成人患者におけるバンコマイシンの血清トラフ濃度に及ぼす体格指数およびクレアチニンクリアランスの影響 (PMID: 32404057)
本記事は、主に医療従事者向けに記載をしております。また、本記事の内容は、私の所属している施設などとは一切関係がないことを併せてご承知の上、記事をご覧ください。
はじめに
先日に引き続きの投稿です。
私の個人的趣味で、バンコマイシンの薬物動態に関して、体型で変わるのか?という点について、色々と文献を読み漁っているところです。
そのついでに投稿しているということをご承知いただき、是非記事を読んでいただければと思います。
バンコマイシンについては、2020年に米国感染症学会等がガイドラインを変更し、AUCを算出して400-600を目指すという方針へ転換しました。
その内容をまとめたものも記事にしています。
先日までは肥満の患者にバンコマイシンを投与した際の薬物動態の影響を記述した論文を読んだという記事を2本記載しています。
今回は、タイトルに記載のとおり、成人患者でバンコマイシンのトラフ濃度に及ぼす体格指数およびクレアチニンクリアランスが影響するかということを確認した報告を読みました。
その概要は下記の図のとおりとなります。
本報告を読んだ率直な感想
今回読んだ報告でいくつか衝撃なことがありました。
今回読んだ論文はBMC Infect Disというオープンジャーナルで、IFは2台もあるジャーナルですが、論文の内容としては、少しあり得ない記述形式のまま査読を通っているということに驚きを隠せませんでした。
例えば、結果では、通常、方法の内容に対して得られた結果を記述し、考察的な内容を記載しないのが通常かと思います。
しかし、本報告は、結果の部分に考察的な内容が記載をされていました・・・。
あと、本報告は、中国からの報告のようですが、米国のガイドラインが遥か前に出ているのに、中国の添付文書やガイドラインに基づいて、どんな患者にも1000mg 12時間もしくは8時間ごとに投与するのが普通になっているようで、固定用量の患者で組み込み症例が非常に多いということです。
しかも、固定用量でBMIが増加すると血中濃度が低下するという結果は当然の結果のような気がするのですが・・・。
薬物動態等も本報告では確認されていませんし、それ以上でもそれ以下でもない報告でした。
このため、日本のように、体重あたりおよび腎機能所見により、投与量を調整している場合、本報告の有用性は?という点が少し気になりました。
最後に
少し、読んで損をしたという感じになった報告でした。
論文を読む時は批判的吟味をするということですが、批判ばかりでしたが、こういう報告は本当に掲載されるべき論文なのか?という疑問が残る感じでした。
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