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【台湾ひとり旅】手の付けられていない料理

 わたしがこのレストランの入口で並んで待っているおよそ15分のあいだ、たしかに、あの料理は誰の手も付けられませんでした。

 一番奥の、端っこの席に、銀色のお皿に盛られたその料理について、入口からの距離では名前など分かりませんでしたが(いやら、近くで見ても分からなかっただろうと思いますが)、窓からの光に照らされ立つ湯気からは、きっと美味しいであろうことは予想できて、「わたしも席に着いたらあの料理を頼もう」「いや、そもそもあの料理を誰も食べないのなら、わたしがいただきたいな」とおもうほどでした。

 結局、わたしが入口に並び始めてから2階の席に案内されるまでのおよそ15分、あの料理は誰の手も付けられることなく、終わりのころには、湯気さえ立っていません。

台湾ひとり旅日記より抜粋
in Ruifang, Taiwan Jan.2025

結局、あの料理はなにで、誰のための?

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