被覆写像
被覆写像
連続写像だけを考える。
被覆写像とは、実数$${\mathbb{R}}$$ から円周$${{{S}^{1}}}$$ への写像
$${p\left( t \right)={{e}^{2\pi it}}}$$, $${t\in \mathbb{R}}$$
の公理化である。
$${E,X}$$ を位相空間、
$${p:E\to X}$$
$${U}$$ を$${X}$$ の開集合とする。
逆写像$${{{p}^{-1}}\left( U \right)}$$ が$${E}$$ の排反な開集合の和$${{{p}^{-1}}\left( U \right)=\bigcup\nolimits_{\alpha \in I}{{{V}_{\alpha }}}}$$ ,$${{{V}_{\alpha }}\subset E}$$
としてあらわされ、 $${{{V}_{\alpha }}}$$ への制限$${p\left| _{{{V}_{\alpha }}} \right.}$$ がおのおの開集合$${{{V}_{\alpha }}}$$の$${U}$$ の上への同相写像homeomorphicとなっている場合、$${U}$$は$${p}$$ により均等に被覆されるという。
そして$${E}$$ は$${X}$$ の上の被覆空間であるという。
$${p}$$ が$${E}$$から$${X}$$ の上への写像で、おのおの$${x\in X}$$の開近傍が$${p}$$ により均等に被覆されているとき、$${p}$$は被覆写像であるといわれる。
$${x\in X}$$ にたいして$${{{p}^{-1}}\left( x \right)}$$ は$${x}$$ 上のファイバーと呼ばれる。ファイバーは、$${E}$$ の離散集合である。
$${E}$$の排反な開集合たちの和と書ける
$${{{p}^{-1}}\left( U \right)=\bigcup\nolimits_{\alpha \in I}{{{V}_{\alpha }}}}$$ ,$${{{V}_{\alpha }}\subset E}$$
において、
$${{{V}_{\alpha }}\subset E}$$は$${{{p}^{-1}}\left( U \right)}$$のsheetと呼ばれる。
$${{{V}_{\alpha }}\subset E}$$の全体$${\left\{ {{V}_{\alpha }} \right\}}$$ は$${{{p}^{-1}}\left( U \right)}$$のsheetsと呼ばれる。
$${U}$$ が連結集合であるとき、$${{{p}^{-1}}\left( U \right)}$$のsheetsは$${{{p}^{-1}}\left( U \right)}$$の連結成分たち全体を構成している。
例1) 指数関数$${p:\mathbb{R}\to {{S}^{1}}}$$は被覆写像である。実際$${{{e}^{2\pi i{{t}_{0}}}}\in {{S}^{1}}}$$ とし、$${0<\varepsilon <\frac{1}{2}}$$ を固定して、$${U=\left\{ {{e}^{2\pi it}}:\left| t-{{t}_{0}} \right|<\varepsilon \right\}}$$ を考える。そのとき、$${{{p}^{-1}}\left( U \right)}$$は$${m}$$ を整数として、排反な区間たち$${\left( m+{{t}_{0}}-\varepsilon ,m+{{t}_{0}}+\varepsilon \right)}$$ の和となり、$${p:}$$$${\left( m+{{t}_{0}}-\varepsilon ,m+{{t}_{0}}+\varepsilon \right)\to U}$$
は同相写像になっている。この関係を直観的に理解するためには$${\mathbb{R}}$$ を$${{{\mathbb{R}}^{3}}}$$における螺旋階段helix $${\left( \cos \left( 2\pi t \right),\sin \left( 2\pi t \right),t \right)}$$ ,$${-\infty <t<\infty }$$ と思うことが便利である。被覆写像$${p}$$ は螺旋階段を$${x,y}$$平面の円$${{{S}^{1}}}$$の上に射影する。
例2)すこし複雑にして,,,,,,,,,
$${X}$$ を8の字を横に倒したものとする。$${X}$$ は一点$${b}$$で接している2つのループ。$${{{E}_{0}}}$$ はループからなっているのだが、右片方は閉じさせないで螺旋階段にしてしまう。$${{{E}_{0}}}$$ は$${X}$$の被覆空間となる。
いま$${{{E}_{0}}}$$から、螺旋階段の$${{{e}_{0}}}$$ という点で接する左側のループを一個取り除いたものを$${E}$$ とする。$${E}$$も$${X}$$ の被覆空間である。また、 $${E}$$は $${{{E}_{0}}}$$の被覆空間とみなすことができ、被覆写像$${p}$$は$${E}$$から $${{{E}_{0}}}$$への被覆写像と$${{{E}_{0}}}$$から$${X}$$ への被覆写像の合成になっている。
例3)$${n}$$ 次元射影空間$${{{P}^{n}}}$$ 。
$${{{P}^{n}}={{S}^{n}}/\sim }$$すなわち、$${n}$$ 次元球面$${{{S}^{n}}}$$ において、$${x=y}$$ か$${x=-y}$$ のいずれかがなりたつとき、$${x\sim y}$$ (同一視)という同値関係による商空間。
$${p:{{S}^{n}}\to {{P}^{n}}}$$を商写像quotient mapとする。十分小さい$${\varepsilon >0}$$ を選び、
$${V=\left\{ x\in {{S}^{n}}:\left| x-{{x}_{0}} \right|<\varepsilon _{{}}^{{}} \right\}}$$とおくと、
