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家の空気を追い求めて・・・25年 (1)

健康を考え、家の空気を追い求めて25年経ちました。


「室内空気環境」との取り組みは、私が建築設計事務所を開設して8年後の1999年に、ある住宅の依頼を頂いたのが始まりでした。

そのお客様から「においのない安全な家をつくれますか?」と問いかけを頂きました。

その頃丁度、シックハウス症候群(※1)の問題が取り沙汰され始めた時期でもあり、このお客様の一言で、「誰もが同じ空間にいる限り、同じ空気を吸わなければならない、だからこそ目に見えない空気の品質を上げてみたい」、これが、私の「安全な空気を求める」始まりです。

※1:シックハウス症候群とは住宅の高気密化に伴い建材等から揮発する        
    化学物質によりもたらさられた健康被害(化学物質による空気汚染)


においを吸着する自然素材の使用

はじめは、多くの設計事務所と同様、できるだけ建材の化学物質の少ない自然素材の材料を使い、特に珪藻土をはじめとする「におい(物質)」を吸着する素材を使用することが中心でした。


空気の数値化

その後、室内空気を分析・測定する会社との出会いの中で、当時社会問題となっていた学校「シックスクール」の調査にたずさわり、空気中の化学物質濃度の数字とその発生源及び対策方法等、まだ手探りの状況のなかで多くのことを、学ばせていただきました。

またこの学びと並行して、大学をはじめとする研究者の先生方の研究や取り組みを拝見し、この研究やおもいを「実社会のなかで身近な領域から少しでも実現する」ことが、私の役割だと考えました。

建物の建築には多くの建材が使われますが、化学物質の分析により数値としてみる空気は、私にとり非常にショッキングな内容でした。

これは合板に使われる接着剤から発生する化学物質だけではなく、自然素材からも発生しており、アレルギーを持っている方の中には、桧のにおい(防虫効果の成分)に反応する人が多いということも知りました。


空気の分析

そこで私は、自身が設計・監理を行った建物の「空気の品質」を高めるため室内空気の測定・分析の取り組みを始めました。

室内空気の測定は建物が完成後、測定基準にのっとり部屋の空気を採取し分析を行います。

分析には厚生労働省 室内濃度指針13物質よりはるかに多い、アルデヒド類14物質+VOC42物質+TVOCを分析し、濃度を確かめることにしました。

※  厚生労働省の室内濃度指針(ガイドライン)13物質の基準発表 2002年           ※  建築基準法の改正(シックハウス関係) 2003年 
  2化学物質の規制及び24h換気の義務化


空気の分析と追及

当初は、何物質か基準値をオーバーする物質も出てしまいました。でも完成後の空気測定のため、何が原因かわかりません。

そこで問題点を確認するため、原因となりそうな建材・接着剤等材料と工事工程を現場の施工に合わせて確認し、材料のカットサンプルをつくり、ひとつひとつ簡易測定を行い確かめることにしました。

また使用量の多い材料や接着剤についてはMSDS(※2)を取り寄せ施工方法や施工時の注意等、施工者各位と情報を共有し空気の品質を上げる努力を行いました。

※2:MSDS(安全データシート)  化学物質に関する情報を提供するための     資料

そして測定と分析を繰り返すことにより、やっと求める空気の品質に近づくことができました。なおこの品質は、鼻でにおいを感じるレベルではありませんにおいでは感じることができない、数値レベルの内容です。

しかしそれでも、失敗は出てしまいます。ある物件の完成後の測定では接着材から出たと思える1物質の濃度が基準値をオーバーしました。原因は情報を共有していない施工担当者が、測定3日前に床下の水道管の補修で接着剤を使用したことが原因でした。


濃度数値からみる使用材料の見直し

数値化による空気レベルの検討を経験することにより、アルデヒド類を対象とした吸着目的の自然素材の使用はやめる事としました。

なぜならば、吸着物質は吸着の飽和状態を超えると放出の可能性があり、コントロールがしにくいからです。

でも自然素材は吸着という観点からやめただけであり、その素材感やテクスチャーは素晴らしいものが多く、今でもお客様の要望があれば使用しています。

・・・ 家の空気を追い求めて・・25年(2)につづく ・・・