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組織としてよい意思決定をするには
これは人工芝アドベントカレンダー2021 15日目の記事です。10分で何かをポストします。
本日ちょうど Kindleセールだった「賢い人がなぜ決断を誤るのか?」という本を読んだ。
タイトルは一見すると個人の意思決定について書かれたように見えるが、全体を読み通してみるとその理解は間違いで、実際は「組織でよい意思決定をするにはどうすればよいか?」というテーマを論じている本だった。
で、結論から言うと「組織でよい意思決定をするには、何を意思決定の根拠にするか(What)の精度を高めるよりもどのように意思決定するか(How)というプロセスに時間とお金と労力をつぎ込むべきである」という話だった。
本書を読んでいて何度も引用される本のタイトルとしてダニエル・カーネマンの「ファスト&スロー」がある。
一応ここで言及しておくべき点として「ファスト&スロー」自体はその本の論拠として紹介されている論文の再現性が低いことで有名になっており、その主張の真偽についてはある程度眉に唾を付けて受け取る必要があるという点である。
ただ、本書「賢い人がなぜ決断を誤るのか?」自体は「ファスト&スロー」とは扱っている対象が異なっているのも事実である。
「ファスト&スロー」は個人の意思決定を主題とし、一方「賢い人がなぜ決断を誤るのか?」は組織の意思決定を個人の手から離れたところに持っていくことでいかにその精度を高めるかというテーマを主題に据えている点で全く別の本と考えて良さそうである。
ちなみに著者のオリヴィエ・シボニーさんは仏のビジネススクール HEC 経営大学院教授で専門は経営戦略とのこと。
本書全体で強調されていたメッセージとして「組織の意思決定をする際に、一見すると天才やカリスマにみえるリーダーの意思決定を鵜呑みにしてはいけない」という点である。
むしろ組織の意思決定としては基本的に個人の考えに委ねてはならず「複数人の多種多様な意見を公平に出し切った上で様々な角度から慎重に時間かけて議論し決めていくという至って地道な意思決定プロセスを採用することがよりよい意思決定を可能にする」という当たり前といえば当たり前な話が紹介されていた。
個人的には本書の意思決定の良し悪しの尺度に「タイミング」「いかに早くそこそこよい意思決定をするか」という点が抜けているように感じたので、もう少し実践的に議論を深めるのであれば、それらを考慮して「時間」と「質の良い意思決定」のバランスについても言及があっても良かったかもしれないと感じた。
おわり
本書の内容の真偽はもう少ししないと明らかにならないと思うが、扱っているテーマとその主張自体は面白いと思った。
組織に属する一個人として、組織としてよい意思決定するためのプロセス作りは常に意識していきたいところだなと(9分55秒)。