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ENDER LILIES クリア後の微ネタバレ感想

 2025年1月6日クリア(A、B、Cエンド全て到達)。プレイ時間は約30時間。アイテム回収や実績コンプにこだわらなければ、25時間程度で終わりそう。
 物語の核心には触れませんが、多少のネタバレはあります。

 舞台は人を狂わせる『穢れ』をもたらす死の雨によって滅びた王国『果ての国』。
 主人公は記憶喪失状態で目覚めた真っ白な少女リリィと、謎の黒衣の騎士。果ての国に一体なにが起きたのか。リリィは何者なのか。それらを知るため、王国中に満ち溢れる狂気の存在『穢れ』との戦いに身を投じるお話。



世界観全体に通ずる光と闇の美しさ

 人を狂わせ、怪物に変える『穢れ』の蔓延によって滅びた王国が舞台――ということで、ゲーム中はどこまでも陰鬱で凄惨な光景が広がり続ける。
 しかし、その薄暗い世界観を彩るグラフィックはとても精緻で、退廃的な中にどこか『滅びゆくものの美しさ』もまた感じさせる。
 その中心を行くのが、肌も服も髪の毛も真っ白で、儚さと健気さが全身から溢れ出てるリリィとくれば、否が応でも彼女の純真無垢さが引き立つというもの。
 この陰鬱さと美しさのコントラストが、このゲームを彩る一番の魅力だと思う。無論、こういう表面的なビジュアル部分のみならず、この世界を生きるキャラクター達が抱える内面の悲喜交交にもそれが現れている。
 BGMも場面ごとにとてもマッチしていて、美麗な旋律に癒される。これが音まで滅入るモノだったらとてもやってられなかっただろう(最終盤のBGMはメチャクチャ怖いんだけど)。水に入った時は音がくぐもるとか、芸コマな所も良し。
 担当者はゴブリンスレイヤーやDeemoに曲を提供してる方だとか……。

王道のメトロイドヴァニア

 横スクで敵と戦い、フィールドを探索してアイテム収集、リリィを強化してより深奥へ――という王道のメトロイドヴァニア(いやまぁ、王道を語れるほどこのジャンル詳しくないけど)
 やられるとお金が減るとか、解いた仕掛けがセーブ時の状態に全て巻き戻るとか、そういったデスペナルティがほとんど皆無なのは気楽だった。強気にガンガン探索できる。いつだってレストポイント(セーブ場所)にも戻りたい放題。その辺は、この手の高難度ゲーにしては随分と易しい。

アクションの楽しさ

 道中で出会う中ボス、章ごとの大ボスを倒す(浄化する)ことで彼らを仲間にして(?)能力を使うことができた。ロックマン的な。
 とはいえ、正直使わない能力もかなり多かった。産廃というわけではなく、ボスに有利な能力とかもあるんだろうけど、別に全部使わなくても全然クリアできたということで。対空やら遠距離武器やら浮かせ技やら、使いこなそうと思ったらやりこみになる。
 特にゲルロッドの凄まじい破壊力は気持ち良い。動作は遅いけど、生半可なザコは一発二発で軽くぶっ飛ばしてくれる。正直、他の能力でちまちまダメージ稼ぐのがアホらしくなることも。
 威力もスピードも万能な黒騎士、スキはデカいがフルヒットすればとても気持ち良いロマン武器なウルヴ、設置物を破壊できるシルヴァあたりはよく使った。
 そしてファンネルとなって自動で追尾弾を撃ちまくるカラスと、敵に噛みつくイッヌには多くのリリィがお世話になったに違いない。とりあえず出しておけばダメージがモリモリ稼げるし、完全に任せて自分はひたすら逃げるチキンプレイもご自由に。

 あとリリィのモーションがマジでいちいちかわいい
ダッシュ能力を得るまでの回避動作が、つま先から手の先までピーンと伸ばしたメチャクチャ綺麗なヘッドスライディングなのはかわいすぎて笑っちゃったよ。公式説明曰く『少女の懸命な飛び込み』。健気か。
 そのダッシュも浮遊して突進する騎士にぎゅっと掴まって一緒に飛んでいくという。これ考えたスタッフさんには心から敬意を表したい。
 仲間が敵に攻撃する際は怖そうに身構えてたり、そういう所も丁寧。このかわいい癒し要素は国産ゲームの強みというところか。

探索の楽しさ

 一部の仲間はダッシュや壁破壊などアクションの幅を広げてくれるので、それらを得てから、怪しいと思いつつも一旦スルーせざるを得なかった場所に戻って新アイテムを得られる。
 この探索の面倒くささを緩和し、『楽しい』と感じさせてくれるマップ仕様の最重要ありがたポイントが

  • 未発見アイテムがあるエリアは水色に、全て見つけたエリアは茶色にしてくれる

  • まだ未開通のルートの入口がある場合、赤い点で表示してくれる

 これらは本当にありがたかった! 探索が行くあての見えない苦行にならず、あとはどこに行けばいいかが一目で分かって大助かり。
 まぁヌルいと言えばヌルいが、そのエリア内のどこに何があるかを探すのまでは流石に自力なわけで、そこは知恵と創意工夫を求められるのでやっぱり楽しい。
ただ一部、RTAやってんじゃねーんだぞと言いたくなるくらい、回収に裏技じみたテクを要するアイテムもあった。仕方なく攻略見てマジでげんなりした。あんなもん自力で気づけるものなのか……。

断片的に語られる背景

 各所で拾えるアイテムの解説や、穢れに堕ちた者達を浄化した際に垣間見える過去の回想、紙片や手紙といった形で垣間見える世界観。穢れの軍勢と戦った騎士の記録であったり、穢れを浄化する巫女の手記であったり、穢れを研究する魔術師の悍ましい記録であったり。
 それぞれ何らかの理由で死んだキャラクター達の人となりが、少しずつ分かっていくのが面白い。断片的ゆえに解釈の余地がふんだんに残されていて、考察のしがいもある。
 果ての国はいかにして興り、穢れなる存在はどこから来て、そしてなぜ『死の雨』による滅びは訪れたのか……。彼ら人間達の業の複雑な絡み合いを紐解けば、自ずと真実らしいものに辿り着けるはず。

 いいエピソードもいっぱいあったけど、特に好きなのはウルヴとフリーティア。
 巨漢で剛力で周囲から恐れられてて戦場にしか居場所を見出せない孤独な口下手の騎士と、外の世界を知らず天真爛漫で悲痛な運命を背負いながらも健気に生きる14歳の女の子が『お友達』になるお話なんて、嫌いな人いるんですかね……。
 ウルヴとの戦闘が終わった時、彼がいた場所に花が咲き乱れていた意味を悟って思わず泣きそうになった。穢れて狂って、肉体の主導権を失っても尚……。

良作だった

 素晴らしい世界観と手応えあるアクションを味わえる良作でした。
 決して簡単ではないけど、ソウルライクやら死にゲー呼ばわりするほど難しくもない難易度は絶妙だった。ボスも数回挑めば倒せる程度で、特に詰まることもなく(むしろラスボスがあまりにも弱すぎたのは拍子抜けだった……)

 退廃的で穢れて滅びゆく世界に、それでも確かな希望の光を込めた美しい世界観。リリィと黒騎士を通して物語の終点にたどり着き、これを味わえて本当に良かったです。
マグノリアも多分プレイすると思う。

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