正則空間におけるUrysohn のレンマ
正則空間におけるUrysohn のレンマ
定義:($${{{T}_{2}}}$$)位相空間がハウスドルフ空間であるとは、$${x\ne y}$$ なる任意の2点を分離する近傍$${{{U}_{1}},{{U}_{2}}}$$すなわち、
$${x\in {{U}_{1}},y\in {{U}_{2}}}$$ ,$${{{U}_{1}}\cap {{U}_{2}}=\phi }$$
となるものが取れることである。
定義:($${{{T}_{4}}}$$)位相空間$${X}$$ が正則空間
(normal space)であるとは、
排反な閉集合$${{{F}_{1}},{{F}_{2}}\subset X}$$に対して
$${{{F}_{1}}\subset {{U}_{1}}}$$ ,$${{{F}_{2}}\subset {{U}_{2}}}$$
となる開集合
$${{{U}_{1}},{{U}_{2}}\subset X}$$ ,$${{{U}_{1}}\cap {{U}_{2}}=\phi }$$
が存在することである。
補題1:位相空間$${X}$$ が正則空間 であるための必要十分条件は、閉集合$${F}$$と$${F\subset W}$$ をみたす開集合$${W}$$に対して、$${F\subset U\subset \bar{U}\subset W}$$となる開集合$${U}$$ が存在することである。
証明)必要条件)$${F}$$ と$${X\backslash W}$$ は排反な閉集合であるから、排反な開集合$${U,V}$$ が存在して
$${F\subset U}$$,$${X\backslash W\subset V}$$
となる。また、$${U}$$と$${V}$$が排反より
$${U\subset X\backslash V}$$となるが、
$${X\backslash V}$$ は閉集合であるから
$${\bar{U}\subset X\backslash V}$$
となる。
また、$${X\backslash W\subset V}$$より
$${X\backslash V\subset W}$$。
これらは$${F\subset U\subset \bar{U}\subset W}$$を意味している。
十分条件)排反な閉集合$${{{F}_{1}},{{F}_{2}}\subset X}$$をとる。$${W=X\backslash {{F}_{2}}}$$とすると$${{{F}_{1}}\subset W}$$ である。仮定より、$${{{F}_{1}}\subset U\subset \bar{U}\subset W}$$となる$${U}$$ をとることができる。
$${\bar{U}\subset W}$$より$${{{F}_{2}}={X\backslash W \subset X\backslash \bar{U}}}$$したがって$${{{U}_{1}}=U}$$ 、$${{{U}_{2}}=X\backslash \bar{U}}$$とおけば
$${{{F}_{1}}\subset {{U}_{1}}}$$ ,$${{{F}_{2}}\subset {{U}_{2}}}$$となっている。
証明おわり。
正規空間の例として次の定理がある。
定理2:コンパクトなハウスドルフ空間$${X}$$は正規空間である。
定理2の証明のため次の補題を示しておく
補題3:ハウスドルフ空間$${X}$$に対して$${F}$$ をコンパクトな集合とする。そして、$${x\notin F}$$ とすると、排反な開集合$${{{U}_{1}},{{U}_{2}}\subset X}$$が存在して
$${x\in {{U}_{1}}}$$ ,$${F\subset {{U}_{2}}}$$となる。
補題3の証明)$${y\in F}$$ を任意に選ぶ。
ハウスドルフ性より、
$${x\in {{U}_{y}},y\in {{V}_{y}}}$$,$${{{U}_{y}}\cap {{V}_{y}}=\phi }$$
となる開集合,$${{{U}_{y}},{{V}_{y}}}$$が取れる。$${F}$$ はコンパクトであるから$${F\subset \bigcup\nolimits_{y\in F}{{{V}_{y}}}}$$ より$${{{V}_{{{y}_{1}}}},{{V}_{{{y}_{2}}}},\cdots {{V}_{{{y}_{n}}}}}$$を選んで有限開被覆をつくり$${F\subset \bigcup\limits_{k=1}^{n}{{{V}_{{{y}_{k}}}}}}$$とできる。ところが、$${x\in {{U}_{{y}_{k}}}}$$であり、$${\left( \bigcap\limits_{k=1}^{n}{{{U}_{{{y}_{k}}}}} \right)\cap \left( \bigcup\limits_{k=1}^{n}{{{V}_{{{y}_{k}}}}} \right) =\phi }$$であるから、$${{{U}_{1}}=\bigcap\limits_{k=1}^{n}{{{U}_{{{y}_{k}}}}}}$$, $${{{U}_{2}}=\bigcup\limits_{k=1}^{n}{{{V}_{{{y}_{k}}}}}}$$とおけば目的が達成される。証明終わり。
