
「唐様で書く3代目」1945サイクル最終年を迎えて ー1ー 予想と実際
「日本社会は80年ごとに循環している」という見方で社会を見ていきます。今年は80年サイクルの最終年です。読んでくださっている方々も、社会崩壊の空気を体感されているのではないでしょうか。今回は、2022年4月19日記事中のトピック「この先の流れの予想」と、実際に起こったこととの比較分析です。
参院選と改憲
予想:2022年参院選で野党は票を獲得できず、2021年の衆院選と合わせることで、前サイクルの翼賛選挙に相当するものとなる
2022年参院選は投票率が52%だったので、自民党と公明党の棄権した者も含めた全有権者に占める得票率は次のようになります。
自民 20.1%(17.9%)
公明 3.5%(6.1%)
合計 23.5%(24.0%)
*選挙区(比例区)
この数値に、消極的与党支持である棄権の48%を足すと、選挙区で71.5%、比例区で72.0%の支持となり、改選125議席中76議席(61%)を獲得しました。
2021年衆院選での「与党+棄権」の有権者に占める率が選挙区71.8%、比例区で71.3%でしたので、両方の選挙で翼賛選挙の71%と同程度となり、予想通りの結果となりました。

予想:参院選後の3年間に憲法改正の国民投票がある
首相が衆議院を解散しない限り、次の国政選挙は2025年でした。それまでの間に維新の会や国民民主党の改憲賛成派議員を取り込むことで、改憲に必要な議席数を確保することが十分可能だと判断したためです。
2025年2月現在、改憲投票の予想が当たる可能性は低いです。前提の「2025年までに衆院選が実施されない」が変わったことが理由のひとつですが、最大の理由は改憲を強力に推進していた権力者がいなくなったことです。
権力者の非業の最期
2022年5月7日記事で、サイクルテーマの実現を不可能にした3人について記述した箇所があります。
1860年、桜田門外の変が起こります。サイクルテーマの実現を不可能にした「安政五カ国条約」の締結を主導した4代目の井伊直弼は、水戸藩と薩摩藩の脱藩者により暗殺されました。
1865サイクルでは4代目の近衛文麿が総理大臣のときに、サイクルテーマ実現を不可能にする「日独伊防共協定」が締結されています。近衛は社会崩壊後に自死しました。
1945サイクルでサイクルテーマ実現を不可能にする「こども食堂への首相声明」を出したのは、3代目の安倍晋三でした。
この記事の2ヶ月後、安倍晋三は暗殺されました。サイクル年では井伊が75年、近衛が80年、安倍が77年、各サイクルの新たな共通点「権力者の非業の最期」となります。
現サイクルでサイクルテーマ実現を不可能にした権力者である安倍晋三もまた、前2サイクルと同様に非業の最期となりました。その結果として、自民党と統一教会との関係が表面化し、政府支持率が急落しました。
岸田首相は、首相秘書官に任命した自身の子息の問題などもあって支持率を上げられない中、裏金問題が重なってきます。裏金問題の中心は安倍派でした。安倍晋三が健在なら、報道機関に圧力をかけて裏金問題を抑え込んだでしょう。
その後、石破首相の下で2024年に衆院選が実施されたことで、予想の前提が崩れました。安倍晋三が生きていれば、統一教会問題と裏金問題は表面化せず、さらに安倍本人が改憲を強力に推し進めたはずです。
改憲に賛成しないと思われる立憲民主党、共産党、れいわ新選組、社会民主党が合計で3分の1以上の議席を衆議院で確保したことから、改憲発議はされないでしょう。安倍晋三が他界したことで、改憲投票の可能性は「ほぼない」と言えます。しかし、立憲民主党の党首は安倍晋三と取引して下野した実績のある野田佳彦です。「ない」と断言はできません。
食料品の高騰と不明瞭な社会崩壊完了
2022年4月19日記事では他に、過去のサイクルとの比較から2つの可能性を記しています。
