歯科矯正をはじめた
昨日、歯に矯正装置をとりつけた。歯の表側にマルチブラケット装置をとりつける、一般的なワイヤー矯正である。
歯並びがめちゃくちゃ悪いわけではない。
矯正の為の歯科検査が終わった段階で、高額な治療費を払った割に見た目はそこまで変わらない可能性があるのでよく考えた方がいいと矯正歯科の先生に言われる程度の歯並びだ。かなり真っ当な先生である。
しかし、左の八重歯に唇がひっかかる、それにより左側だけ法令線が出てくる、前歯のでこぼこに食べ物がひっかかる、上の歯と下の歯の中心が左右にずれている、と自分の中で気になる部分は多々あった。
審美的な意味よりは生活上の不便を解消したい、ということを説明したところ、先生の納得も得られ、治療を始めることになった。
カウンセリング、検査、治療の開始まででおよそ2ヶ月かかった。
カウンセリング3,000円、検査15,000円、基本的な技術料プラス装置費大体750,000円(全て税抜き)。クレジットカードを使えたので全て一括で払った。人生で一番高額な買い物である。事前にクレジットカード利用可能枠の一時的な増枠を申請しておいた。
何年か前、脱毛のローンと奨学金を返済期間の途中で一括返済した際、一括で買えないものは今後いっさい買わないと決意したので、その意志を貫けた今、結構気分がいい。
1.検査結果
検査結果を聞く段階からかなりおもしろかった。
大まかな問題点を自分なりにかみ砕いて順番に書いてみる。
まず、上下歯列正中のズレ。
これは顎関節症により下顎をぶら下げている部分の骨が左側だけ小さくなった結果、下顎全体が左寄りになったことが主な要因と考えられるらしい。よって歯科矯正で治るものではなく、根本的な治療としては下顎骨の手術が必要となるが、そこまでの負担は不正咬合の程度からして不適切、とのことだった。
歯科矯正で顎関節症も改善しないかなという当初の期待は、カウンセリングの段階ですでに否定されていた。どちらかというと矯正によって悪化させないことが目標になる、との説明があった。右側は理想的な噛み合わせになっているが左側がずれており、その微妙なバランスが崩れると顎関節症が悪化する可能性もあるらしい。
次に、上顎はわずかにスペース不足のため左側が程度の軽い八重歯。
ただし上顎前歯の歯根が短い可能性があるため、大幅な歯の移動は避け、非抜歯での治療を推奨。
これについては矯正検査後に一般歯科でCTを撮ってもらったところ、予想よりは歯根が長かったので歯根吸収のリスクは若干下がった。歯根が短いのは、小学校高学年まで指しゃぶりをしていた影響が大きいと思われる。
そしてCTを撮ってみて判明したのが、上の歯の骨が全体的に土台の骨からはみだし気味、ということ。下顎が遺伝的に大きいため、それをカバーするためにそうなっているらしい。
この事実が、自分の顔に対する長年の謎を解明してくれて、ものすごーく満足というか、スッキリした。
なんか自分の口元変だなあというのは中学生ぐらいからずっと気にしてはいた。上唇が厚いというか太くて、山の部分がきゅってなってなくて、なんか変。
最近ようやくその「なんか変」をもっと具体的な言葉にできたんだけど、顎にしわが寄らないように口を閉じて笑おうとすると上唇で微妙に下唇を覆うようにしないといけない。それに、友達が撮ってくれた写真に写っている、口を開けて笑っているのを斜めから見た自分、なんか上顎が半球みたいな形で下顎に覆い被さっている……?なにこの骨格??っていう。
下顎が大きい!そういうことか!父方、先祖代々このアゴしてんだわ!
最後、下の歯は空隙歯列。これは舌で歯を押す癖によるものと考えられる。
数年前に自分でもその癖に気がついて、なるべく舌を上顎にくっつけておくように気をつけてはいたが、すでに動いた歯は元にもどらない。
この件についても、抜歯すると口腔内が狭くなりさらに舌の癖がつよくなる可能性が高いため、非抜歯が推奨されるとのことだった。
以上の問題点から、非抜歯の範囲内で、下の歯の隙間分をできるだけ右に寄せて上下正中を近づける、左上は必要に応じてアンカースクリューなどを併用して奥歯をわずかに後方移動し、左上犬歯のでこぼこを解消する、という治療方針になった。
程度からしてアライナーによる治療も可能だったが、費用対効果を考えて一般的な表側からのワイヤー矯正にした。
左下の親知らずも抜いた方が治療に有利だが、神経や動脈の入った管に歯根がほぼ接してるような状態で要検討、という段階。
「すごく酷い歯並びというわけではないけど恵まれてるわけでもないって感じだね」という先生の言葉に深く頷く。
2.実際にとりつけてみて
そんな感じでいよいよ昨日上の歯に装置をとりつけた。ブラケットをくっつけている最中は、直前に食べたコメダのエビカツサンドとミートスパゲッティが効いて、たぶん寝てた。
装着直後から現在に至るまで、思ったより違和感がない。痛い痛いとさんざん聞いていたけれど、四六時中痛いわけではなくて食べ物を噛むときに強く噛めないような痛さ。
今朝、矯正開始後はじめての食事をした。親子丼。
作り置きのねぎと鶏もも肉のねぎま風炒めを細かく刻んでつゆで煮て卵でとじた。うまい。
そのあとの歯磨きには20分くらいかかった。
現状の手順を書き留めておく。
3.歯磨き
◎家での歯磨き
①バトラーCHX洗口液で口をゆすぐ
(夜のみフィリップス ソニックケアー コードレスパワーフロッサー)
②フィリップス ソニックケアー イージークリーン(ブラシはインターケアー)にラカルト・ニューをつけて磨く(研磨剤が入っていてフッ素が入っていないので、使い切ったらバトラーデンタルケアペーストにする予定)
③ワンタフトブラシとか歯間ブラシで細かく磨く
④普通の歯ブラシにアパガードリナメルホームケアペーストをつけて磨く
(夜のみバトラーエフコートでフッ素洗口)
◎職場での歯磨き
①普通の歯ブラシにNONIO知覚過敏用(フッ素1450ppm配合)をつけて磨く(使い切ったらクリンプロにしたい)
②ワンタフトブラシと歯間ブラシで細かく磨く
(③コンクールFでの洗口を導入したい)
オーソワンの矯正用フロスも買ってみて今日届くけど、このワイヤーと歯との隙間に本当に入るのか?
4.歯科矯正の仕組み
歯科矯正について、物理的な力で歯を動かすというぼんやりした理解をしていたのだけど、歯の根を覆っている歯根膜に矯正装置による圧力がかかることで膜の厚さが変化し、その膜が元の厚さに戻ろうとする力によって圧迫されている側は骨が溶け、押している側は隙間ができそこに新しく骨が形成される、という仕組みで歯が動くらしい。
説明を聞けば聞くほど、これってものすごく高度で複雑な技術じゃない?物理学の知識も必要なのでは?という、矯正歯科への尊敬の念が高まっていく。これは確かに、80万の価値がある。
矯正の先生が白髪交じりのぼさぼさの髪を無造作に束ねた、恰幅のいい男性の方で、近代的で清潔な歯科医院にいるよりかは伝統のある古い進学校の美術室で自分の油絵制作の片手間に授業をやっている方が似合うような、そんな雰囲気である。
歯科矯正、たのしい。