見出し画像

 悩み好転!『禅語の智慧』の物語 No.44

【金継ぎ編】

2024年3月23日(土)

悩み事:「金継ぎ」への挑戦とコミュニティーの構築

目次
1、あらすじ
2、禅語「無事是貴人」(ぶじこれきにん)の解説

物語のタイトル:「金継ぎもったいない」廃棄された美の再生

1、導入:浄(きよし)と「無事是貴人」
2、浄の日常と高級食器の発見
3、金継ぎとの出会い
4、コミュニティとの絆
5、新たな始まり
6、コミュニティの拡大と金継ぎネットワークの構築
7、無事是貴人の教えと人生の軌跡
8、結論
9、まとめ
10、ごあいさつ
11、柔海 剛山(じゅうかいごうざん)の『禅語の俳句』

1、あらすじ
退職後、清掃業務のパートとして働く浄は、廃棄された高級食器に心を痛めます。彼は「金継ぎ」技術に出会い、割れた陶磁器に新たな生命を吹き込むことに情熱を注ぎます。この活動はやがてパート仲間たちとの絆を深め、金継ぎネットワークの立ち上げへと発展します。禅の教え「無事是貴人」を胸に、浄は日常に価値を見出し、共有する喜びを知るのでした。

2、禅語「無事是貴人」(ぶじこれきにん)の解説
「無事是貴人」は、「平穏無事こそが最も尊い状態である」という意味を持ちます。この言葉は、外界の騒ぎや物質的な豊かさを追求することではなく、心の内面を穏やかに保ち、日々の生活を静かに営むことの大切さを教えています。真の豊かさは、外部の状況に左右されず、自らの心が平和であることにあるという禅の思想を表しています。

物語のタイトル:「金継ぎもったいない」廃棄された美の再生

1、導入:浄と「無事是貴人」
浄(きよし)は大型特殊機械の営業職を経て定年退職し、新たな生活の一環としてビル管理会社で清掃業務のパートを始めました。退職後の生活は多くの人にとって大きな転機となりますが、浄にとっては穏やかな日々の積み重ねであり、特別な出来事は少ないように見えました。しかし、彼の内面では、古来から伝わる禅の教え「無事是貴人」が深い響きを持っていました。この禅語は、「平穏無事こそが最も価値のある状態である」との教えを含んでいます。毎日の単調な作業の中でさえ、浄はこの教えを胸に、日々の小さな幸せや、周囲の人々との和やかな関わりを大切にしていました。この哲学は、彼の人生の指針となり、現状に満足し、自らの心を豊かに保つ源泉でした。浄は、この禅語の精神を実生活に落とし込むことで、平凡ながらも充実した毎日を送っていました。人生の喜びを小さなことから見出し、心穏やかに日々を過ごすことの大切さを、禅の智慧を通じて再確認をしています。

2、浄の日常と高級食器の発見
ある日のこと、浄は例のごとくビル内の清掃作業をしていました。彼の仕事は、日々のルーチンの中に小さな変化を見つけることにもありました。そんなある時、彼はビルの一角で廃棄された陶器類の山を見つけました。中をよく見てみると、そこにはただの廃棄物として扱われているにはあまりにも惜しい、高級食器が割れたり欠けたりしているものが含まれていました。彼はこれらの食器を目にするたびに、「もったいない」という感覚を強く感じていました。一方で、ただ捨てられていくこれらの品々に対し、何かできないかという思いも強かったのですが、具体的な解決策には至らず、心の中で葛藤していました。この「もったいない」という感情は、浄にとって、単なる物の価値を惜しむこと以上の意味を持っていました。それは、物に対する敬意や、使い捨てられる現代社会において忘れがちな、物事の本質的価値を再認識する機会となりました。浄は、この高級食器が廃棄される現状をただ嘆くのではなく、何か積極的なアクションを起こすことで、自らの内面と向き合い、また新たな価値を生み出すことを模索し始めました。この時点ではまだ、彼がどのような行動を起こすかは未知数でしたが、禅の教えに基づく彼の深い内省と、周囲の環境への敏感な気づきが、まもなく新たな展開へとつながることになっていきます。

