
2025.01.05 わたし以外の誰にも、
帰国しました。
たくさんの思い出と、お土産とともに。
ひとり旅の、最後の最後。
偶然出会ったひとりのご老人のことを忘れられそうにありませんので、ここに記しておこうと思います。
その方は、台北駅近くの小さなカバン屋さんを営むおじいちゃんでした。
お店に入るとすぐにカバンを作る手を止めて、満面の笑顔でわたしにあいさつをしてくれたおじいちゃんは、わたしに中国語が通じていないと分かるとすぐに、日本語で「こんにちは、ようこそ台北へ」と言ってくれました。
とても流暢な日本語に驚いたわたしですが、それよりも驚嘆したことは、その方の笑顔から滲みでる、その方の生きざまや人となり、そしてその純粋さです。
こんなにもまっすぐで優しい笑顔をみたのはいつぶりだろうかと、そう思うほどでした。
聞くと、50年くらいこのカバン屋を営んでいて、お店に並んでいるカバンのすべてが、手作りなのだとか。
カバンをつくる工程を見せてくださったり、どうして日本語を話せるのかなど、わずか20分ほどの滞在度ではありましたが、とても充実した時間を過ごすことができました。
首からかけていたフィルムカメラでその方の笑顔を撮ることをしなかったわたしですが、後悔はしていません。
だってこの笑顔を忘れることは絶対にないし、それにわたし以外の誰にも、この笑顔を見せたくない。
独り占めしたいという欲が勝ってしまったのです。
ああ、わたしという人間の中にあるエゴイズムよ。
沈みかけの美しい夕日を飛行機の窓から眺めてもなお、まだわたしは、あのおじいちゃんの笑顔を、自分だけのものにしたいと思っているのです。
