コロナ禍で浮かぶ通貨と沈む通貨
■ 新型コロナウイルスの感染拡大以降、外国為替市場での優劣が明確となっている
■ 騰落率上位には経常黒字、物価安定国が、下位には経常赤字、高インフレ国が並ぶ
新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、外国為替市場での優劣が明確となっている。国際決済銀行(BIS)が公表している60カ国・地域ベースの名目実効為替レート(NEER)の2020年の騰落率を見ると、最新データである10月19日時点での上位5通貨は、ユーロ、ブルガリアレフ、スイスフラン、中国人民元、スウェーデンクローナ。一方、下位5通貨にはブラジルレアル、トルコリラ、ロシアルーブル、南アフリカランド、アルゼンチンペソ、と中国を除く新興国が並んでいる。通貨が上昇した国・地域の多くは、経常黒字国かつ、物価も安定しているという共通点が挙げられ、反面、通貨安が進んでいるのは経常赤字や高インフレが懸念される国が目立っている。また、多くの国・地域でコロナ禍以降にこの傾向が強まっていることも特徴である。物価や経常収支などの経済ファンダメンタルズに沿ったトレンドが表れ始めた主な理由は、金利要因の相対的な影響力の低下だと考えられる。コロナ禍以降多くの国で政策金利が実質的な下限まで引き下げられ、早期引き上げも見込みづらいため、内外金利差の変動は従前よりも小さくなることが見込まれる。
なお、NEERでは、米ドルは、3月の金融市場の混乱の際に急騰したものの、その後は減価傾向が明確になり、現在は、年初とほぼ変わらない水準となっている。高インフレ国、経常赤字国を中心に新興国通貨の下落が目立つなかでも金融市場が安定しているのは、昨今の新興国通貨の下落が急激な資本流出に起因している訳ではないことが指摘できる。米国などでの大規模な金融緩和によって実体経済で需要量以上のドル資金が供給されていることが、新興国からの急激な資本流出の抑止力となっている。昨今のドル安は、経済ファンダメンタルズが弱い新興国市場の安定に寄与しているが、そのなかでも新興国通貨の減価は着実に進行しており、先進国の対応次第で状況が一変しうる極めて危ういバランスの下で成り立っている均衡状態であることは認識する必要があろう。
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