可愛いチークしてバチギレ

プロのヘアメイクアーティストさんの動画で、可愛いチークの入れ方を学んだ。

黒目の真ん中から下方向に垂直に頬を辿っていきます。小鼻から横方向に水平に頬を辿っていきます。その縦線と横線が交わる点にチークを置き、そこから頬の外側に真っ直ぐに伸ばします。次に、そこから下に向かって塗り広げます。ほうれい線の内側にチークが入らないように気をつけます。一般的にイメージされるチークの位置に比べて、だいぶお顔の下の方になるけど、この位置は赤ちゃんの頬の赤みがある場所と同じなので、ここに色があるとあどけない印象になります。

...ということだったのだけど、動画で学んだことを文字だけで表現するの難しい〜とか何とか、家族に向かって逐一説明しながら、このやり方でチークメイクを実践していた。

そしてできあがった顔を家族に見せると、大層褒められた。上機嫌で始まった1日。

その数時間後、家族にバチギレしていた。

理由は家族が掃除をしないからだ。

まず、家族は、私が言わなきゃ掃除をしない。
あるいは私がやり始めなきゃ自分からはしない。

私はひとりでもやる。

次に、家族は、私が言っても掃除を部分的にしかしない。家というのは様々な空間が組み合わさっている場所である。なのに家族は複合的空間である家の中の、とある空間のとある部分だけを掃除して、掃除作業を終えてしまう。

私は家全体を掃除する。

それで、家族に、ひとりで家全体を掃除してばかりいるのって、時には疲れを感じてしまうっていうか、今もうすっかりやる気をなくしてるので、今日でも明日でも、ご自身の都合のいい時でいいので、とにかく一度、家全体の掃除を請け負ってたもれ。と頼んだ。

家族は了承したので、私は安心して、ごっさ汚い家を放置してくつろいでいた。

家族は私と一緒にくつろぎ続け、待てど暮らせど掃除は始まらなかった。

ごっさ汚い家が放置されて3日ほど経った。

実は私はごっさ汚い家で可愛いチークの入れ方を学んで、実践していたのだ。

ごっさ汚い家に猫が三箇所吐いていて、そのうち一箇所は猫のお気に入りのベッドだったので、結構至急洗濯が必要だった。でも私は、チークを入れる元気はあるけど、猫が吐いたベッドを洗濯する元気をなくしていた。よくないことだけど、そういう時がある。猫が吐いたベッドは、掃除を一任した家族にぜひ洗ってもらいたかった。二人の家だし、二人が育てている猫なのだし、叶わねぇのかこの願い?

可愛いチークを入れてコーヒーを飲んでる私の向かいで、掃除依頼を承諾済みであるはずの家族はスマホを眺めていた。新しいコーヒーサーバーが欲しい欲しいと言い、ネットをブラウジングし続けていた。依頼して3日間ずっと、時間ありそうな時はこんな様子だった。

私はバチーーーンとキレた。

数日前から家の掃除をあなたに頼んでたけど一才やる気配がないようですのでもう私が掃除するわいと宣言し、私は、掃除をし始めた。家族は慌てて平謝りしながら掃除を始めた。でも全然私の気は済まなかった。

私の中で、掃除さえしてもらえば解決という問題ではなくなっていた。

自分の家の掃除なのに無頓着なこと、無頓着だから気がついてねーと言っても口では承諾するのに変わらないこと、掃除してねーと言っても口では承諾するのに掃除しないこと、結果この家の掃除を常に私がひとりで負担せねばならないこと。

全てが不快だった。

ギャオギャオ怒りながら、今すぐすっぴんになりたいと思っていた。

可愛いチークを入れて可愛くできたとはしゃいでいた自分が可哀想だった。可愛いままでい続けられなくて。赤ちゃんと同じ位置に入れてあるチークとか、取りたかった。

夏の昼下がりにバチギレしながら、不似合いな可愛いチークをした自分だった。

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