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【展覧会レポート】DESIGNART TOKYO 2024
DESIGNART TOKYOについて
東京各地で同時開催されるデザインアートのイベント・祭典である。
表参道、渋谷、外苑前、六本木、代官山などのエリアを中心としたデザインとアートを横断するフェスティバルで、『“東京の街全体がミュージアムに”』をモットーに2017年より毎年開催されている。
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Aspect | Panasonic Design
期間:2024年10月22日(火)~10月27日(日)11:00~19:00
会場:Panasonic Beauty OMOTESANDO 東京都渋谷区神宮前4-3-3 B1F
https://panasonic.jp/beauty/omotesando.html
入場料:無料
イベントサイト:https://panasonic.co.jp/design/events/2024/aspect/
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会場は表参道駅から歩いて5分ほどにある「パナソニックビューティ」の地下1階。
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DESIGNARTの立て看板を発見。
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10月下旬のためハロウィン真っただ中。
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地下1階まで降りると、展示会場入り口を発見。地下1階だが、途中に踊り場もあったため、感覚的には地下2階。
展示会場入り口付近に人がいないため、展示のことを知らないとここが展示会場かどうかわからなかった。
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様々な角度から未来を捉えているということからテーマを"Aspect"にしている。それだけでなく、様々な視点からユーザーのこと、技術のことがどう変わっていくか、可視化している。今回はそのような多くの未来構想から2つピックアップして、展示している。
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VisionUX
10年後の未来がどのような暮らしになっているか考えていくとき、パナソニックの事業の延長線上では描けなくなっている。そのため、デザインリサーチや専門家へのインタビューから見えた私たちの理想の暮らしを具現化、それを映像作品にしている。
具体的なビジュアルで見せることで来場者に未来を考えるきっかけを与えることを目的としている。
全体の視野を描いたシーン1つと細分化されたシーン11つある。
死後のデータの取り扱いなどキラキラしたシーンではなく社会問題まで汲んで描いている。
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MUGE
3つ作品を展示している。
露(RO)というリサイクル工場で廃棄されている冷媒配管と植物を組み合わせた作品を一番最初に持ってきている。
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カルダーの動く彫刻のように変化していく自然というテーマが伝わる。
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響(KYO)は、椅子があることで座って聞くことがより明確になった。
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FLF EXHIBITION #00 ARCHIVE - 2024 FUTURE LIFE FACTORY
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ギャラリーとしての機能も有する「FUTURE LIFE FACTORY」に、これまで取り組んできた成果物を一挙に集め、足跡を展示するとともに、“現在地”を体感できる。
1階はパンとエスプレッソ、その地下1階にFLFの展示会場がある。表参道から外苑前に向かって10分ほど歩くと、到着。
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会場設計: HYBE Design Team
HYBE Design Team代表の武田氏が会場設計を担当し、作品がグラデーションのように連続して見える構成を目指した。
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彫刻的な什器
会場の中心には、廃棄された衣料品を植物の培地に変えた「TUTTI(トゥッティ)」というサステナブルな素材を使用。この素材は産業廃棄物となるファブリックを粉砕して再利用している。什器は、展示物の背景としても機能する彫刻的なデザインで、什器っぽさを抑えつつ空間を演出している。複数のプロが集まり、短期間で知恵を絞って立体的な空間を実現した。
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KENJI HIRASAWA | Edge #21
写真家・平沢健司は、身近な方を亡くなられた経験から、「体温の可視化」をテーマに、亡くなった身近な人を想起するような、体温以外の「その人がいた痕跡」を残す作品作りを行っている。サーモグラフィーで体温を表す方法や人物像は小さな数字で描かれ、サーモグラフィのオレンジや黄色の代わりに「数字」で体温を表現。さらに、フランス語で体温を読み上げるサウンドが加えられ、視覚と聴覚でその存在の痕跡を感じさせる工夫がなされている。
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がん細胞を題材とした作品では、再生医療の対象として捉え直し、不良息子としてのがん細胞のイメージを超えた視点を提示する。この作品は和紙に描かれ、柔らかさと強さを併せ持っている。
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フェミニズムと日常の再解釈
みょうじなまえ氏はフェミニズムの視点から、ミュージアムショップのような商品化をテーマにした作品を展開。例えば、MOMAなどの美術館にあるような有名な作品に衣服を加え、日常生活の中で使用できるアイテムとして再構築している。マティスの『ダンス』のような女性ヌードに衣服を描き込み、「見られるための女性の身体」に対する問いを投げかけている。
