無題22

ヨーガスートラ第1章(三昧)ノート その8

<Ⅰ-6> 
プラマーナ ヴィパリヤヤ ヴィカルパ ニドラー スムリタヤハ
「その5つとは”正しい認識” ”誤った認識” ”概念化” ”睡眠”そして”記憶”である」

前回”チッタ”の働き方はシンプルに ”苦しみを引き起こす働き” と ”引き起こさない働き” という2つに説明されましたが、このフレーズでは具体的に5つのパターンに分類しています。

①”プラマーナ” 正しい認識
②”ヴィパリヤヤ” 誤った認識 
③”ヴィカルパ” 概念化 
④”ニドラー” 睡眠 
⑤”スムリティ” 記憶
 

一つ一つについては次回に考察しますね。

こういった分類仕分けというものは「見立て方」の一つです。

裏づけに用いらていれる思想体系によって「見立て方」も千差万別。
仏教や道教、キリスト教など。それぞれに独自の分類方法があるはずです。

「ヨーガスートラ」の場合、思想体系のバックボーンとして「サーンキャー哲学」が用いられています。

◇サーンキャ哲学
この哲学の開祖は古代インドのカピラ仙人だといわれています。
この人物もパタンジャリ同様に実在の特定ができない「伝説的な存在」です。
『バガヴァッド・ギーター』にも超能力的なヨーガ行者として登場したりします。

「サーンキャ」という言葉の意味は「リスト」とか「列挙」「目録」。

科学の世界では自然の構成要因を突き止めようと、構成している事物をすべて分類・目録化していきます。
元素分類から始まって、原子や分子、クォークなど極微の次元での存在を探求しますね。

「サーンキャ」もそんな色合いを持っています。
ただし自然科学と大きく異なる点があります。

それは「二元論」と呼ばれる考え方。

宇宙の構成を追求していけば、究極的にたった二つの原理に峻別される。

そして2対(つい)の原理のうち、一方に探求可能な対象は全部まとめて収まってしまうということ。

その収まる側の究極原理のことを「プラクリティ」と呼びます。

そして唯一それに属さない、もう一つの原理を「プルシャ」と呼びます。これはもう出てきてましたね。

下の表を見ながら少しお勉強してみましょう。

この表はサーンキャの理論を簡単に図式化したものです。


この哲学は、サーンキャ「列挙」という名の意味の通り、宇宙のすべてを「24のカテゴリー」に分類します。


具現(現れた存在)として認められるカテゴリーは全部で23。

・ブッディ(知性)

・アハンカーラ(自己意識)

・マナス(マインド)・・・これらについては一応見てきましたね。


それに加えて

・5つの感覚器官(目 耳 鼻 舌 身)

・5つの行為器官(発生 手 足 排泄 生殖)

・5つの微細元素(色 声 香 味 触)

・5大元素(地 水 火 風 空)


これが具現、つまり現象として現れた宇宙の全て。

”物質” ”感覚” ”精神”をひっくるめて宇宙を「23のカテゴリー」としてまとめています。

そしてその「23のカテゴリー」の原因となる”あるもの”が示されます。
それは何かって言うと3つの異なった質のエネルギー。

ヨーガでは”グナ”と呼んでいます。

・サットヴァ ・ラジャス ・タマスと呼ばれる3つのエネルギー。
それぞれ以下のような性質を持っているとされます。


①サットヴァ ”純粋性”: 純粋、明晰、調和、愛、平和

②ラジャス ”活動性”:  活動性、興奮、情熱、欲

③タマス ”非活動性”:   不活発、沈滞、無感応、緩慢、暗

この3つのグナが様々な配合比率の組み合わせをしていく中で、物質から精神まで「23の領域」が作り上げられます。

ついてきてる(笑)?

