米大統領選・議会選後の市場変動は一時的か
■ 新型コロナを巡る動向という別の注目材料が、米大統領選・議会選後の市場変動を抑える見込み
■ 米大統領選の結果確定まで時間が必要となれば、リスク回避の流れが強まる可能性も
本稿では、米国の主要ボラティリティ指数動向を整理し、米大統領選・議会選後の動向を考える。VIX指数(米国株)は一般的に20台が平常と判断されるが、市場にリスク回避ムードが広がると急騰する傾向がある。10月末時点のVIX指数は38付近と、短期的な株価急落は織り込み済みと解釈できよう。一方で、米国債市場と為替市場では、まだ市場変動に対する警戒感は不十分とみている。為替市場では期間1週間物のボラティリティを確認すると、ドル円は9月末時点の4.9から10.8に、ユーロドルは6.2から10.5へ上昇しているが、過去との水準比較ではまだ高くない。また、債券市場ではMOVE指数(米国債)の水準が1か月前とほぼ変わらず、目立つ動きとはなっていない。米大統領選・議会選へ向けて、本稿執筆時点では市場ごとに異なる反応が見受けられる状況だ。
米大統領選・議会選後の状況では、特に米国債利回りの動向に注目が必要と考える。4年前の米大統領選・議会選では、全て共和党が勝利した。そのため、共和党の選挙公約にあった財政支出拡大が材料視され、米国債市場では1カ月かけて10年国債利回りが1.8%付近から2.6%付近まで上昇。為替市場では日米金利差拡大に注目が集まり、ドル円が投開票当日の安値101円台から118円台まで上昇するなど、大きな値動きがみられた。この展開のポイントは「トリプルレッド」の達成だったとみており、今回の米大統領選・議会選に当てはめると、大相場が到来する第1条件は民主党の勝利、いわゆる「トリプルブルー」の達成となろう。その場合、米国株式市場では、米金利上昇に対する警戒感が高まる見込み。一つの試算結果ではあるが、10月末時点の割引率を基準に計算した場合、米10年国債利回りが1%へ上昇するとS&P500は3170付近まで下落する可能性がある。短期的な米国株の動向では「米金利上昇に株価が耐えられるか」注目したい。しかしながら、仮に「トリプルブルー」が達成された場合でも、前回選挙当時と異なり、現在は新型コロナウイルスの感染拡大という別の注目材料が存在する。11月4日以降、米大統領選・議会選の結果を市場が消化するなかでも、新型コロナを巡る動向という不透明要因が残る。そのため、結果的に米国債利回りの上昇幅は限定され、各市場で大きな値動きが起こる可能性は低いと想定する。なお、上記のシナリオを覆すケースでは、米大統領選の結果確定まで時間が必要となる場合が見込まれる。その場合、短期的にリスク回避の流れが強まり、米国株安、米金利低下、米ドル高が進むとみている。