有明見聞録 ~陰~ 前編
古い本を開けば、まるで異国の物語を読んでるような世界が記されていた。
本当にここにはそんな海があったのかと疑いたくもなるけれど、標本は無言のまま事実を語りかけてくる。
かつて豊饒の海と呼ばれた有明海。
遠いだけなら辿り着ける。
けれど、目の前にあるはずなのに手が届かない。それでもその欠片を拾い集め、幻想の向こう側に消えた豊かさを探す記録。
もうひとつの有明見聞録。
目次
前編
1 生きた化石 オオシャミセンガイ
2 幻想の住人 ヒメモクズガニ
後編
3 豊葦原の語り部 ヤベガワモチ
4 儚い奇妙な隣人たち
5 終わりに
1 生きた化石 オオシャミセンガイ
初めてオオシャミセンガイの話を聞いたのは高校三年生の時。関わっていた有明海の保全活動で以前の調査の際に採れたが同行した漁師が食べてしまったという話だった。
なんて勿体ない話なのだろうか!今となっては本当にそう思う。とはいえ、当時の私はミドリシャミセンガイすらよく知らない人間だったので事の重大さが分かっていなかった。
そもそもシャミセンガイとは何なのか。
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