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外と内もしくはチョコレートとおにぎり(阿部)

大さん 松本先生

 ずいぶんと久しぶりのお便りになりました。
 大さんからのお返事を拝読してから、季節は一つ過ぎ、空は高く、吹く風にふっと涼しさが混じり、暑くても秋の気配です。
 夏休みの宿題を駆け込みでやる子どものように、でも、心と身体はわくわくと、このお便りを書いています。

 もともと手紙を書くことが好きなアナログ人間の私。
 大さんのお便りを読んで、そこに個人的なつながりや安心感と同時に、普遍的な知恵もまた、含まれるように感じています。
 それが、このやりとりを始めた理由でもあり、私をわくわくさせることでもあります。
 個人的なやりとりとつながり、そして、そこにある普遍性を、世界とシェアすること。

 さて、大さんが書いてくださった『精神的健康』『心と身体を大切にする』、ということ。ほんと、子ども達も、そして我々大人も、どこで学んでいるのでしょうね。

 「誰かに頼っていく力」も、自分の『心と身体を大切にする』ところも、大さんの表現を借りるならば『内につながる』ところ、言い換えるなら『身体と心のつながりを持つ』から、スタートするのかもしれません。自分の身体と心のつながり、基盤があってこそ、人とつながったり、信頼したり、チャレンジしたり、頑張ったりできますものね。

 でもでもでも。
 私の住む首都圏は、一晩中煌々と輝く灯に満員電車での通勤通学が当たり前、仕事に家事に勉強に部活に習い事、スマホ片手にSNSやら動画やら音楽やら、盛りだくさんのスピード社会。大人も子どもも忙しく、身体と心、他者や世界とのつながりを感じていては、日常が回らない場面の連続なのです。
 外傷的トラウマって、too much  too soon  too fastっていいますよね。許容量より多すぎる、発達段階よりも早すぎる、速すぎることが、私たちの身体と心に負荷をかける。そう考えると、資本主義社会、現代社会って、トラウマ社会って呼べるのかもしれません。(そう考えると、AIの発達って、私たちの神経系や倫理の発達よりも、はるかに早いかも!?)

 私の身体のケアをして頂いている先生がおっしゃるのです。
 みんな、身体をマヒさせて生きているって。
 頭痛、腰痛、腹痛に生理痛、肩こりに起立性調節障害や過敏性腸症候群など、症状を感じながら、スルーしながら生きている人のなんと多いことか。私自身も、身体の先生のケアを受けて、より深く身体につながると、より精妙に身体の緊張や筋骨格のこわばりを感じ、自分が日々どれどけマヒさせて暮らしているかがわかります。(だめじゃん、私)

 だからこそ、ちょっと立ち止まって、自分の身体と心の状態をチェックする、そして「セルフケア」することが重要……なはずなのですが、私自身自戒も込めて『外につながる』ことで、ごまかしごまかし、しのいでいると言わざるを得ません。自分へのご褒美、お買い物や心浮き立つイベントや、更には、エナジードリンクに、アルコールに、ゲームに、鎮痛剤などなど、外には一時的で即効性があるように感じるツールがいっぱい!!

 もちろん、それ自体は悪いことではないし必要でもあるけれど、『外につながる』ツールって、おやつに食べるチョコレートみたいなものじゃないかな。甘くて、美味しくて、一時的に元気が出て、繰り返し食べたくなるもの。多すぎ、早(速)すぎ社会で、忙しくやるべき日常を優先して暮らしているだけでも、身体に負荷をかけているのに、『外とつながる』チョコレートばかり食べてしのいでたら、そりゃ、セルフネグレクトと言わざるを得ません。

 一方「セルフケア」、「内につながる」ことは、おにぎりみたい。チョコレートのように、口に入れたとたん美味しく感じる即効性はないけれど、滋養があって、じっくり時間をかけて、身体の芯を作ってくれるような感じ。
私たち『大人でも苦手』なのは、多いこと、早(速)いことが評価されてきた資本主義社会で、きっと教えてもらってなかったから。

 でも、今からでも、遅くない。
 私たち大人は、自分で選択して学ぶ自由があります。そして、いつまでも変化できる可能性、「神経の可塑性」があります。

 航空機の安全ビデオでは、非常時に必要な酸素マスクは、まず大人が先につけて、それから子供につける映像が流れますよね。
 それって、全てにおいていえることなんじゃないかな。
 子どもや児童生徒のサポートを後回しにするってことじゃなくて、まずは、大人が自分の心と身体が安心安全を感じているのかを感じること、そして確保すること。つまりは、『内とつながること』。

『本当の自分の内なる声に耳を傾ける。そうしてみて、初めて『セルフケア』は始まる。』

 大さんの一文が、心にしみる夏の終わりです。
 
 お二人は、夏休み、少しゆっくり休めましたか?『内なる声に耳を傾ける』お時間、持てましたか?
 私は、懐かしの信州で、大自然に抱擁されながら、温泉につかり、ぐうぐう眠り、美味しいものを食べ(食いしん坊としては、ここ重要!!)、身体と心のこわばりが緩み、エネルギーが戻ってきました。
 お二人のおいしいおにぎり、「セルフケア」聞いてみたいなあ。なにせ、食欲の秋ですからね。
 
 いつも、美味しいつながりに感謝しつつ。

阿部利恵 拝
 

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