定理2の証明:排反な閉集合$${{{F}_{1}},{{F}_{2}}\subset X}$$を考える。補題3より$${y\in {{F}_{2}}}$$ に対して、$${{{F}_{1}}\subset {{U}_{y}}}$$$${y\in {{V}_{y}}}$$となる排反な$${{{U}_{y}},{{V}_{y}}}$$がとれる。$${{{F}_{2}}\subset \bigcup\limits_{y\in {{F}_{2}}}{{{V}_{y}}}}$$ であるが、$${{{F}_{2}}}$$ はコンパクト空間$${X}$$ に含まれる閉集合であるから自身コンパクト。したがって有限個の$${{{V}_{{{y}_{1}}}},{{V}_{{{y}_{2}}}},\cdots {{V}_{{{y}_{n}}}}}$$を選んで$${{{F}_{2}}\subset \bigcup\limits_{k=1}^{n}{{{V}_{{{y}_{k}}}}}=V}$$とできる。ところが
$${U=\bigcap\limits_{k=1}^{n}{{{U}_{{{y}_{k}}}}}}$$とおけば、
$${{{F}_{1}}\subset U}$$で$${U\cap V=\phi }$$ となっている。これは$${X}$$ が正規空間であることを言っている。証明終わり。
主題のウリゾーンのレンマを述べよう。
定理:(Urysohn のレンマ)
位相空間$${X}$$ が正則空間 であるとする。このとき、排反な閉集合$${{{F}_{0}},{{F}_{1}}\subset X}$$に対して、$${X}$$ 上で定義された、以下の条件を満たす実数値連続関数$${f\left( x \right)}$$が存在する。
(i) $${0\le f\left( x \right)\le 1}$$
(ii) $${x\in {{F}_{0}}}$$ のとき$${f\left( x \right)=0}$$
(iii) $${x\in {{F}_{1}}}$$のとき $${f\left( x \right)=1}$$
証明)$${{{F}_{0}},{{F}_{1}}}$$が両方とも空集合のときはtrivial(無意味であるから)
$${{{F}_{0}}}$$ が空集合のときは、すべての$${x\in X}$$ で$${f\left( x \right)=1}$$ としておけばよい。
以後、$${{{F}_{0}},{{F}_{1}}}$$が両方とも空集合でないとする。
$${{{V}_{1}}=X\backslash {{F}_{1}}}$$ とすると$${{{F}_{0}}\subset {{V}_{1}}}$$ であるから補題1より$${X}$$ が正則空間 であることを使うと、開集合$${{{V}_{0}}}$$が存在して$${{{F}_{0}}\subset {{V}_{0}}\subset {{\bar{V}}_{0}}\subset {{V}_{1}}}$$ とできる。同様に正規空間であることを使って、
$${{{V}_{0}}\subset {{\bar{V}}_{0}}\subset {{V}_{\frac{1}{2}}}\subset {{\bar{V}}_{\frac{1}{2}}}\subset {{V}_{1}}}$$
とできる。このプロセスを続けていくと、
$${r=m/{{2}^{n}}}$$, $${0\le m\le {{2}^{n}}}$$ というかたちのすべての$${r}$$ に対して、
$${{{F}_{0}}\subset {{V}_{0}}}$$ , $${{{\bar{V}}_{{{r}_{1}}}}\subset {{V}_{{{r}_{2}}}}}$$ ($${{{r}_{1}}<{{r}_{2}}}$$ )
となる可算無限個の開集合$${{{V}_{r}}}$$ を得る。
$${0< t<1}$$に対して、
$${{{V}_{t}}=\bigcup\limits_{r< t}{{{V}_{r}}}}$$
$${t<0}$$ に対して、$${{{V}_{t}}=\phi }$$