3、金継ぎとの出会い
浄の日常はある日、大きく変化しました。それは、『金継ぎ』という日本古来の修復技術についての動画を偶然YouTubeで観たことから始まります。
金継ぎは、割れたり欠けたりした陶磁器を、金や銀などと漆を組み合わせて修復し、元の形よりもさらに美しい芸術品へと蘇らせる技法です。この技術に魅了された浄は、捨てられてしまう食器に新たな命を吹き込むことができるかもしれないと考え、金継ぎを学び始めました。

この新たな情熱は、ただ自分だけで学ぶにとどまらず、より大きな動きへと発展していきます。
浄の上司である営業担当者が、浄が提唱する『金継ぎもったいない』というスローガンを掲げ、マンション管理組合にプロジェクトを提案しました。この提案は成功し、【欠けや割れた陶器の持ち出し➡︎無料での金継ぎ➡︎館内展示➡︎居住者による引取り】までの工程が了承されました。
このプロジェクトは、物を大切にする心と新たな価値を見出すことの理解を広める素晴らしい機会となりました。

浄は、自ら金継ぎの技術を身につけることに情熱を注ぎました。彼にとって金継ぎは、ただの物の修復を超えた意味を持っていました。それは、捨てられた物に再び価値を見出し、新たな命を与えることで、物事の本質や美しさを再発見することでした。また、この過程は彼にとって、人生において「無事是貴人」の精神を実践する具体的な方法となり、平凡な日々に新たな光をもたらしました。

4、コミュニティとの絆
金継ぎへの情熱は、やがて浄の周囲にも影響を及ぼし始めます。彼はこの新たな発見を清掃業務でのパート仲間たちと共有しました。初めは単なる興味の対象であった金継ぎは、やがて彼らにとっても新たな挑戦となり、共同で学び、技術を習得していく過程で、仲間たちとの絆が深まっていきます。彼らはお互いに助け合い、知識や技術を共有し、時には失敗を笑い飛ばしながらも、一緒に成長していきました。

この共同作業は、彼らの間に新たなコミュニティを生み出しました。金継ぎを通じて、彼らは単に物を修復すること以上の価値を共有するようになり、それは彼らの日常生活にもポジティブな影響を与えました。この活動を通じて、彼らは自分たちの仕事に新たな誇りを持ち、また、社会に対しても積極的に貢献する姿勢を育てていきました。

5、新たな始まり
浄と彼の仲間たちの努力は、やがて具体的な成果を生み出しました。金継ぎで修復された食器は、管理室のカウンターに展示され、ビル内の人々に無料で持ち主に提供されるようになりました。この取り組みは、ビルの居住者や訪問者から大きな注目を集め、金継ぎの美しさと、物事を大切にする文化を広めるきっかけとなりました。
さらに、彼らはこの活動を通じて得た知識と技術を、将来的に副収入を得る手段としても活用する計画を立てました。この計画は、清掃業務のパート契約者にとって、雇用期間終了後も続く持続可能な収入源となる可能性を秘めていたからです。

6、コミュニティの拡大と金継ぎネットワークの構築
浄と彼の仲間たちの取り組みは、やがて彼らのコミュニティを超えて広がり始めました。彼らは、金継ぎを学びたいという人々を対象にしたワークショップ『金継ぎもったいない』を開くことで、この伝統的な技術の普及に努めました。
ワークショップは大きな成功を収め、参加者は金継ぎの技術だけでなく、物を大切にする心や、捨てられた物に新たな価値を見出すという考え方も学びました。

こうして、浄たちの活動は金継ぎネットワーク『金継ぎもったいない』の構築へと発展し、彼らは金継ぎの技術を持つ人々のコミュニティを作り上げました。このネットワーク『金継ぎもったいない』は、技術の共有だけでなく、互いに支え合う社会的なつながりも提供しました。メンバーたちは、金継ぎを通じて得られる精神的な満足感や、持続可能なライフスタイルへの意識改革を共有し、さらにその価値を社会に広めていくことを目指していきました。