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LIXIL: 浴室空間「bathtope」
ジャンル:アート、インテリア、プロダクト
展示期間:2024/10/18-10/27
会場:ワールド北青山ビル
「浴槽を布にしてみたらどうなるのか」
ワールド北青山ビルの裏庭に展示された、リフレーミングの観点から考えられた斬新な試みが印象的である。この展示が生まれた背景には「浴室の使い方を改めて考えたい」という意図がある。従来の固定された浴槽では、無駄な時間が多く、24時間ある住空間の中で実際に浴室が使われるのは約1時間程度という現状がある。また、シャワーだけで済ませる人も増えている。そんな中、「浴槽を布にしてみたらどうなるのか」という発想の転換が新たなデザインを生んだ。
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この布製浴槽は筑波の工場で製造され、包み込まれるような心地よさと、脚を伸ばしてリラックスできる感覚が特徴である。通常の浴槽では体育座りが必要だったが、この布浴槽は足を延ばすことができる。長手に取り付けが可能で、日本の着物を思わせる柔らかさと自由さがある。
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5色のアースカラー、選ぶ楽しさ
布浴槽の折りたたみ方については、デザイナーと協力して最適なパターンが設計されている。カラー展開もアースカラーを中心に5色を用意。従来の浴槽とは異なる新しい選択肢として楽しめるデザインである。
収納にも配慮され、専用の筒に収めることができる点も特徴的だ。
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空間デザインは松原氏が手がけ、布の軽やかさを表現するインスタレーションが設置されている。風が当たるとわずかに揺れる布の様子が美しい。
展示の奥には浴槽を浴室に組み込んだ状態も体験できる。
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水を張った状態での入浴感は、布の柔らかさとクッション性のある快適さが印象的。頭部も安定し、どんな体格の人でも包み込まれるようなフィット感がある。サイズに関係なく快適に利用できる点が特徴であり、四隅にはフックがついているため、フレキシブルな取り付けが可能。これまでの浴槽とは異なる入り方が提案されている。
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価格は75万円から200万円までと幅広く、メンテナンスも中性洗剤で簡単に洗える。マンションオーナーや単身者、リノベーションを考えている人におすすめの商品である。
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グラフィックで伝わる、テキストで伝える
遠くから見たら何か書いてあるかわかる。日本語、英語表記で書かれている。折り方をイラストでわかりやすく伝えているため、直感的でとても分かりやすい。
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からくりの森
ジャンル:アート
展示期間:2024/10/11-12/8
エリア:原宿
会場:Seiko Seed
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腕時計の動力と対峙
外部クリエイター:小松宏誠、SPLINE DESIGN HUB + siro
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自然物特有のリズムを体感
アーティストの小松氏による「森のリズム」は、自然と時間のリズムをテーマにした作品である。作品の内部には時計の部品が様々なリズムで動き、それぞれが異なる速度で時を刻んでいる。また、天井から吊るされた自然物がゴムひもで巻き上げられ、1分間に一度絡まり、独自のペースで解けていく。この解けるリズムにより、自然物の重さや大きさが生む特有のリズムが表現される。自然物は、グランドセイコーの製造地である雫石から収集され、時折発する音が静かな空間に響き、作品に一層の生命感を与えている。時計の正確なリズムと自然物が織り成す不規則な動きが融合し、観る者に時間と自然の調和を感じさせる作品である。
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廻る、観る足音
SPLINE DESIGN HUBとsiroのコラボ作品「時の足音」は、人間が「時間」をどのように感じるかに着目している。サッカー観戦を例に、勝っている時には時間が早く過ぎるように感じ、逆に負けている時には遅く感じるという、状況によって変わる人間の時間感覚を視覚的に表現。観る側の心理や感情が時間の流れの感覚に影響を与えることを示し、観戦体験に潜む心理的要素を捉えた作品となっている。
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変換しない投影
アーティストSiroによる「時の囁き」は、時計のムーブメントからインスピレーションを得た詩的な作品である。精密なムーブメントの動きがもつ正確性に触発され、そこから生まれた詩を、LEDライトとレンズを通じて空間に投影している。この映像にはドットの概念がなく、極めて繊細で滑らかな表現がなされ、視覚的にも「囁き」のように柔らかく伝わる。時計の機械的な美しさと詩的な世界観が融合し、静かに時の流れを感じさせる作品である。
キャプションは2枚
作品をまとめて紹介している。作品の全体像が見えるため、わかりやすい。展示会場全体が一望できる小さい展示会場だからこそのキャプション形式だと思う。
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Instagram活用
Instagramを用いて、各展示会場の展示テーマと展示物について発信している。
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実際にインタビュアーが各展示会場に赴き、その趣旨を取材している。
今回、展示会場が点在、かつテーマが地図を見て、パッと見てわからないため、このように伝える方法は必見だ。
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終わりに
以上が、パナソニック、リクシル、その他の展示や他社の作品を含めたレポートのまとめです。各作品に共通するテーマや表現の違いが浮き彫りになり、最新のデザインや技術の方向性について深い洞察が得られたかと思います。それぞれの作品が持つ背景や狙いも含めて、今後のアイデアのヒントとしてご活用いただければ幸いです。