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【北イタリアひとり旅:第1章】Ep.7/14-c『ターミナル3を抜けたところに』

 午後6時すぎ、ローマフィウミチーノ空港に着陸。

 空港からローマテルミニ駅までは、およそ作業のよう。入国手続きをして、バゲージエリアのわきにあったATMで100ユーロほどを引き出して。ターミナル3を抜けたところにある空港駅で、ローマテルミニ駅へと向かう列車の切符を購入しました。

 飛行機を降りてから空港駅に向かうまで、一度も建物の外に出ずにたどり着くことができたはずですが、あえて空港の外の道を通ったのは、“わたしはイタリアという地に降り立ったのだ”ということを、なるだけ早く実感したかったからかもしれません。ええ、もちろん後悔しています。7月のイタリアはこの時間でもまだまだ太陽が空高くわたしを見下ろしていて、気温は35度くらい。そんなことは分かっていたはずですが、お気に入りのカーキ色のTシャツに少しずつ汗が染みていく様相をみるにつけ、ああ、エアコンの効いた建物の中を通ってゆけばよかったと、そう思うのでした。

at Fiumicino Aeroporto in Roma, Italy Juli.2027

 やっと空港駅の入口までたどり着いたというところで、左から視線を感じたわたしは、近くのベンチに座っていたひとりの男性の存在に気づきました。大荷物を抱えてベンチに腰掛けていて、わたしを見つめています。家族旅行かな。お父さんはお留守番ね!って状況でしょうか。

 何か話しかけた方が良いのかな、それとも汗びっしょりなわたし、どこかおかしい?ちょっとそわそわしてしまうくらいには、彼の視線は一点、つまりわたしをみていたわけですが、目線を空港駅の入口に戻したら、その理由が分かりました。入口の右側、つまりわたしを通り越した彼の目線の先に、ミネラルウォーターの広告があったのです。

 そりゃそうだよね。うん、わたしもこの広告見て、めちゃくちゃのどが渇いてしまいましたから。

 せっかくだから「良い一日を!」って言ってみたら、「もう夜だけどな」って、返ってくるなどして。たったそれだけのやり取りでしたが、ほんのちょっと、のどの渇きが薄れたかも、なんて。

at Fiumicino Aeroporto in Roma, Italy Juli.2027

 空港駅から列車に乗っておよそ1時間、夜8時をまわったというのに、ここローマの暑さは弱まることを知らず、15時間ほどの飛行機移動を先ほど終えたわたしの疲労をさらに助長させるかのように、日の光もまだみえます。本当であれば、ローマに着いてから寝台特急に乗るまでの間、ローマテルミニ駅周辺を歩いて写真でも撮ろうかと思っていたのですが、疲れがその予定を邪魔し、結局、撮ることのできた写真はたったの3,4枚程度でした。

 しかしおそらく、3,4枚撮れただけでも、喜ばなければなりません。鉛のように重いバックパックではありましたが、首から下げていたカメラはとても軽く、片手で額の汗を拭っても、もう片方の手さえあれば、納得のいく写真を撮ることができたからです。

at Basilica Papale di Santa Maria Maggiore in Roma, Italy Juli.2027

北イタリアひとり旅日記より

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