「UXデザイナーよ、デスクを離れて自ら体験せよ」ワーケーションレポート!
こんにちは!GoodpatchのUXデザイナー/PdMの有馬です!
夏真っ盛りですね!リモートワーク中心のワークスタイルゆえに、もはや空調の効いた自室から出たくないと思う毎日ですが、リモートだと直接関わりにくいメンバーとのコミュニケーションが失われがちになってしまうのが少し気がかりだったりします。
そんな状況を打破するため、Goodpatchには「ワーケーション制度」というものがあります。この制度を利用して先日、UXデザイナーチーム全員でワーケーションを実施してきました。今回はその内容をレポーティングしたいと思います!
ワーケーション制度とは
リモート中心のワークスタイルによって失われがちなメンバー間のコミュニケーションの促進と、日常と異なる環境に身を置くことでのリフレッシュ効果を狙った制度です。コミュニケーションの促進を目的としているので、個人としての利用ではなく、原則チーム単位での運用を行なっています。
制度として存在しているので、現場メンバーとしても「ワーケーションしようぜ!」と気軽に企画しやすくなり、コミュニケーションを肉厚にする場としてありがたく使わせてもらっています。
「体験の引き出しを増やす」UXチームワーケーション
UXチームのワーケーションコンセプトは「体験の引き出しを増やす」でした。
UXデザイナーたるもの、日々仕事をしているだけではなく色々なモノゴトを自ら体験し、体験自体の引き出しを増やしていくことが重要と考えており、これまでも様々な活動を社内で行ってきました。
ワーケーションは複数のUXデザイナーで体験を共有できる貴重な機会でもあるので、3つのチームに分かれて色々なサービスを体験してきました。
チーム1:ラグジュアリーなおもてなしを体験〜おもてなしの達人になろう〜
チーム2:プロに弟子入りし、匠の技を体験
チーム3:自然の中でデジタルからの脱却
チーム1:ラグジュアリーなおもてなしを体験〜おもてなしの達人になろう〜
UXデザイナーにとって、ユーザーにとっての最高な体験を考えるおもてなしの心は重要です。このプログラムでは、ラグジュアリーな空間で提供される本格的なおもてなしを体験することで“おもてなしの本質”を探る旅をしてきました。いくつかピックアップしてご紹介します!
mesm TOKYO オートグラフコレクション「Chef’s Theatre」
おもてなしチームが最初に向かったのはmesm TOKYO オートグラフコレクション「Chef’s Theatre」。ホームページに記載の文言からすでに感じる圧倒的な体験美。
ただ食事をするだけではなく、冒険小説「アルセーヌ・ルパン」を基にして物語とともにコースが運ばれてきます。
「アルセーヌ・ルパン」といえば、誰もが知るルパンⅢ世のモデルにもなっている小説で、その始まり・投獄された刑務所・刑務所の中の食事などをモチーフにされていて、味・香り・食感でお腹を満たすだけではなく、その世界観を目で見てスタッフの方の語りを耳で聞き堪能しながら楽しむというものでした。
もちろん味も最高で、舌鼓を打ちながら次の物語が待ち遠しくなる体験ができました。
帝国ホテル インペリアルラウンジアクア
次に向かったのは言わずと知れた帝国ホテル!
「インペリアルラウンジ アクア」へ向かい、「星の王子さま」がテーマのアフタヌーンティーをいただきました。
体験として惚れ惚れしてしまったのは、一人一人にコンセプトとメニューが説明されたパンフレットと、それぞれメッセージの異なるコースターが用意されていたことでした。
ただパンフレットを持ち帰るのではなかなか見返さないし、持って帰るなんて正直面倒。でもこれは折り目が工夫されていて、上手く閉じると素敵なポスターになるのです。さらにどこか絵本を想起するような厚みのある上質な肌触りなので、素敵なお土産になりました。
また、パンフレットの中にイラストと写真、そして想いが添えられており、後から楽しかった日の思い出の詳細を見返すことができます。
食べて楽しんでいるその場だけでなく、自宅に帰っても「帝国ホテルで星の王子様のアフタヌーンティーを楽しんだ」という思い出を持ち帰れる。時間軸を意識して体験がデザインされていることを体感し、帝国ホテルのおもてなしの素晴らしさを学びました。
一流のおもてなしに大切なことはストーリーと細部へのこだわり
mesm、帝国ホテルの2つのおもてなしに共通していたのは、最高のストーリーと、そのストーリーを全ての接点で届け切る細部へのこだわりでした。mesmや帝国ホテルのような場所に訪れるユーザーは、日常から少し離れて特別な体験を求めていると思われます(我々もそうでした)。その感情を満杯にしてくれる素晴らしいストーリーがどちらにも存在していたように思えます。
そして、世の中には素晴らしいストーリーがあっても、ユーザーに届く頃には低減してしまっているサービスがあるのも事実。しかし、これらのサービスは届けたいストーリーが一切低減することなく、そのままユーザーの手元に届いていると感じました。ホームページでの紹介文から当日の料理、そして紙触りに至るまでの全ての接点で届け切る工夫がされていたように感じます。
チーム2:一流のクラフトマンシップを観察〜職人の技を体験しよう〜
直接触れることのできない概念的なデザインをすることも多い我々ですが、このプログラムではスタイリング・ものづくりのプロに講師になっていただき、手に触れてものを作り込む楽しさを学びました。こちらもいくつかピックアップしてご紹介します!
