見出し画像

【台湾ひとり旅】あのまなざしは

 「おはようございます、何をされているのですか?」と英語で話をかけてみましたが、こちらを見るなりすぐ下を向いて、おばあちゃんは自身の作業に戻ってしまいました。"おばあちゃん"というには、手先はとてもしなやかで肌艶は上品さを保っていて、しかしそれでもおばあちゃんと呼んでいるのは、これまでいったいどれだけの喜怒哀楽を重ねてきたのだろうと想像させる、あの強く、しかし優しいまなざしのせいかもしれません。

 わたしが声をかけたあと数秒して、彼女はもう一度わたしを見て、「日本人?」と日本語で聞きました。「そうです。」と答えると、「いま、野菜、きれいにしてる」と少しカタコトの日本語で返ってきました。英語よりも日本語の方が通じるなんて、歴史的な背景があるとはいえ、やはりなかなか慣れません。

 少しの会話のあと、おばあちゃんが「ここの麺美味しいよ、食べる?」と聞いてくださった時は、あのまなざしはわたしの心まで見通しているのではないかと、驚いたものです。早朝にホテルを抜け出して街を散歩していたわけですから、それはもうお腹はぺこぺこでしたし、何よりも鼻を突き抜ける台湾独特の香辛料の匂いなんかが、わたしの胃をぐうぐう鳴らせるのですから。

台湾ひとり旅日記より抜粋
in Taipei, Taiwan Dec.2024

撮りますよー!って言ったら、少しかたい表情?

いいなと思ったら応援しよう!