新型コロナ:ドイツより米国の方が状況は厳しいだろう

■ 重症化リスクが低減されているとはいえ、医療体制のひっ迫に伴う死亡者増が懸念される

現時点で大規模なロックダウンは想定しづらいが、米国も方針転換に迫られる可能性

 欧米では新型コロナウイルスの感染拡大が再加速しており、今週、新型コロナウイルスの新規感染者数*1が米国でほぼ7万人に達し、相対的に感染拡大を抑制できているとみられていたドイツでも1万人を超えてきており、いずれも過去最多を更新している。しかし、検査体制が今春に比べて大幅に拡充されていることから、新規感染者数が増加するのは必然であり、このデータにだけ着目して悲観するのは早計であろう。

 致死率(新型コロナ感染者に対する死者数の割合)*2は、米国が6.0%から2.6%へ、ドイツが4.7%から2.2%へ、いずれも5、6月頃に付けたピークから大幅に低下している。これは、無症状感染者の確認が増えただけでなく、新型コロナに対する医学的知見が蓄積され、重症化のリスクが低減されている証左ともいえる。ただ、このまま新規感染者数の急増が続けば、医療体制がひっ迫し、直接的な要因が新型コロナである場合に限らず、死者数増加が懸念される。再び大規模な都市封鎖に伴って景気が後退する可能性も無視はできなくなるだろう。

 ドイツでは14日、メルケル首相と連邦16州の首相が協議し、感染拡大抑制のための規制強化で合意した。人口10万人当たりの新規感染者数*1が35人以上となった場合、マスク着用義務や集会人数制限などが強化され、50名を超えた場合は一段と規制が強化される。大規模な都市封鎖はその先にあるうえ、人口10万人あたりの新規感染者数*1は13人(27日時点)にとどまるため、楽観はできないものの、現時点で景気後退まで見込む必要はないと考える。

 対して、米国の人口10万人あたりの新規感染者数*1は21人である。そのうえ、人口1000人あたりの急性病床数*3と医師数*3は2.5床、2.6人と、ドイツ(6.0床、4.3人)に比べて受け皿が小さい。米国では経済活動への規制が限定されているものの、ドイツに比べれば医療体制のひっ迫、大規模な都市封鎖、までの距離は短いはずである。よって、トランプ政権が継続したとしても、経済活動優先の方針について見直しを迫られる可能性があるだろう。

*1 新規感染者数は1日当たり、7日移動平均、出所:European CDC(欧州疾病予防管理センター)
*2 出所:European CDC(欧州疾病予防管理センター)
*3 出所:OECD(経済協力開発機構)

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