・パートナーズ

  • グローバルブレイン

その他、政府系のDBJキャピタルや、大学系VCから調達しているケースもありました。なかには海外の機関投資家から調達しているケースも見たことがあります。

イケてるベンチャーキャピタルから出資を受けていることは、それ自体がステータスになります。もちろん、それだけで融資が通るわけではありませんが、審査部門へ説明するときに、分かりやすい説明材料になったことは間違いありません。

事業会社系のCVCなどから調達しているケースもよく見かけましたが、これについてもビジネスとして評価されることが伺えますので、銀行内部で説明がしやすかった記憶があります。

逆に、どこの誰なのかよく分からないエンジェル投資家から調達していたり、知り合いの中小企業から出資を受けていたりするケースにおいては、銀行内部で説明が難しかった覚えがあります。

当座貸越は契約内容をチェック

当座貸越は契約内容をチェック

ベンチャーが銀行から融資を受けるとき、いきなり1年以上の長期融資を提案されることは少ないはずです。まずは短期融資ということで当座貸越を提案してくることがほとんどでしょう。この当座貸越には落とし穴があるかもしれません。

当座貸越とは

当座貸越とは、一定の限度額(極度額)までいつでも借りることができ、不要になったらいつでも返済することができる短期融資の代表的な商品です。契約期間は1年間であり、自動更新されることが大半だと思います。

契約期間1年間と聞くと、「1年間はずっと借りれるのかな?」と思われるかもしれませんが、契約期間は1年間であったとしても、個別の融資期間に制限が設けられているケースがあります。

2つのパターンを比較

2つのパターンを比較してみましょう。

①契約期間1年間、個別の融資期間1年間、期日一括返済
②契約期間1年間、個別の融資期間3ヶ月、期日一括返済

パターン①では個別の融資期間が1年間ですから、1月1日に借りた融資は12月31日まで借りることができます。

一方、パターン②の場合、個別の融資期間は3ヶ月ですから、1月1日に借りた融資の期日は3月31日となります。3月31日に継続利用を行う場合、返済と融資実行を同時に行います。(返済額30百万円を口座に用意する必要はなく、文字通り継続利用となります)

ですが、6月30日の時点で、業績があまり良くなかったり、ベンチャーキャピタルからの資金調達が見送りになってしまったりなど、財務状況が良くないと銀行が判断した場合、6月30日に期日を迎える個別の貸出は継続利用することができないと言われることがあります。

企業側からすると「え、継続利用できると思っていたのに!このタイミングで30百万円を一括返済したら資金繰りに窮してしまうよ…」となりますよね。当座貸越には個別の貸出期間が設けられているケースがありますので、契約時には銀行担当者によく確認してみてください。

事業内容を銀行員に理解してもらうのは困難

事業内容を銀行員に理解してもらうのは困難

ベンチャー企業の事業内容は、先端技術を活用したものが多いでしょう。テクノロジーに明るい担当者だと事業内容を理解してもらいやすいですが、ITなどが苦手な担当者だと事業内容を理解してもらうのも一苦労です。

私自身ベンチャー企業を担当し、聞き慣れない用語が飛び交う状況に苦労した記憶があります。

ファイナンス用語:「シリーズAって何?」「プレ、ポストって何?」
マーケティング用語:「CACって何?」「CVRって何?」
テクノロジーに関する用語:「ディープラーニングって何?」「ブロックチェーンって何?」
上場準備に関する用語:「監査法人?」「主幹事?」「シ団って何?」

銀行担当者はこうした用語に慣れていない可能性がありますので、嚙み砕いてお伝えしていただく方が良いかもしれません。銀行担当者と円滑なコミュニケーションを行うために、弊社でもサポートを行っています。

少しでも不安があれば弊社に相談を

少しでも不安があれば弊社に相談を

銀行に相談することに不安を覚える方がいたとしたら、ぜひ私たちにお声掛けください。

銀行に相談する場面で、CEOのとなりに元銀行員がいる安心感を提供できるのが私たちの強みの一つです。
まずは、気軽にご相談ください。

X:https://x.com/mazoNiiiiiiii
Note:note.com/mazonshacho


私、谷本もXで日々発信を行っています。
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相談に関する質問については、以下の記事でお答えしています。

お問い合わせは、DMもしくは問い合わせフォームからお願い致します。

※氏名・社名・業種・Facebook URL・メールアドレスなどを添えてお問い合わせください。

主に銀行融資関係(資金調達)のコンサルを行っています。

資金調達が出来た際の成功報酬は基本的に頂いておりません
理由としては・・・
・1度融資を利用する企業は、その後、2回目、3回目と利用があります。
・長いお付き合いをすることで、お互いの信頼関係を築くと共に、今後の資金繰りについて責任を果たすためです。
ですので、契約先とは最低でも毎月1回は定例でコミュニケーションを取らせて頂き、その都度、資金調達のタイミングや事業方針などについても議論をしております。

社長の望む調達金額を受けられる決算書の作成を得意とします。

銀行融資にはいくつかポイントがあります。
粉飾などによらず、目指す決算書にたどり着くよう、決算月の約半年前からすり合わせを行います。
このすり合わせとは、紙面による数字との睨み合いに留まりません。企業における営業活動など、包括的に関わっております。
これは、税理士や一般的なコンサルタントでは分からない分野です。

お客様によりますが、御社での私の名刺を作ってもらい、銀行対応全般をお任せ頂いております。
銀行対応において、代表者や責任者の方にご同席頂くのは、基本的に初面談時と契約時のみです。
融資実行までの中間の交渉は、全て私がお引き受けします。
(金融機関や個別対応でお受けできない場合もあります。)
CFO的な立ち位置で長きに渡りお役に立てればと思います。
創業融資のお問い合わせも多く頂いております。(R3年実績30社程度)

創業計画書の書き方にお悩みではないでしょうか?
大口の資金調達のコーディネートも行います。
これから事業が大きく成長する中で、どのように銀行と付き合おっていくべきかお悩みではないでしょうか?
収益物件購入、不動産業者、保険営業マンからのご相談もあります。

ご自身では分からない銀行のこと、たくさんあります。
銀行内には独自のルールや文化が満ちあふれています。

現在、お付き合いを頂いている企業は東京が主ですが、リモート対応も可能です。場合によっては出張も致します。

事業を頑張る経営者の皆さまのお役に立てる記事をこれから書いていきたいと思っております。
初回30分無料相談もお受けしています。

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