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防蟻工事の保証内容と免責条項の整理。そして疑問をハウスメーカーにぶつけた結果…
さて、本記事では防蟻工事の保証内容と免責条項についてまとめていきたいと思います。また、その際に専門家とも相談の上で疑問点をまとめ、ハウスメーカーに質問をぶつけました。その回答も含めて本記事に記載しました。
契約内容からの特定を防ぐために、一部の数値は非公開としておりますことご了承頂ければと思います。
なお、本契約は私と大手ハウスメーカー間での契約となっており、大手ハウスメーカーと消毒業者間との契約については存在含めて感知するところではありません。
有ったとしても無かったとしても私には関係のない話なので。
【防蟻工事の保証内容】
保証期間内であれば、シロアリに関する修繕費用を最大500万円まで無償で負担する内容となっています。
【シロアリ工事に関する特定免責事項が今回の事象にあてはまるかどうか】
以下に示す5項目に該当する場合は、大手ハウスメーカー側が責任を負わない(免責)こととなり、上記の保証対象外となっています。
それぞれの項目と今回の被害状況に当てはめたときの私の見解をそれぞれ記していきたいと思います。
1. 引き渡し後、土壌を変更する工事を行ったもの、または浸水・崖崩れなどで土壌に変更があったもの
新築時から、私が購入後、現在に至るまで上記に該当する工事はしていませんし、浸水やがけ崩れの被害にもあっていません。
しいて言えば、雨漏り→玄関ポーチ柱への水の侵入なのでしょうが、「浸水」は大雨や洪水レベルの水量であり、これには当てはまらないのではと思います。
2. 防蟻処理を施していない木材などが、本建物に近接して存在することに起因するもの
これも新築時、私の購入後ともに対象外
3. 予見不可能な白蟻生態の変化、クロアリ、外来種などに起因するもの
今回のシロアリはイエシロアリで、上記いずれにも該当せず。
4. 防蟻材(防蟻シート等)が施工されていない部分に起因するもの
以下の写真に示す通り、防蟻材注入箇所の近傍が侵入ルートであり、これについても該当せず。
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なお、この注入箇所が本当に適切かという議論があるのですが、それはまた別の記事にて。
5. (現在に至るまで)シロアリに関する必要な診断や耐久工事を実施していなかったことに起因するもの
これについても新築時から継続して防蟻工事を同じハウスメーカーに依頼しており、対象外。
こうして改めて特定免責事項を読み直すと、今回の事象は免責にあてはまらないんじゃないか?
そう思って、上記見解をハウスメーカーにメールで確認してみました。
【どの事象が特定免責事項なのか?ハウスメーカーの回答やいかに?そして専門家に相談へ】
メールを送って3週間ほどたった日、回答が返ってきました。
回答期限2週間にしてたのですが、詫びを入れられたうえで3週間後に回答です。
1. どの事象が特定免責事項なのか、ハウスメーカー回答
以下、原文ママ。
「特定免責事項①浸水(バルコニーからポーチ柱へ浸水)に該当バルコニーからの浸水が原因でシロアリが発生したと考えられる為、免責判断」
さっきも書いた通り、確かに柱に水はわずかに侵入しているのですが、「浸水」とは言わないですよね。
「床上浸水」とかでイメージされる水量が一般的なものだと思います。
仮にそれが「浸水」だとして、「土壌の変更」まで生じるかも疑問です。
2. 納得いかないので専門家に相談へ
自治体が主催している宅建士との相談会や、「住まいるダイヤル」での弁護士&建築士との相談会で、上記ハウスメーカー見解含めて相談してきました。
両社共に私と同見解で、「土壌の変更にはあたらないからこの理由での免責判断は無効」とのことでした。
3. 専門家の見解をハウスメーカーにぶつけてみたら、新たな免責条項が適用に?
