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奄美大島ソロ旅行② 〜ゴッドファーザーとジュディマリ〜

私は奄美大島にソロ旅行をした。夜居酒屋に行くと現地民のおっちゃんと話すようになり、楽しい夜を過ごしていた。そろそろお開きかと思う頃、おっちゃんが「2軒目に行こうか」と提案してくれた。嬉しくはあるものの、大阪出身の私は危険な雰囲気を察し、酔いは覚め、臨戦態勢に入った。(前回参照)

2軒目に到着した。スナックであった。

中にはカウンター席が8つほどあり、ママが1人立っていた。「今日は居酒屋で出会ったお兄ちゃんも一緒」とおっちゃん。「あら、いらっしゃい」

臨戦体制を隠しつつ、3人での会話が始まった。おっちゃんは明らかに酔っ払っており、ママは優しくおしとやかになだめている。

いや、これは大丈夫かも、と思った。この雰囲気で何十万はないだろうと確信するくらい、親戚の家のような穏やかな雰囲気だった。

会話を楽しみながらホッと一息つく頃だった。

カランカラン「お、誰かおるな」
怖そうなおっちゃん方4名が入ってきた。

この時ほど心臓が捩れた時はない。
現れた4名は、1名は銀髪オールバックで、見た目はゴッドファーザー。1名は明るすぎるスキンヘッド。1名はガタイの良い物静かな人。最後は普通のおっちゃんだった。

青天の霹靂、痛みだけなら二等分である。ゴッドファーザーとスキンヘッドの方が出てきた瞬間、目の前が真っ暗になり、武装解除を行った。完璧な無条件降伏であり、どんなに不利な講和条約であっても調印してしまうと思われる。

私の脳裏にまず浮かんだのは、カード決済の上限額である。ここでもし高額の支払いになった場合、払えるのか。なんぼに設定してたかな。

もう一つ浮かんだのが、もういっそ仲良くなってしまうよう頑張ってみることである。私は末っ子で、学生の頃からいじられキャラに徹しており、可愛がられるのは得意な方である。どうせダメなら、全力を尽くした上で果てるのが、後悔しない生き方であろう。

よし、できることは全部出し切って、ダメなら払う。払えないならもうその場の流れに任せる、これで行こう。決意が固まった。

7人での会話が始まった。
ところが、私の予想外の方向へ進んでいった。

まず、2軒目に誘ってくれたおっちゃんと4名は知り合いであった。そして、スキンヘッドの方が空気を読み、めちゃくちゃに優しい。

スキンヘッドの方中心に自己紹介をしてくださった。官職出身の方が2人、お医者さんが1人、小売店の方が1人であり、皆さん素晴らしい経歴をお持ちであった。人生経験故のオーラだったのである。

皆様、私の話も優しく聞いていただき、私のわからない話はそこそこに、私にもわかる話ばかりしてくださった。先程の決意は遥か彼方へ、心の底から楽しんでいた。

そして、カラオケ大会が始まった。

私は20代、他全員が60代とのことで、何を歌ってよいかわからなかった。おっちゃん方は「好きな歌を歌ったらいいよ!」と優しく声をかけてくださるが、やはり知らない歌と知っている歌では反応が異なるであろう。検討を重ね引き出した歌は、ジュディマリであった。

ここで20代の方へ、声を大にして言いたい。
ジュディマリはやはり神であり、必修科目である。

まずはOver Driveを歌った。カラオケの点数が良かったこともあり拍手喝采であった。「なんでこの曲知ってるの?」と言っていただき、皆様もこちらとの接点があったことに驚きのようであった。これほどジュディマリの凄さを実感したことはない。

そこからは、皆様の方からジュディマリを入れていただいて私が歌ったり、それはそれはちやほやしていただいた(時々プリプリや松田聖子も入れた)。ゴッドファーザーの方は渋い声が心地よく、ガタイの良い物静かな方は驚くほど美声であった。私に気を遣っていただいている構図が申し訳無かったが、本当に楽しかった。

この回は12時まで続き、お開きとなった。
楽しくて忘れていたが、お会計という問題が残っていた。

請求書は、ママからスキンヘッドの方に渡された。あれほど恐れ慄いていた請求額は一人5000円程度。不平等条約に調印することはなく、世界平和が訪れた。

奄美大島は自然、景色もそうだが、何より人の良さが溢れている。今度は私が少し歳をとってから行きたい。本当に素敵な旅であった。

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