【ルーツ旅日記 #3】 そら、鉄子になるってよ ~乗り鉄編~
釜石旅2日目。
宿を出で向かった先は釜石駅。
釜石駅はこじんまりしていますが、花巻からのJR釜石線と三陸鉄道がホームを共有している、おそらく鉄道ファンの方には人気の駅のひとつなのではないでしょうか。
そんな訳で旅二日目、わたくしそら、色んな意味で鉄子になります!
ノリと雰囲気だけでこのワードをチョイスしていますので、優しく受け止めて頂けたらと思います。
全線開通したのはようやく3年前であるとのことに少なからず衝撃を受けました。
前日の自動車道全線開通も含め、交通網が分断無く繋がることは、復興を進める各市町村にとって非常に大きなエネルギー源となることでしょう。
そこにはこれだけ長い時間を要したということを忘れてはならないし、まだまだ現在進行形なのだということを痛感しました。
【三陸鉄道】釜石駅〜陸中山田駅
せっかく釜石まで来たのだから絶対に三鉄に乗りたい!!
ただ、北は久慈駅から南は盛駅までは163km、片道4時間半もの道のりであるため、全区間乗るにはかなり時間を要します。今回の旅ではちょっと時間が足りません。
わずかな区間だけでも海岸線を走る三鉄に乗ろう!
ということで、上りと下りの時刻表から往復するのにちょうど良いダイアを探し、8駅先の陸中山田駅まで行くことにしました。
釜石から陸中山田まではおよそ40分ほど。
陸中山田駅周辺を散策した後、釜石駅へ戻る計画です。
9:03釜石駅を発車。
この日も天気は最高で、すでに脳内では「あまちゃん」のテーマソングがエンドレスで流れています。
ちなみに、あまちゃんの舞台はもっと北の久慈。
そして放送当時はこの日乗る路線はまだ開通していなかったことになります。
車窓からの景色を眺めながら、青い海が見えるのを待ちました。
…が。
あまり海が見えません。
見えるのは、コンクリートの高い壁…
港や市街地に面しているであろう場所は高い防潮堤が続いています。
所々高台となっている区間では、眼下に海岸線を見ることができました。
防災と安全を第一に全てのものが造られていることがよくわかります。
そして通過する駅舎はどこもまだ新しく近代的です。
目に映るもの全てが静かにメッセージを放っていて、五感と思考をフル回転させながらそれを受止めました。
45分ほど電車に揺られ、陸中山田駅に到着です。
このあとひきかえすための釜石行きの電車は10:36発。
滞在時間45分ほどで、駅周辺を散策します。
可愛らしい陸中山田駅舎を出て海の方向へ向かって歩きだしますが、全く海は見えません。
目の前に広がるのはやはり高いコンクリートの壁。
この中がどうなっているのか、海の景色がどのようなものか全く見えないのです。
海岸沿いと市街地が明らかに隔てられています。
港の中への出入りは大きな門をくぐらなくてはなりません。
立ち入り禁止ではなさそうなので恐る恐る、門から中に入るとそこには静かな海が広がっていました。
どちらが内側でどちらが外側なのでしょうか、ただ明らかに二つの世界は隔てられているのです。
人の暮らしを守るためのコンクリートの壁。
でも…
何が正解なのでしょう。
何も失わなかった私が言えることではないし、ここに住む人々にとってもその答えは出ないのではないでしょうか。
復興とは何か。
防災とは何か。
人の営みとは何か。
命とは何か。
自然とともに生きるとはどういうことか。
高い防潮堤が続く景色はそんなことを繰り返し問いかけてきます。
そして飲み込んだ思いが心をぎゅっと締め付けます。
穏やかな港の景色を眺め、しばらく潮風を感じたのち、駅へ戻ることにしました。
【三陸鉄道】陸中山田駅〜釜石駅
陸中山田駅で購入した切符は、昔ながらの硬券(厚紙の硬い切符)
しかし硬券という言葉すら知らないニワカ鉄子・・・
哀愁たっぷりで可愛らしいこのフォルムは本物の鉄子でなくとも、ときめきます!
旅の思い出に持ち帰らせていただきました。
帰り道もまた車窓にかぶりつき、その景色を目に焼き付けます。
新築の家が並ぶ集落、そして昔ながらの家が並ぶ集落、その景色の繰り返し。
広く切り取られたままの土地・・・
そして何より忘れられないのは、三鉄に向かって笑顔で大きく手を振ってくれる地元の方々の姿が何度も見られたことです。
さまざまな思いが込み上げ、私も気づくと手を振り返していました。
私も頑張ろう、私のできることをやっていこう、強く思った三鉄旅でした。
片道45分の電車旅はあっという間。
午前のうちに釜石駅へ戻ってきました。
ただいま、釜石。
三鉄を降りた鉄子は隣のホームへ向かいます。
そこにあるのは…
続く。