専門家の上記ご意見をもとに、以下の質問をメールで送りました。これもまた2週間期限を延ばされて3週間目に回答がありました。。。
質問
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特定免責事項①には「浸水・崖崩れなどで土壌に変更があったもの」との記載がございますが、今回の事象については「土壌の変更」には当たらないと考えます。当該記載について弁護士、建築士及び宅建士に相談いたしましたが、いずれも「土壌の変更」には 当たらないとのご見解でした。この理由で免責判断とする理由について、御社ご見解をご教示願います。
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それに対するハウスメーカー回答はこちら。
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前提といたしまして、まず特定免責事項の以下が該当いたします。
「特定免責事項5.の耐久性診断ならびに白蟻に関する必要な耐久工事を実施していただけなかったことに起因するもの」
本物件は引渡し10年目に防水の保証延長が実施されていません。
今回のイエシロアリによる蝕害はバルコニーからの漏水が生じなければ発生しなかった事象であり漏水不具合後の2次被害であると捉えております。
ーーーーーーーーーー
ここで当初とは異なる事項5.が持ち出されて来ました。
「土壌の変更にはあたらないのではないか」との質問には答えていただけず、話をすり替えられているように感じます。
それが前提であれば最初から言ってくれればよかったのに。
そして何より、「引渡10年目の防水の延長保証」について、以下に掲げる問題点があります。
そもそも防水の保証延長をしても期限は新築後15年(延長保証は+5年)で、防蟻工事を更新したのが新築後20年目時点
その時点で今回の防蟻工事との関係性がよく分からない引渡10年目がちょうど私が自宅を中古で購入した時期であり、また大手ハウスメーカーにはその後継続してリフォームをお願いしており、説明の場はいくらでもあった。それが必要であれば、私が自宅を購入した時期や防蟻工事更新時期に説明をしておく義務が有ったはず。
2023年の防蟻工事更新においても、防水工事の必要性や雨漏りでの免責については一切説明のないまま、何か被害があれば補償しますくらいの説明のみで契約を結ばされた
大手ハウスメーカーは私の家を定期的に訪問し、諸々チェックをしてくれていたが、最新の2023年時点でバルコニー防水シートも点検対象にはいっており、その時点では問題なしとのレポートが残っている
さすがにこれで免責判断とされるのは納得がいかず、再度質問を送ることにしました。
4. 法的解釈も含めた再度の質問に対して、ハウスメーカー回答やいかに?
この段階で、別の専門家や法律文献調査も駆使して踏み込んだ質問を以下の通り送りました。
質問①
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・特定免責事項①には「浸水・崖崩れなどで土壌に変更があったもの」との記載がございますが、今回の事象については「土壌の変更」には当たらないと考えます。
・地中の薬剤を希釈するほどの水量が確認できなければ、一概にバルコニーの漏水を原因にすることはできないと考えます。
・仮にそれほどの水量があったのであれば、玄関部分やポーチ天井にも腐食等の被害が確認出来るのではないかと思いますが、被害状況調査(以下写真)においては、水濡れ程度は確認できたものの、シロアリ食害を除く腐食の被害までは確認できておりません。
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・また、今回白蟻の侵入ルートとなった玄関ポーチ柱については数か所穿孔した上での土壌への薬剤注入となっており、土壌への薬剤浸透にムラが発生する状況が生じれば、御社の言う「浸水」が無くても白蟻が侵入してくる可能性はゼロとは言えないと考えます。
これを踏まえて、以下について回答をお願いします。
・バルコニーからの浸水が原因とありますが、バルコニーからの浸水が地中の薬剤まで希釈するほどの水量がありえたかどうか、調査写真も踏まえたうえでご回答をお願いします。
・上記土壌への薬剤注入における土壌浸透のムラに対する白蟻侵入リスクをご回答願います。
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質問①対する先方の回答はこちら。
回答①
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浸水による薬剤の著しい希釈の可能性は低いですが、浸水による影響で通常環境からの変更は発生しているものと推察しております。
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通常環境からの変更が具体的でなく、それが免責判断につながる点の説明が不十分じゃないかと…。。。
次の質問はこちら。
質問②
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・引渡し10 年目に防水の保証延長について、弊方は御社ご担当(A氏)より一切の案内を受けておりません。弊宅は2013 年に仲介で購入した中古物件ですが、入居時から継続的にA氏経由でリフォームを依頼しており、説明の機会は十二分に有ったものと考えます。
・今回の防蟻工事を契約した新築後20 年目の時点で、同じく御社ご担当(A氏)より防水工事が「必要な耐久工事」に該当する旨の説明を受けておりません。御社から案内があったのは見積書とパンフレットのみとなり、上記耐久工事の内容についての説明を含めて、免責事項に関する十分な説明を受けておりません。
・上記1.の弊見解にも記載の通り、特定免責事項①を理由としたうえで、契約前に十分な説明のなかった特定免責事項⑤の耐久工事未実施を前提理由とした免責判断は、保証を受けるにあたっての弊方の義務について説明不足かつ、後付けで弊方の義務を主張されている状況であり、免責判断は信義則に反し著しく不合理であると考えます。
