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【こはるフォト絵本3】あまい雨に想う


いつの春だったか


ずいぶんと前に、もう

あなたが逝ってからの年月を

ゆびを折って

数えることもしなくなった



それでも

そんなこちらの意地など構いなく

けさも窓のむこうは

あの日と同じく

白々と霞み

音もなく

あまい雨が降っている



あれは出会った頃



あなたが

首をほんのすこしだけ傾げて

ん?

と、聞き返すそのしぐさを



わたしはいたく気に入って



会話はわざと囁くほどに

声のちいさな女の子の

ふりをしたの



あるいは

いつかの夕暮れ時



珈琲を片手に

本を開くその指が

ほっそりと長く

まるでやわらかな栞のようで



すでに見慣れたその指を

飽きもせず

ひとしきり見つめたりもした



ああ

ほら、あんのじょう

花のにおいを纏った雨が

そんな欠片のような

さもない記憶ばかりを連れてくる



しかたなく

わたしはふっと観念し

白い空に

声をひそめて話しかける



そちらでは

いかがお過ごし?



また



つぎのあなたとわたしで

きっと

逢いましょうね





text by haru photo by sakura


こんにちは
haruです

さいごまで読んで下さり
ありがとうございます

フォト絵本3作目は
『あまい雨に想う』
でした

一昨年の春先
雨あがりの里山を
写真担当のサクラさんと歩いた日

この椿にグッと心奪われました

「ぼくはん椿」と書かれた素朴な文字と
深紅の花姿

この花で何か書きたい!

衝動にも似た切実な思いが
腹の奥からせりあがってきました

「サクラさん!
この椿をとにかく撮っておいてほしい!」

サクラさんは
「言わずもがなだよっ」という雰囲気で
すでにずんずん撮り始めていました

何を書けるかは分からないけれど

出来上がった写真を見れば
書きたくなる何かが
きっと生まれるはず

そんな漠然とした、
でも確信のような芯がありました

深紅の椿

皆さんなら
どんな思いを馳せますか?

わたしに見えた世界は
こんなふうでした

誰かの思いとつながれたらしあわせです

未だ極寒の冬ですが…
しっとりとした
春の写真をめくりながら、
ゆっくりと、呟くように
読んでみて頂けたら…

なんて、思ってます

それでは
またよければ
来週日曜日に

haru


《御礼》

だんけひつじさんが
前記事のエッセイ
『青春そのもの』を
〝ひだまりマガジン〟に
追加くださいました

やさしい記事があつまる中に
こはるも入れて下さり
だんけひつじさん
いつもほんとうにありがとうございます


また
ひいろさんは
〝日色のさんぽみち〟マガジンに
『青春そのもの』を


〝いのちのページ。心音〟マガジンには
2/13(水)のつぶやきを
追加くださいました

こっちゃんの追悼に
たくさんの方が訪れて下さって
心があたたかくなりました

ひいろさん
ありがとうございました



さらに
蒼乃さんのマガジン
〝大切なお部屋〟には
『青春そのもの』が追加頂けました

誰かに「大切」と思って頂けること
しみじみとうれしいです

蒼乃さん
ありがとうございました




こはるの本です


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