予想:食べ物の確保に日々走り回らなければいけなくなるかもしれない
コロナ禍だけでなく、ロシアとウクライナの戦争による物価上昇、円安傾向から、食料品が高騰して、最悪の場合は思い出の品を売らなければいけなくなるかもしれないと予想しました。
2024年後半から、キャベツやコメの価格が急上昇したことがニュースとなっています。エンゲル係数は1981年水準まで上昇したとのことです。1981年はサイクル年では36年、「発展期」の終盤です。
エンゲル係数の統計が遡れる1963年は18サイクル年、「立て直し期」の終盤です。以降低下を続けてきたエンゲル係数は、「黄金期」が終わり「社会崩壊期」が始まる2005年、60サイクル年に底を打ちました。「社会崩壊期」でエンゲル係数は上昇を続け、36サイクル年の水準にまで戻ったという流れです。
予想にある最悪の状況にはほど遠い現状です。また、現時点のコメの高騰については、生産面よりも流通面の不備が指摘されています。前サイクルでのヤミ米、3サイクル前の重商主義政策下での天明の大飢饉に比べれば、そこまでひどい状況にはならないでしょう。
予想:「社会崩壊完了」や「価値観の大転換の宣言」となるような出来事が見られないかもしれない
3サイクル前から見ますと「天明の大飢饉(天明の打ちこわし)」「大政奉還」「第二次世界大戦敗戦」がそれぞれのサイクルでの「社会崩壊完了」を示す出来事でした。また、「寛政の改革」「五箇条の御誓文」「人間宣言と日本国憲法」が「価値観の大転換の宣言」です。
一方で、1545年からはじまる「戦国時代から江戸時代初期まで」のサイクル開始時には、「社会崩壊完了」や「価値観の大転換の宣言」となるような、はっきりした出来事は見られませんでした。
現時点ではまだ、「社会崩壊完了」の象徴的な出来事は見えていません。2024年の衆院選では与党が大敗し、過半数を割りました。2025年の参院選で同様の結果となった場合、政局が大きく動く可能性があります。その結果、「社会崩壊完了」が見えるようになるかもしれません。
2023年には、人権上の問題からジャニーズ事務所が消滅しました。また、同様に人権上の問題で、2025年初頭にフジテレビが報道機関として存続の危機に直面しています。
ジャニーズ事務所はエンターテイメントの世界で大きな力を持っていましたが、私企業です。フジテレビも私企業ですが、放送免許を必要とする許認可事業なので、より権力に近い組織と言えます。マスコミは「第四の権力」とも呼ばれますので、権力そのものと見てもよいかもしれません。
社会崩壊は権力に近い方が大きな影響を受けます。この先、司法、立法、行政の三権もフジテレビと同じような状況におちいるのかもしれません。もしそうであれば、それは人権上の問題に起因するのではないでしょうか。
以上、食料品と社会崩壊の出来事の2点について、現時点で考察しました。この先の流れを予想するにあたって、最も大きなファクターがアメリカ合衆国です。2025年1月に大統領に就任したドナルド・トランプは、三権分立を蹂躙するような政策を次々に発令しています。アメリカ合衆国の大きな変化は、日本の社会崩壊に非常に大きな影響を与えると思われます。
今回は、2022年4月19日記事中の予想と、実際に起こったことの比較分析でした。次回は、日本の社会崩壊に大きな影響を与えるだろうアメリカ合衆国について分析します。
まとめ
・令和の翼賛選挙は実際に起こった
・権力者の非業の最期
・改憲は大きく遠のいた
・食料品についての最悪の事態は避けられそう
・「社会崩壊完了」の象徴的な出来事はまだ起こっていない
・最大のファクター:アメリカ合衆国
「期」「世代」「テーマ」など、80年サイクルの概観については、以前の記事をご参照ください。
以前の3サイクルに興味をもたれた方は、記事をまとめたマガジンをご覧ください。
1865サイクルと1945サイクル
1785サイクル