7、無事是貴人の教えと人生の軌跡
浄の物語は、「無事是貴人」の教えが、いかに日常生活に深く根ざした価値を持つかを示しています。平凡な日々の中にこそ、価値ある生を送るためのヒントが隠されており、それを見出し、大切にすることが人生の豊かさへとつながります。浄と彼の仲間たちの取り組みは、物を修復することを超え、人々の心にも新たな光を灯すものとなりました。

8、結論
浄と彼の仲間たちによる金継ぎネットワーク『金継ぎもったいない』の構築は、単なる趣味の共有ではなく、人生における「無事是貴人」の精神を実践することの重要性を示しています。彼らの活動からは、日常の中で新たな価値を見出し、それを共有することの喜びと、コミュニティの力がいかに大きいかが伝わってきます。浄の物語は、私たち一人ひとりが、自らの生活において小さな変化を起こすことで、より良い社会への一歩を踏み出すことができることを教えてくれます。

9、まとめ
浄は退職後、清掃業で出会った廃棄された高級食器を金継ぎで修復することに情熱を注ぎます。この活動を通じて仲間との絆を深め、金継ぎネットワーク『金継ぎもったいない』を立ち上げます。
禅の「無事是貴人」の精神に基づき、日常の小さな変化から大きな価値と喜びを見出す物語でした。

10、ごあいさつ
親愛なる読者の皆様へ、この物語を通じて、平凡な日々の中に潜む特別な価値と喜びを共に見出しましょう。退職後の新たな挑戦と絆の物語が、皆様の心に温かな光をもたらしますように。

11、柔海 剛山(じゅうかいごうざん)の『禅語の俳句』     
                            禅語のお題:「無事是貴人」(ぶじこれきにん)

無事こそ 春風に問う 貴人の道

「 無事こそ 春風に問う 貴人の道」の俳句の解説
この俳句は、平穏無事を最も価値ある状態と捉え、自然と調和する心の姿勢を描いています。

無事こそ:日々の平穏無事を何よりの価値とする禅の教えを反映しています。この表現は、豊かな生活は外界の騒ぎよりも、内面の平和によって成り立つことを示唆しています。

春風に問う:春の訪れを告げる温かな風が、新たな始まりや生命の喜びを運んでくる様子を表しています。このフレーズは、自然のリズムと調和し、心の平穏を求める穏やかな問いかけを象徴しています。

貴人の道:物質的な豊かさや社会的な地位を追求するのではなく、心の安寧と調和の中に真の価値を見出す生き方を意味しています。この表現は、平穏な心こそが人を貴ぶべき本質的な資質とする禅の思想を映し出しています。

この度もご一読いただき、誠にありがとうございました。

2024年3月23日(土)
柔海 剛山 拝

【追記】
当サイトは個人的な見解や意見に基づいたものでは一切ありません。
多様な文献や資料、そしてインターネット上の情報源を参考にして、可能な限り柔軟かつ包括的な観点から、情報を物語化して提供することを目的としています。

『柔海 剛山流(じゅうかいごうざんりゅう)あるがままの俳句』とは
「あるがまま」という表現は、曹洞宗の開祖である道元禅師が提唱した生き方の哲学から来ています。この言葉は、物事をそのままの姿、自然な状態で受け入れ、現実を直視することの重要性を強調しています。私の詩作において「あるがままの俳句」という名前を用いるのは、この禅の教えに基づき、自然体でありのままの感覚や感情を詩に昇華させるためです。

伝統的な俳句は、その文字数や季語などの厳密なルールによって特徴づけられますが、現代ではこれらのルールに囚われない形式の俳句も存在します。これは「自由律俳れ、従来の5-7-5の音節制限や季語の必須性を取り払った形式です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?