プロップスタイリングで物の並べ方が人に与える印象を学ぶ
プロップスタイリングはあまり日本では馴染みのない単語ですが、広告や出版物・映像などの撮影の際に、与えたい印象や目的に合わせて、小道具(prop)を選び、組み合わせて、配置(styling)することを指します。
美しい日常風景をうまく記憶に留めておきたくて、何気なく料理や雑貨などを撮影するものの、すこし退屈な出来栄えになってしまう...。そんな悩みをもつチーム2は、素晴らしい撮影を行う職人の思考と技術を学ぶために、プロップスタイリストの秋山麻衣子さんにGoodpatchオフィスにお越しいただき、ワークショップを実施していただきました。
ワークショップを通じて、小道具が1番魅力的な表情をする角度を発見できたり、配置の仕方によって印象が変化することを実感できたりと、素晴らしい撮影の裏側にある職人のこだわりを追体験できました。また、良い写真は「誰に何を伝えたいのか?」が明確であるといった、デザインにも通ずる学びも得ることができました。
工房で職人の手仕事を体験
プロップスタイリングを学んだ後はMaker's Baseという工房にお邪魔し、木や金属といったものを加工してデジタル以外のものづくりをしてきました!
最終的にはそれぞれ指輪やスケボーなどを作ったのですが、指先に全ての神経を集中させていると時間があっという間に過ぎ去り、気づけば3時間半もの時間が経っていました。普段は上流工程に関わることも多いUXデザイナーですが、改めてみんなものづくりが大好きな人がたくさんいるなと思った素敵な時間でした!没入最高!
チーム3:自然の中でデジタルからの脱却〜緑に癒されて新たな発想をしよう〜
日々の生活の中でパソコンやスマートフォンを使わない日はなく、もはやデジタル機器を触らないなんて想像もつかない日々を過ごしている人がほとんどだと思います。しかし我々はUXデザイナー。人の体験を考える上でデジタル以外での体験も必要不可欠です。
このプログラムでは、「デジタルから脱却した体験をしてみるためにはどうしたら良いか?」という問いに対して検討に検討を重ね、検討が行き過ぎた結果、富士樹海の中で電波の入らない洞窟に潜るという体験をしてきました!
途上の森と完成された森。森の成り立ちと生態系を学ぶ。
富士樹海に単身乗り込む蛮勇はさすがにせず、ガイドさんに頼んでコースを組んでもらいました。洞窟までの道中では、ガイドさんが富士樹海について沢山の知識を教えてくださったのですが、その知識が大変勉強になりました。
「そもそも今いる辺りの地面は土ではなく溶岩で覆われています。溶岩に覆われた土地というのは最初は土壌が無いので栄養もなく木も生えませんが、長い年月をかけて少しずつ栄養が乏しくても育つような植物が生息し始めます。そうして生まれた植物が枯れ果て、溶岩の上にウッドチップのように堆積されて今の地面が形成されます。その後ようやく木が育つようになりますがそれでもまだ栄養が要らない木しか育ちません。そうして成長してきた富士樹海は、今はヒノキとツガという2つの針葉樹が森の約8割を占めています。この森はまだ発展途上の森なのです」
富士樹海という土地は長い時間をかけて形成されたものであり、しかもまだ発展途上の森という説明を受けてかなり衝撃を受けました。その後、ガイドさんが「完成された森」と呼んでいたブナの森にも足を運んだのですが、生えている植生が全く違うため森の明るさが全然違いましたし、動植物・虫の多さも桁違いでした。森の成り立ちと広大な生態系を学ぶことができ、時間と環境が関与しあって現在があるのだと実感しました。
いざ洞窟へ。完全な暗闇でデジタルデトックス?!
その後、お目当ての洞窟へ向かいました!
洞窟の入り口から入り、30mも進むともはや入り口の方向すらわかりません。(ガイドさん指導のもと安全確保した上で)一度ヘッドライトを全員で消してみたところ、なんと目を閉じている時と開いている時で景色が全く変わらないという暗闇を経験しました。
夜寝る時でさえついついスマホを見てしまい、完全な闇というのは日常生活でほぼ無いと思うので貴重な経験でした。もし気になる方がいたらぜひ洞窟へ行ってみてください。
全く電波が入らないデジタルデトックスと、全く光が入らないライトデトックスを体験することができ、頭の中がすっきりしました!次の日の仕事で鋭いアイデアが沢山出た(ような気がする)ので、きっとデジタルデトックスは効果があったと思います。
UXデザイナーこそ自分の手足で多くを体験しよう
UXチームのワーケーションコンセプトは「体験の引き出しを増やす」でした。人から見聞きして得ることももちろん体験の1つではあるのですが、「体験」という言葉の通り、やはり自分の手足を使って体験したものこそ自らの血肉となり、引き出しになると考えています。
日々デスクに向かうだけでは体験からどんどん離れていってしまいますし、誰かにインタビューをし続けるだけでも足りないと思います。普段「体験」という人の心理・心情を扱っているからこそ、自らの心が動く瞬間を捉えたり、味わってみることが大切です。
「UXデザイナーよ、デスクを離れて自ら体験せよ」。
以上、UXデザインチームワーケーションレポートでした!