$${U=p\left( V \right)}$$ は$${{{P}^{n}}}$$ の開集合であり、$${{{p}^{-1}}\left( U \right)}$$ は$${V}$$と$${-V}$$との和である、ここで、$${V}$$ と$${-V}$$ は排反は明白。$${V}$$および$${-V}$$ は$${p}$$ によりそれぞれ$${U}$$ の上へ同相に写像される。この場合すべてのファイバーは2点よりなる。
例4)被覆空間の直積はまた、被覆空間である。
たとえば、$${{{T}^{n}}={{S}^{1}}\times {{S}^{1}}\times \cdots \times {{S}^{1}}}$$は$${n}$$次元トーラス($${n}$$個の円周}$${{{S}^{1}}}$$の直積)とするとき、$${p:{{\mathbb{R}}^{n}}\to {{T}^{n}}}$$ を
$${p\left( {{x}_{1}},{{x}_{2}},\cdots ,{{x}_{n}} \right)=\left( {{e}^{2\pi i{{x}_{1}}}},{{e}^{2\pi i{{x}_{2}}}},\cdots ,{{e}^{2\pi i{{x}_{n}}}} \right)}$$
と定義すれば、例1の直積で作られる被覆写像になってる。
もちあげlifting
$${p:E\to X}$$ を被覆写像とする。位相空間$${Y}$$ と写像$${f:Y\to X}$$があるとき、$${g:Y\to E}$$ で$${p\circ g=f}$$ となるような$${g}$$ があった場合、$${g}$$ は$${f}$$ のもちあげliftと呼ばれる。
$${p\circ g=f}$$ということは、$${f}$$ が下の道を直接行く場合と$${g}$$ のあとに射影$${p}$$が続ける道を行くとが同じであることを意味する。 $${p\circ g=f}$$のとき、ダイアグラム(上図)は可換であるという。
liftがあれば、それは一意であることを証明できる。
ここではその証明を略し、道の持ち上げ定理の証明をする。
定理 道持ち上げ定理
$${p:E\to X}$$ を被覆写像、$${\gamma :\left[ 0,1 \right]\to X}$$ を道($${X}$$の中をうごく連続曲線)とする。$${{{e}_{0}}\in E}$$ に対して$${p\left( {{e}_{0}} \right)=\gamma \left( 0 \right)}$$ を道の始点する。このとき、$${\alpha \left( 0 \right)={{e}_{0}}}$$ で$${p\circ \alpha =\gamma }$$ となるような道$${\alpha :\left[ 0,1 \right]\to E}$$ が一意に存在する。
証明)$${x\in X}$$ に対して、($${p}$$ により均等に被覆されている)$${x}$$の開近傍$${U\left( x \right)}$$ をえらぶ。$${{{\gamma }^{-1}}\left( U\left( x \right) \right),x\in X}$$ は$${\left[ 0,1 \right]}$$ の開被覆である。$${\left[ 0,1 \right]}$$ はコンパクトであるから、そのうちの有限個でおおわれる。
$${0={{s}_{0}}<{{s}_{1}}<{{s}_{2}}<\cdots <{{s}_{m}}=1}$$
と均等に被覆された開集合たち
$${{{U}_{1}},{{U}_{2}},\cdots ,{{U}_{m}}}$$ を選んで、
$${{{\gamma }^{-1}}\left( U\left( x \right) \right)\supset \left[ {{s}_{j-1}},{{s}_{j}} \right]}$$、$${j=1,2,\cdots ,m}$$
すなわち、
$${\gamma \left( \left[ {{s}_{j-1}},{{s}_{j}} \right] \right)\subset {{U}_{j}}}$$ $${j=1,2,\cdots ,m}$$
とできる。そして望むリフトはつぎのような$${m}$$ステップをふむことで完成される。
$${p\left( {{e}_{0}} \right)=\gamma \left( 0 \right)\in {{U}_{1}}}$$
であるから、$${{{e}_{0}}}$$ の近傍$${{{V}_{1}}}$$ が存在して$${p\left( {{U}_{1}} \right)={{V}_{1}}}$$ で$${{{U}_{1}}}$$ と$${{{V}_{1}}}$$ は同相である。最初の区間$${\left[ 0,{{s}_{1}} \right]}$$における$${\alpha \left( s \right)}$$を次のように定義する。つまり$${\alpha \left( s \right)}$$ が$${\gamma \left( s \right)}$$ を被覆する$${{{V}_{1}}}$$ に属している一意に決まる点であること。詳しく書くと、$${\left[ 0,s \right]}$$ 上の連続関数(写像)$${\alpha ={{\left( p\left| _{{{V}_{1}}} \right. \right)}^{-1}}\gamma }$$ と定義する。
$${{{e}_{0}}=\alpha \left( 0 \right)}$$ のかわりに、$${\alpha \left( {{s}_{1}} \right)}$$とおきかえ、$${{{U}_{1}}}$$ のかわりに$${{{U}_{2}}}$$として、$${\alpha }$$ を区間$${\left[ {{s}_{1}},{{s}_{2}} \right]}$$に同様な手順を適用する。以下同様の手順を$${m}$$ ステップ繰り返せば持ち上げられた道全体$${\alpha }$$ を得ることができる。またこの持ち上げは一意に決まってくる。