中国経済:景気回復ペースは巡航速度に近づく

■ 9月の中国主要経済指標は改善が続き、世界に先駆けて景気が持ち直している

■ 中国では、来週の5中全会で、中長期的な経済の指針が協議される

 19日に中国の主要経済指標が公表された。7-9月期の実質GDP成長率は前年比4.9%で2四半期連続のプラス成長となり、市場予想こそ下回ったものの4-6月期より伸びが大幅に加速した。同時に公表された9月の鉱工業生産(前年比6.9%増)、小売売上高(同3.3%増)、固定資産投資(農村部除く、年初来同0.8%増)は総じて改善。先週公表された貿易統計でも輸出(同9.9%増)、輸入(同13.2%増)の伸びは8月より加速している。7月には長江流域での大雨、洪水被害が広がり景気回復ペースが鈍化する兆候が見られたものの、8、9月にかけては海外需要の回復に加えて、中国国内の要因として洪水被害からの復旧・復興需要、インフラ投資などの繰延需要が高まっている。この結果、コロナ禍以前の成長率には届かないものの、世界に先駆けて景気の持ち直しが顕著となっている。

 中国では来週26-29日に第19期中央委員会第5回総会(5中全会)が開催され、2021年からの次期5カ年計画や2035年までの長期的目標が協議される。概要は最終日29日に公表される予定で、今後の中国の中長期的な政策方針を示す重要な手掛かりになる。短期的には景気回復を優先し歳出拡大を継続することが見込まれる。だが、中長期的には過剰債務の削減に加え、投資の成長寄与度が高い歪な経済構造を是正し消費主導の経済に転換することが課題であり、中国政府の舵取りが問われている。また、産業政策では、2015年5月に「中国製造2025(Made In China 2025)」を発表し、2025年での製造大国から製造強国への転換や、中華人民共和国建国100周年に当たる2049年での製造強国のトップグループ入りの目標を掲げる。これが米国の警戒を強め今日の米中対立の主因の1つとなっているが、中国は現在もこの方針を堅持している。米中対立激化により中国は半導体の内製化に着手しており、産業補助金など自由競争を阻害する政策を推進する方針が示されれば、米中対立を一段と煽る可能性も否定できない。両国関係の重要な岐路にもなり得るイベントで、数値目標以外にも注目すべき点は多いだろう。

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アロAro(マーケット最新情報お届け大臣)
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