これを踏まえて、以下について回答をお願いします。
・防蟻工事の保証について、弊方は上記の通り保証書の内容を一度も見せて頂いておりませんが、御社が免責事項を主張するのであれば、頂いたパンフレット記載の「免責事項あり」の内容をあらかじめ合意していたか表示していたことが必要になると考えます(民法548 条の2 第1 項)
この条項に対しての不備がなかったかどうか、ご回答願います。
・同じく本件は、民法548 条の2 第2 項における、「①相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項、あるいは②その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして、信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるもののいずれかに該当するもの」に該当するものと考えますが、御社見解をご回答願います。
このあたりで、民法の観点からどうなのかを聴くようにしました。
質問②に対する先方の回答はこちら。
回答②
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(1)免責該当事項は「⑤保証約款第7条に定める耐久性診断ならびに白蟻に関する必要な耐久工事を実施していただけなったことに起因するもの」です。
しかしながら、防水耐久工事(保証延長)について説明がなされておりません。説明義務違反に該当します。
説明義務違反について責を負いますが、防蟻工事保証免責は上記⑤に該当します。
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説明義務違反については認めましたが、それでも免責判断だそうです。
民法の解釈に対する回答もはぐらかされているように思えます。
次の質問はこちら。今度は消費契約法の観点からの質問です。
質問③
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・消費者契約法第4 条2 項には以下の記載があります。
第四条
2 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対してある重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限る。)
を故意又は重大な過失によって告げなかったことにより、当該事実が存在しないとの誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。ただし、当該事業者が当該消費者に対し当該事実を告げようとしたにもかかわらず、当該消費者がこれを拒んだときは、この限りでない。
→契約時説明不足が不利益となる事実の未告知に相当
同じく第8 条には以下の記載があります。
第八条 次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。
一 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項
二 事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除し、又は当該事業者にその責任の限度を決定する権限を付与する条項
三 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項
→契約時説明不足及び3.の点検不十分が本条文の債務不履行、不法行為に相当
また、同第10 条には以下の記載があります。
第十条 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項(信義則)に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
→同じく上記2.の契約時説明不足が信義則に反していると考えます。
・今回の状況は上記2.記載の通り契約に関する十分な説明がなかったこと及び、上記3にて十分な点検が実施されていないにも関わらず防水シートが健全であると誤解を与える状況であったことから、後付けで免責事項を並べられたとしても、消費者契約法4条、8 条、10 条に定める、一方的な責任免除規定の無効に該当するものと考えます。御社としてこれに該当しない理由があればご回答願います。
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要は、説明不足で契約した状況で、一方的な免責事項を規定することが消費契約法上どうなのかという観点の質問です。
これに対する先方の回答はこちら。
回答③
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説明義務違反につき責を負います。
防水シートについて20年点検時には問題がないと判断しております
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これだけ?と思いたくなるというか、質問に対して全然答えてくれてないような…。
とはいえ、何度か質問のラリーを続けるうちに「説明義務違反につき責を負う」ことについては言質が取れました。
とはいえ、最初に質問を投げかけてからこの時点で二か月経過。
なかなかの長期戦が予想される状況で、質問に対する明確な回答ははぐらかされ、すでに私自身だいぶ参っている状況でした。
上記はハウスメーカーの支店担当者とのやりとりですが、このまま続けても状況は変わらないだろうと思い、次のステップに進むことにしました。
ハウスメーカー本社への内容証明郵便による質問状と損害賠償請求です。
これはまた別の記事にて。
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