ありたらむ

映画館スタッフ。映画について思ったことを書きつらねる『しじまのシネマ』更新中です。

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最近の記事

『ゴジラ-1.0』山崎貴によるハリウッドへの憧れと挑戦について。

TVバラエティの番組で映画監督・山崎貴が語った言葉だ。放送された2023年2月はスティーブン・スピルバーグ監督作『フェイブルマンズ』の日本公開を控えたタイミングであり、スピルバーグを敬愛する映画監督たちが彼の偉大さを語るという番組の流れのなかで放たれた一言だったが、当時のショックを滲ませるような山崎の物言いには、ただ天才作家を讃えるための小粋なジョークとは思えない重みがあった。  映画史において、スピルバーグはいわゆる「ハリウッド映画」の代名詞の一つだ。特に娯楽エンターテイ

    • 『君は放課後インソムニア』森七菜が曲伊咲を演じる必然と、彼女たちに託された「長い夜」への希望とは。

       近ごろ、シネマコンプレックスで働いている身として思うのは「いま上映している映画は、本当に必要な人のもとへ届いているのか」ということだ。商業映画には顧客の属性などで想定されるターゲット層が存在し、配給会社や興業主はそこに向けて宣伝を打つことになるが、いざ実際に公開されると作品の内容が最も響くはずの層が観にきていないという事態が往々にしてある。  とくに近年は、「実写の青春映画」が若者への訴求力を失っていると感じる。一例として、水墨画の世界を題材にした2022年の青春映画『線は

      • これは政治的ディストピアSFなのか?-『17歳の帝国』第1話を観た。

        NHK総合で5/7(土)より放送されたドラマ『17歳の帝国』第1話を観た。 202X年という舞台設定と美術の表現が秀逸だと思った。この手の近未来SFでは作品の世界観を表現するプロダクトデザインが優れていることが重要だが、日本だと予算の少なさゆえなのか設定から浮いた映像がお出しされることが多い。しかし本作は2022年現在より8年以内に訪れるごく近い未来を描いているので、デザインに大きな先進性がなくとも機能性に少しの進歩があるだけで世界観を表現することを可能としている。また実験

        • 『潜水艦クルスクの生存者たち』から読みとく、悲劇を忘れないということ。

          こんにちは。映画館でスタッフをしています、ありたらむといいます。 このnoteでは私が触れた映画・ドラマなどなどをピックアップして、なにが面白いのか/面白くないのか、そこにどんな背景があるのか、考えたことを文章にまとめたいと思います。どうぞ、お付き合いくださいませ。 今回は4/8(金)から全国公開されている映画『潜水艦クルスクの生存者たち』について紹介します。 「記憶が一番大切。乗組員が忘れられないように奔走しているの」。 2000年に発生したロシアの原子力潜水艦・クル

        • 『ゴジラ-1.0』山崎貴によるハリウッドへの憧れと挑戦について。

        • 『君は放課後インソムニア』森七菜が曲伊咲を演じる必然と、彼女たちに託された「長い夜」への希望とは。

        • これは政治的ディストピアSFなのか?-『17歳の帝国』第1話を観た。

        • 『潜水艦クルスクの生存者たち』から読みとく、悲劇を忘れないということ。

          庵野秀明の努力と没頭~『庵野秀明展』の雑感と、『シン・ウルトラマン』への期待について

          はじめまして 映画館でスタッフをしています、ありたらむといいます。 このnoteでは私が触れた映画・ドラマなどなどをピックアップして、なにが面白いのか/面白くないのか、そこにどんな背景があるのか、考えたことを文章にまとめたいと思います。どうぞ、お付き合いくださいませ。 今回は、『庵野秀明展』の雑感を書きます。 『庵野秀明展』とは 『庵野秀明展』は、『新世紀エヴァンゲリオン』などで知られる映像作家・庵野秀明の出生から学生時代、アマチュア時代、プロ作家になってから現在に

          庵野秀明の努力と没頭~『庵野秀明展』の雑感と、『シン・ウルトラマン』への期待について