ラーゲリから生還した大叔父
国民的作家、山崎豊子さんの『不毛地帯(新潮文庫)』(新潮社)をまた最近読み直しているわけですが、読みながらふと思い出したことがありました。
それはもう鬼籍に入ってしまっているのですが、僕には母方の大叔父がおりまして、当時、5~6歳だった僕に親戚一同が一堂に会することがあると、決まって僕を自分のところに呼び寄せては直立不動で最敬礼をさせるナイスな方でありましたが、大叔父は戦後、シベリアに抑留されたことがあるのだと、母から後に聞いたことがあったのでした。
その時に僕は
「ええぇ!?」
と素っ頓狂な声を上げることしかできな買ったこと昨日のように覚えております。まさか自分の身内にそんなことを体験した人間がいたとは!
『不毛地帯』の最初のほうで主人公の壹岐正がシベリアに11年間の過酷な抑留生活の描写があるわけですが、大叔父は壹岐正ほどの高官ではないにせよ、筆舌に尽くしがたいほどの経験をしたのだと、改めて壹岐正のことを思わずにはいられなかったのでした。
不遜を承知で書くわけですが、そのときのことを少しでも無理を言って話してもらえばよかったと、返す返すも残念でならないのです。
少し日がたつのですが、書きそびれてしまいました。一言で言うと、少し駆け足でしたね。そして、尺の都合で致し方ないのですが、原作で重要なシーンがいくつかカットされていました。
しかし、最後に壹岐正が旧ソ連の囚人ラーゲリの抑留者が眠っている粗末な墓地で滂沱とあふれる涙を拭おうともせず猛烈な吹雪の中でたちつくしているラストでは思わず僕も涙があふれてきました。
実は、僕は壹岐正が囚人ラーゲリで抑留されていたところはドラマは見ていないので、DVD化されたときに見てみたいと思っています。