「ワタシ、5つの素材あれば100ぐらいのレパートリーで料理が作れちゃうヨ。」

ってイメージでいいです。


そして、じゃあその3つのエネルギー。さらに根源まで遡れば「いったい何があるのか?」というと、「プラクリティ」と呼ばれる非具現的(いかなる現象としても現れない)な存在があります。 

”23のカテゴリー”の根本だから”プラクリティ”は「根本原質」と訳されます。

この”プラクリティ”と1対1で対峙し、決して交わることのない孤高のホルンのような存在。

それが”プルシャ”。
これでサーンキャーでいう「24の原理」を全て紹介したことになります。


ではサーンキャー哲学では「宇宙どのように生まれたか?」というと

いまの解説を逆からたどることで説明するんですね。

そこには、まず「精神原理・プルシャ」 「非精神原理・プラクリティ」だけが存在していました。
ある日プルシャは、「おや?」っと。そこに自分以外の存在「非精神原理・プラクリティ」を見ちゃいました。

プルシャの純粋な意識に当てられたプラクリティはなぜか「いや〜ん❤」と悶えて動き出します。
そしてうにゃうにゃと変質し、3つのグナ(サットヴァ・ラジャス・タマス)になりました。

3グナはそこからさまざまな組み合わせ方をしていくのですが、まず初めにブッディ ”知性” が生まれます。
これは「23のカテゴリー」の中で一番サットヴァ性の比率が高いものです。

あとは下るにつれてラジャスとタマスの比率が強くなっていきます。
そのブッディから、今度は アハンカーラ ”私という感覚” が生じます。


ここで道筋は二つにわかれます。 

ひとつは物質的な展開へ。

とっても微細な物質(色 声 香 味 触)から、粗雑な物質元素(地 水 火 風 空)まで。


もうひとつは精神的な展開

”マナス”(反応するココロ)。

その道具としての5つの感覚器官(目 耳 鼻 舌 身)と

5つの行為器官(発生 手 足 排泄 生殖)。

はい。これで世界のすべては、そこに出来上がりました。とさ。

”プラクリティ”がいろいろとやらかしたお陰で世知辛い世界と振り回される自分が出来ちゃいましたが。。

私達の本質は実はその世界にはないんですよ。

実は私達は”プルシャ”そのものなんですよ。


ふう。。おしまい。

んと。。

ぜんぜんピンとこなくて当たり前です。

そのサーンキャーの宇宙理論ってほんとーかいな?

って思うかもしれませんが、コトバの世界って、ぜんぶ「世界を理解できる程度に単純化するためにあるもの」であって、世界そのものを表しているわけではありませんよね。


科学でいう元素記号も単なる目印でしょ?
「H2O」が水のもつ「冷たさ」「潤い」「安らぎ」など性質の全てを現しきれていなくても「見立て」としてはとっても役に立ちます。

だからサーンキャーついてもそんなノリで(笑)。実用的であれば、とりあえず良いのです。

どう実用的かって言うと。。

ヨーガのビックテーマ ”意識が進むべき方向” が分かりやすく示せるんですね。


サーンキャー理論の用語はスートラに出てくる頻度が高いので、一応知っておくだけでも、テキストの言わんとすることが、ぐっと分かりやすくなってきます。

<Ⅰ-2> 
ヨーガハ チッタヴリッティニローダハ
「ヨーガとは、心(チッタ)の作用を止滅させることである」

”プルシャ”が真の自己である。それを見出さない限り、私たちは「生命とは有限で個別の存在である」という誤認識をし続けてしまう。
ヨーガとは、チッタ(プラクリティの領域にある自己意識)をニローダ(止滅)させること。それよって本来の状態に立ち戻る。
永遠無限の意識の場である”プルシャ”が真の自己なのだと自覚するための実践である。
になるのです。


プルシャとプラクリティの関係は、まずその程度でも抑えておきましょう。

そして、プラクリティが最初に変質した、3つのエネルギー。”サットヴァ”(純粋性) ”ラジャス”(活動性) ”タマス”(非活動性)

このアイデアは、ココロの状態の説明から、食べる食物の選び方までちゃんと応用できるツールになるので覚えておいて損はないです。

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