Interview 架け箸 髙橋智恵さん ー小さな経済圏 つながりを大切にしたお買い物ー
エシカルな活動をされている方をインタビューさせていただく、私の新しい夢への道。
エシカルジャーナリストの活動。
5人目のインタビューは、
パレスチナの手仕事品をフェアトレードを通して届ける、架け箸の髙橋智恵さん。
パレスチナに対して自分ができることは何か?について真摯に向き合い、フェアトレードを通してパレスチナの手仕事の魅力を伝え続ける。その原動力やものづくりの考え方について伺いました。
初のインスタライブでのオンラインインタビューも実施。
ここでは、オンラインインタビュー前の事前打ち合わせの内容も踏まえてお伝えしていきます。
お互いの熱がこもった、オンラインインタビューの様子はこちらから、ご覧いただけます。
プロフィール
髙橋智恵さん。
学生時代にパレスチナに関心を持ち、2018年と2019年にパレスチナを訪れる。
現地でのホームステイを通して、パレスチナの魅力に惹き込まれ2020年に、パレスチナの手仕事を扱うフェアトレードブランド「架け箸」を設立する。
架け箸
”素敵”に国境はない Make your love borderless.
架け箸は「命を大切にする世界」を目指しています。
パレスチナでホームステイして感じたことを軸に、ないがしろにされる人達や手仕事を大切にしたいと生まれました。
扱う商品は、現地で剪定されたオリーブの枝を活かしたお箸や、アップサイクルと伝統文化を組み合わせた鞄など。
インタビュー
ーパレスチナに興味を持ったきっかけは何ですか?
パレスチナへの興味のきっかけは、高校時代に「パレスチナ問題」を知ったことです。当時は戦後の問題は解決したと思っていたけれど日本の戦後処理も含めて、それがまだ残ったままであることがずっと頭に引っかかっていました。
大学では文化学を学びました。
教授たちが自分たちのフィールド調査で現地に行っていて、必然的に自分も現地に行きたいと思っていました。
もともと、情報が少ない地域であればあるほど興味をそそられることもあり、当時留学していたブルガリアからパレスチナに渡りました。
ーパレスチナに行く前と行った後で、何か変化はありましたか?
ありました。
自分自身の日本での不自由がない恵まれている暮らしと、自由がなく安全も守られていないパレスチナの人々との間にギャップを感じました。
自分は日本人として、日本に生まれて不自由なく暮らしている。
でも、パレスチナの人々は、生まれながらに「パレスチナ問題」を抱えています。
その環境の違いにギャップを感じました。
パレスチナに対するイメージも大きく変わりました。
紛争地のイメージが強いため、現地に足を踏み入れる前は、自分の先入観や周りの方の心配もあり、少し不安を感じていました。でも、実際には歴史ある風景が広がっていたり、優しい笑顔で迎えてくれる人々がいたりと、もともと持っていたイメージが変わりました。
ー「架け箸」を始めたきっかけを教えてください。
パレスチナでのホームステイを経て、自分はこのまま恵まれた人生を歩んでいていいのか?という思いが生まれました。
同時にホームステイ先に対してお世話になるばかりで、パレスチナの状況をプラスに変えられるわけでもなく、ただお邪魔しているだけ。自分にできることはないと感じていました。
お世話になった人たちへ何かしたい、できることはないかを考えました。
「パレスチナ」と聞くと言葉の強い響きがあります。でも、そこで暮らす人たちは日常があり暮らしがある。そこには見え方にギャップがある。
だから、Made in Palestineのものを扱ってパレスチナと出会う機会を増やしたい。パレスチナの日常を伝えられる媒体として、フェアトレードでパレスチナの手仕事を届けようと起業を決めました。
NGOに入ることも考えたのですが、自分がやりたいことは「支援」ではなく「つながる」こと。フェアトレードに求めたものも、対等な関係でつながることでした。
勿論、NGOも現地とのつながりを大切にもされていますが、外側からの見た目がどうしても「支援」になってしまいます。
あとは、パレスチナの商品を扱っている団体や企業がほとんどなく、道がなかったことも起業した1つの理由ですね。
ー確かに、エシカルな業界特有かもしれないですけど、道が狭いですよね。
ーフェアトレードのパートナーとの出会いは?
