《読んだ本》P・F・ドラッカー『イノベーションと企業家精神』(ダイヤモンド社)
P・F・ドラッカーが75歳で発表した『イノベーションと企業家精神』(ダイヤモンド社)は、3部構成で書かれた実践的な本です。
■概要
第1部は、「イノベーションの方法」
有名な「イノベーションのための7つの機会」について説かれています。
1.予期せぬ成功と失敗を利用する
2.ギャップを探す
3.ニーズを見つける
4.産業構造の変化を知る
5.人口構造の変化に着目する
6.認識の変化をとらえる
7.新しい知識を活用する
(8.アイディアによるイノベーション)
7つといいながら8つ書いておられますが、この「いわゆるイノベーション」は、
成功率が低すぎて機会と呼べるほどのものではないとしてカウントされていません。
第2部は、「企業家精神」
原語であるアントレプレナーシップ(Entrepreneurship)は、本来、「企業家のつとめ」とでも訳すべき用語です。
本書でも、既存企業・公的機関・ベンチャー企業のそれぞれにおける企業家のつとめ について場合分けして説かれています。
第3部は、「企業家戦略」
総力戦、ゲリラ戦、ニッチ、顧客創造に分けて、企業家のとるべき戦略を検討・検証しています。
いづれにしても、「自己の事業・技術・市場を どう定義するか」という企業運営方針が実は一番の課題・問題であり、それが出来たことを前提として、実務をどう回すかを説いた本ですので、発想法マニュアルと思って時々参照するには、いい本です。
■所感
ドラッカーの父親は、“イノベーションの父” シュンペーターの恩師であり、家族ぐるみの付き合いをしていたわけですが、その人物(ある意味シュンペーターの後継者)が、「アイデアによるイノベーションは、勝率が低すぎて機会ですらない」と喝破していることには驚きました。
おそらく、間接金融が発達していた旧大陸と、直接金融の比重の高いアメリカでは、経営者に求めらる役割が異なったためだろうと思います。
日本では、既に、間接金融から直接記入に比重が移ってきていますので、今後ますますドラッカーの指摘が経営者にとって(または経営支援ファンドにとって)大切になっていくことと思います。
■出版社HPより
http://www.diamond.co.jp/book/9784478000649.html