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「本と香りをめぐる対談集」Vol.4「わたしが一番きれいだったとき」~文学アロマフェア~

2021/12/6(月)~12(日)文学アロマフェア~大切な誰かに贈る1冊の香り~@BOOKSHOPTRAVELLER

BOOKSHOP TRAVELLERは、約100人のひと箱店主たちが棚を借りてつくる下北沢の本屋。そこに集う個性豊かなひと箱店主たちと、“言葉×香りのアロマセラピー「読むアロマ」”のアロマ書房のコラボレーション企画のレポートnote「本と香りをめぐる対談集」を連載していきます。第四回目は「百年の二度寝」の河合南さんです。

文学アロマフェアの詳細はこちら


ひと箱店主:百年の二度寝 河合南

【プロフィール】
江古田にある本屋【とか】の店「百年の二度寝」店主です。


【選書した本】
「わたしが一番きれいだったとき」(「茨木のり子詩集」収録 谷川俊太郎選、岩波書店)

【作品概要】
若く輝けるはずの時間を戦争に奪われた詩人が、それでも胸を張って焼け跡を歩く姿が印象的な詩です。


「本と香りをめぐる対談集」Vol.4


アロマ書房:こんにちは。今回、「大切な誰かに贈る1冊」ということで『わたしが一番きれいだったとき』を選ばれましたが、選書の理由を教えてください。

百年の二度寝 河合南(以下、河合):一度奪われたら帰ってこない若き日のきらめきと、それを奪われた悲しみと怒り、それでも前を向く気持ちが内包された、平易だけどとても複雑な詩だと思っています。時間と感情の重なりを、香りの重なりでどう表現されるのかに興味があるので選びました。
誰かに贈るというよりは、自分の心のおくにこっそりしまっておくイメージです。

アロマ書房:ありがとうございます!百年の二度寝さんには、お店がある「江古田の香り」をご依頼いただいたことがあるので、「言葉×香り」をよくご存じで、核心をつく言葉をすでにいただいた気がします(笑)
それでは、香りを作る参考にさせていただきたいのですが、作品の世界観を色に例えるなら何色でしょうか?

河合:若葉のみどり、かな?

アロマ書房:作品の空気感を表すとしたらどんな言葉になるでしょう?
※ 選択方式でお答えしていただいています

河合:明るい、暗い、苦い、外交的

アロマ書房:最後になにかあればお願いいたします!

河合:詩の内容としては、わりとやり切れない話なのだけど、最後の前向きに戦後の街を歩いてゆく部分に元気をもらった記憶があります。
詩の内容をあらすじで伝えるのは困難なので、全文引用されているブログ記事にリンクします。ご参考になれば。

アロマ書房:「平易だけどとても複雑」「時間と感情の重なり」が、香りの構築にもとても重要な要素だと感じました。そこをポイントにして、詩の世界観を表現したいと思います。どうもありがとうございました!


以上のお話から、わたしが作った『わたしが一番きれいだったとき』の香りがこちらです。


『わたしが一番きれいだったとき』ブレンドについて

【ブレンドレシピ】
オレンジスイート ジュニパーベリー ナツメグ
パチュリ シダーウッド


「そして前を向いて生きていく」をテーマに作りました。前述の「平易さと複雑さ」「時間と感情の重なり」も大切にしたポイントです。香りのテイストは、作品の空気感から「明るい、暗い、苦い、外交的」。
相反する要素が混ざり、時間の経過とともにひとつのストーリーを語ります。

ブレンドした香りの解説です。

オレンジスイートは、若き日のきらめき。明るいエネルギー(失ったもの、そしてこれから)。柑橘系の香りのなかでも、まっすぐでシンプル。

お酒のジンの香りづけとしても有名なジュニパーベリー。心身や空気の浄化に役立つ香り。その鋭い葉は、外側の世界からその身を守るかのよう。

ナツメグは貴重なスパイスとして、古くから用いられたスパイスのひとつ。意識をクリアにし、進んでいく活力を与えてくれる。種から抽出される香りは、無限の可能性とエネルギーを秘める。

聖書にも登場する神木のシダーウッド。まっすぐにのびる木部は、自分軸をたて、生きていく意思と覚悟を支える。

そして、パチュリ。生葉に香りはなく、発酵させてからその土っぽく温かい香りを抽出する。時間の経過とともに熟成するのは、まるでワインのよう。

一見シンプルな柑橘テイストなのですが、時間がたつにつれ、ベースのシダーウッドとパチュリが立ち上がり、変化がうまれるブレンドです。
香りのトーンに重さはありません。彼女はもう前だけ見ているのですから。


わたしが一番きれいだったときの香りの感想


アロマ書房:完成した香りを嗅いでみていかがでしたか?

河合:かなり意外な感じがしました。
「いちばんきれいだったとき」の若さと輝きを前面に出した香りを何となく予想していたので。

この香りが表しているのは、来るはずだった輝かしい時間と言うよりは、戦争に押さえつけられた日々と、失われた時間への哀惜を抱えながらも前を向いて歩いていく日々の重なりなのかな?と思います。
パチェリという香料ははじめて知ったのですが、独特の土っぽいと言うかカビっぽい……香りをちゃんと「良い香り」に感じさせるブレンドがやっぱりすごいな、と思いました。(疎開や勤労奉仕で)土にまみれた戦時中の香りのようにも感じましたし、戦後の「禁煙を破ったときのようにくらくらしながら」舶来の文化を吸収する詩人の姿も想起させる香りだと思います。

アロマ書房:ありがとうございます!予想外の香りにもかかわらず、深く繊細に受けとめてくださって、本当に感激です。お話に出たパチュリは、まさにブレンドのストーリーの重要な役割を果たします。ご自身のためにそっと香っていただければと思います。どうもありがとうございました!


「文学アロマフェア~大切な誰かに贈る1冊の香り~@BOOKSHOPTRAVELLER」開催詳細

開催期間:12月6日(月)~12月12日(日)
会場:BOOKSHOP TRAVELLER(〒155-0031 東京都世田谷区北沢2丁目30−11北沢ビル3F)
営業時間:12時~19時
定休日:水・木

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