木製品を扱う団体とは、ブランドを始めるときに自分で探して繋がりました。
刺繍のアイテムを作っている女性のアイシャさんは、もともと私が彼女のファンでFacebookから直談判しました。笑
彼女が作るアイテムは色味が落ち着いていたり、アップサイクルを取り入れていたりしてユニーク。女性が起業して1人でされていることにも共感しました。
ー顔が見える生産と消費を意味する “小さなお買い物”を掲げられていますよね。
一事業を継続させていくためにも、アイテムがたくさん売れることは必要不可欠だと思うのですが、それでもこの考えを掲げている理由を教えてください。
そこなんですよね。難しいですよね。笑
エシカルが、自分のものさしでもいいから「考えて何かを決めること」だとしたら、多くを消費することはエシカルなのか?って思うんです。
だから、たくさん売ることはこの考えの逆のことをしてしまうんですよね。
ブランドを始めた当初からうっすらと考えてはいたのですが、販売を続けてより強く感じるようになってきました。
事業を大きくするためにはたくさん売ることは必要かもしれない。
このジレンマって自分の仕事をどれくらい大きくするかに関わってくると思うんです。
消費も生産も小さくすることが大事だと思っているし、事業を今以上大きくしようと考えなかったら、自分や家族が生きていく分だけでいいんです。
すると、たくさん売ることは重要ではない。
今のお客様や近い考えを持っている方々、周りの方々にリーチして循環していく気持ちでいいんじゃないかなと思っています。
個人的に日本の暮らしも地域で循環させて小さく暮らしたいと思っています。
日々暮らしていてその経済圏の中で足りないものがあるなら、その分を海外など外部から取り入れたらいい。
フェアトレードは文化交流の意味もあると思っていて、海外を知る窓口でもあると思います。
日本の小さな循環の暮らしに、フェアトレードがお邪魔しているような、そういう経済圏でいいんじゃないかな。
マルシェなどに参加して出会った人たちの影響もあって、この価値観を感じつつあります。
ーパレスチナやフェアトレードに関心を持ってもらうために工夫していることはありますか?
パレスチナのホームステイから帰ってきた時に、伝えたいことがたくさんあるけれど、上手く伝える方法がなかったんです。
ここにパレスチナで作られた物があったら、どれだけ自然に話せるだろう。と思いました。
出店した時も原産国はわからなくても、立ち止まってくださった方に「パレスチナで作られているもので〜」という入り口だと、その人の中にパレスチナがすっと落ちると思うんです。
なるべく、「パレスチナ」という言葉を出さなくてもいいと思っていて、手仕事からパレスチナを知ってもらうことを大切にしてます。
一度アンテナが立つと、どこかで思いだしてもらえるんじゃないかなと。
パレスチナのものに触れてもらうことが、パレスチナを知る1つの種まきであり、1つの入り口であると考えています。
ー活動の原動力は何ですか?
スローガンの「素敵に国境はない」は原動力でもあり、自分自身がこれからの進み方に悩んだ時に立ち返る場所になっています。
さらに、今はブランドをやっていく中で繋がった作り手さんがいるから簡単に投げ捨てられない。そして、顔が見える関係でつながっているお客様も1つの力です。
ブランドに対する思い、作り手、お客様。全てが続ける原動力になっています。
ー架け箸にとってフェアトレードとは何ですか?
つながりです。
フェアトレードの小さな窓口があることが、それぞれの国の地域、私たちとその地域、地域と地域をつないでいます。
フェアトレードがあることで、知る機会もなかったことと繋がれます。
経済的や現地の雇用の意味もあるけれど、それ以上に文化的な意味があると思っていて。
平和を維持する、常に対話できる関係、そういう草の根的なつながりを作るのがフェアトレードだと考えています。
事前インタビューで小さなお買い物について話を聞いた時、社会問題に対する改善への思いも語ってくれた。
社会問題はシステムが大きな問題であることが見えてきた。
問題の改善には全ての関わりがある問題が、同じ方向を向いていないといけない。
だからこそ、しっかり考えて売る、しっかり考えて買う。
そんな、小さなお買い物のライフスタイルの提案を通して、作る人も買う人も小さなお買い物の仕方に向けていきたい。
“ 売る側もしっかり考えて売る。”
この考えはエシカル消費にとって重要である考え方。
しかし、多くの企業や消費者に欠けている考えではないかと思う。
この考えの欠如が、流行りが先行してしまっており本質が見えづらい一部のエシカル消費につながるのではないだろうか。
売る側の責任にもしっかり対峙していて、しっかり納得して買ってもらう。その思いを持つ架け箸でできるのは、「人と人でつながったお買い物」だ。
インタビューを通して伝わってくることは、押し付けがない、けれど強い説得力のある物事に対する考え方だ。
パレスチナ問題、フェアトレードと人権など伝えることが難しい問題。しかし、髙橋さんは特別感なく語られる。
人権についても、『人権の問題も自分に関係がないことはなくて、他の人の人権をほっておくことは、いつか自分の人権も侵食されるかもしれない。自分ごとなんです。』と語られていた。
自分が取り組むべき問題がきちんと見えており、それに対してしっかり足場を作ってアプローチされている。
話を聞いているこちらも、自分にも何かできるんじゃないかと勇気をもらえる。
それが、多くの人の共感を生んでいるのだろう。
ライブならではの熱のこもったオンラインインタビューの様子はこちらから。
視聴者からいただいた、今後の展望にむけた質問にも答えてもらっています。
架け箸 髙橋さんのインスタグラムはこちらから
パレスチナの作り手さんの暮らしをのぞくことができます。
https://instagram.com/kakehashi0212?igshid=YzcxN2Q2NzY0OA==
インスタグラムでは、エシカルな暮らしの取り入れ方やエシカルな現場を取材の様子を配信中。
https://instagram.com/ft_lady?igshid=MTIzZWMxMTBkOA==