【現役銀行員×中小企業診断士ゆーき】数字で語る過去と現在~未来を描くための土台作り~(後編)
今回は、ゆーきさんから寄稿いただいた11つ目の記事をご紹介します。
私の自己紹介記事も、ぜひあわせてチェックしていただけると嬉しいです。
こんにちは。現役銀行員×中小企業診断士のゆーきです。今回も「財務状況」の重要性についてお話しします。前回の記事をまだご覧になっていない方は、ぜひチェックしてください。
数値を正しく理解し、数字で説明できるようになると、あなたの事業は未来に向けて大きく前進します。「数字は苦手」と思うかもしれませんが、これこそが事業成功の第一歩です。それでは、始めましょう!
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前回までのハイライト
財務状況について以下の3つのポイントをお話ししました。
あなたの事業は現在どうなっているのか?
(現状分析)突発的なことがなければ、稼ぐ力はいくらあるのか?
(正常収益力分析)今のまま何もしなければ、将来どうなっていくのか?
(成行予測)
これらを把握することで行動計画が明確になり、利害関係者と共通の理解を持つことができます。前回は「現状分析」に焦点を当てました。今回は、以下の2点を中心に解説します。
突発的なことがなければ、稼ぐ力はいくらあるのか?
(正常収益力分析)今のまま何もしなければ、将来どうなっていくのか?
(成行予測)
それでは早速、見ていきましょう。
財務状況を語るための主な7つの項目
以下の7項目は、会社の財務状況を正確に理解し、説明するために役立ちます。それぞれの項目を順に見ていきましょう
~前回~
①損益計算書
②貸借対照表
③キャッシュフロー
④各種指標
~今回~
⑤実態貸借対照表
⑥正常収益力分析
⑦成行財務分析
⑤実態貸借対照表
実態貸借対照表は、会社の「本当の財政状態」を明らかにする表です。通常の貸借対照表(B/S)は会計ルールに従って作られるため、資産や負債の実際の価値が分かりにくいことがあります。
たとえば:
・古い設備が帳簿上は高い価値で記載されていても、実際には売却価値が低い場合
・土地など、帳簿上の価値より実際の価値が高い場合
実態貸借対照表では、資産や負債を実際の価値に置き換え、リアルな財政状況を把握します。
これにより:
・資産:売却や換金で得られる金額を計算
・負債:返済が必要な金額を明確化
・純資産:資産と負債の差額
実態貸借対照表は、特に事業再建時に重要で、金融機関は「純資産を何年でプラスにできるか」を重視します。純資産がマイナス、つまり債務超過の場合には、以下のようなデメリットがあります:
資金調達の困難
取引条件の悪化
金融機関が債務超過には敏感であり、過去からの業績が良くない企業への融資審査は厳しくなります。また、大きな取引先から「債務超過企業とは取引できない」と言われることもあります。こうした状況を回避するため、評価替えや棚卸資産の適切な計上が求められます。
実態貸借対照表は、会社の再建や改善策を考えるための土台になります。特に再建を目指すときには、まずこれで「どれくらい余力があるのか」「どれくらい利益で債務超過を何年で解消できるのか」を把握することが大切です!
⑥正常収益力分析
正常収益力分析とは、会社が持つ「本来の稼ぐ力」を明らかにする分析手法です。通常、会社の決算書には特別な事情による収益や損失が含まれていることが多く、これが本来の業績を歪めていることがあります。
たとえば、偶然発生した土地の売却益や一時的な損失、一時的な取引先の売上高などが含まれると、会社が普段どれくらい稼ぐ力を持っているのかが見えにくくなります。
正常収益力分析でやること:
・一時的な収益・費用を排除する
・普段の事業活動と直接関係のないものを取り除く
(特別利益や特別損失など)
・事業の本来の利益水準を算出
分析結果がわかると何がいいのか?というと、
経営改善の指針:今の収益力のままでいいのか?どれくらい改善をしないといけないのか?明確にできる。
再建計画の基礎:会社が安定して稼げる金額をもとに、負債返済や投資計画を立てられる
ざっくり言うと、「普段の稼ぎ」を正確に見積もる作業です。突発的な要因を排除し、自社の実力値はどの程度か知ることで、確認するために欠かせないプロセスです。この分析があると、感覚ではなく「数字」に基づいて、会社の将来に向けてどの程度改善をしていかないといけないのか?が描けるようになります。
⑦成行財務分析
成行財務分析とは、会社の財務状態がこのまま放っておくとどうなるかをシミュレーションし、将来の危機や改善可能性を見極める分析手法です。主に、会社の現状の収益力や資金繰りの状況を基にして、将来の財務状態を予測します。この分析を通じて、今のままでは何が問題になるのか、どこで資金が尽きる可能性があるのかを明らかにします。
簡単に言うと…
「このまま何もしなかったら、会社の財務はどうなる?」
を考える分析です。
これにより、放置した場合に起こる危機を早めに察知し、具体的な対応策を検討できるようになります。会社再建や経営改善の最初の一歩として非常に重要なプロセスです!
成行財務分析でやること:
・現状の財務数値を把握
・財務数値の分解
・外部環境の調査
・現状の傾向を延長して予測
現在の経営状況が続くと仮定して、一定期間後(通常は数か月から1~3年後)の財務状態を予測します。
例えば…
・外部環境から市場の成長率が横ばいであるため、売上は横ばい
・労働市場の賃上げ傾向から、人件費は毎年○○%UP
・金融市場の利上げから、支払利息は○○%UP
・コロナ融資の返済開始のため、2025年から返済額の増加
・主要設備の老朽化により、2027年に設備投資
など…
これをやって何が分かるのか?というと、
・いつ資金ショートが起きる可能性があるのか
・負債の返済が可能かどうか
・経営改善が必要なタイミングや項目を把握
・具体的な行動の必要性の目線合わせができる
・成行きではどんな問題が起こるのかを示し、その上で具体的な改善策を考えるベースになる
などです。現状、財務状況に問題のない会社も、成行財務分析を行うことで、いつどんな問題が顕在化してくるか?が見えるようになります。
まとめ
財務状況を語るための主な7つの項目について説明をしてきました。
経営者の熱意はとても大切です。一方で、熱意だけでは信頼を得られません。事業計画書には「財務状況」を示すことが重要です。
①損益計算書で利益の変化点やコスト構造を把握
②貸借対照表で資産・負債の流れを理解
③キャッシュフローで現金の動きを確認
④各種指標で事業の健康度を確認
⑤実態貸借対照表で本当の資産価値や債務状況を確認し、再建の基盤を整え
⑥正常収益力分析で一時的要因を排除し、稼ぐ力の本質を見極め
⑦成行財務分析で現状を延長し、未来の危機や資金ショートを予測
数字で示すことは、行動指針の明確化や利害関係者との共通言語になります。また、これらを通じて数字で会社の現在と未来を把握し、具体的な行動計画を描きましょう。
長くなりましたが、前回から続いた事業計画に載せる「財務状況」については以上です。マニアックな表現も多く、難しく感じる部分も多いかもしれません。そんな時は、お気軽にお問い合わせを頂ければと思います。次回は、「外部環境」についてです。お楽しみに!!
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