$${t>1}$$に対して、$${{{V}_{t}}=X}$$
とおく。この結果すべての実数$${t}$$ で開集合$${{{V}_{t}}}$$が定まり、$${{{\bar{V}}_{{{t}_{1}}}}\subset {{V}_{{{t}_{2}}}}}$$ ($${{{t}_{1}}<{{t}_{2}}}$$)をみたす。実際、$${0\le {{t}_{1}}<{{t}_{2}}\le 1}$$の場合、
$${{{t}_{1}}<{{r}_{1}}<{{r}_{2}}<{{t}_{2}}}$$となる$${r=m/{{2}^{n}}}$$の形をした有理数があるので、
$${{{\bar{V}}_{{{t}_{1}}}}\subset {{\bar{V}}_{{{r}_{1}}}}\subset {{V}_{{{r}_{2}}}}\subset {{V}_{{{t}_{2}}}}}$$
となる。構成法から
$${\left\{ t:x\in {{V}_{t}} \right\}}$$は$${\left[ {{\lambda }_{x}},\infty \right)}$$ か$${\left( {{\lambda }_{x}},\infty \right)}$$のいずれかの形をしている(Dedekindによる切断を用いて実数を定義するプロセス!)。そこで$${f\left( x \right)={{\lambda }_{x}}}$$ とおく。この$${f\left( x \right)}$$が条件をみたすことを示せば証明が終わる。$${t>1}$$のときは$${{{V}_{t}}=X}$$であったから、$${\left( 1,\infty \right)\subset \left[ {{\lambda }_{x}},\infty \right)}$$である。したがって$${f\left( x \right)={{\lambda }_{x}}\le 1}$$でなくてはならない。同様に、$${t<0}$$ に対して$${{{V}_{t}}=\phi }$$であるから、$${f\left( x \right)={{\lambda }_{x}}\ge 0}$$。結局、$${0\le f\left( x \right)\le 1}$$となった。他方$${x\in {{V}_{0}}}$$ とすると、$${{{\lambda }_{x}}\le 0}$$ か$${{{\lambda }_{x}}<0}$$となってしまうが、上で述べたように$${{{\lambda }_{x}}\ge 0}$$であったから$${x\in {{V}_{0}}}$$ の場合には$${{{\lambda }_{x}}=0}$$でなければならない。したがって$${x\in {{V}_{0}}}$$ のとき$${f\left( x \right)=0}$$。つまり、$${x\in {{F}_{0}}}$$ のとき$${f\left( x \right)=0}$$となって(ii)が言えた。同様にして、$${x\notin {{V}_{1}}}$$すなわち$${x\in {{F}_{1}}}$$のとき、$${1\notin \left( {{\lambda }_{x}},\infty \right)}$$の場合だけが可能であり$${f\left( x \right)={{\lambda }_{x}}=1}$$ でなければならない。これから$${x\in {{F}_{1}}}$$のとき $${f\left( x \right)=1}$$(iii)がいえた。あとは$${f\left( x \right)}$$ の連続性をしめせばよい。
$${{{x}_{0}}\in X}$$と $${\varepsilon >0}$$を任意にとる。
$${U\left( {{x}_{0}} \right)={{V}_{{{\lambda }_{{{x}_{0}}}}+\varepsilon }}-{{\bar{V}}_{{{\lambda }_{{{x}_{0}}}}-\varepsilon }}}$$
は $${{{x}_{0}}}$$の近傍である。したがって、
$${x\in U\left( {{x}_{0}} \right)}$$ では
$${{{\lambda }_{{{x}_{0}}}}-\varepsilon \le {{\lambda }_{x}}\le {{\lambda }_{{{x}_{0}}}}+\varepsilon }$$
がなりたつ。すなわち、$${x\in U\left( {{x}_{0}} \right)}$$において
$${f\left( {{x}_{0}} \right)-\varepsilon \le f\left( x \right)\le f\left( {{x}_{0}} \right)+\varepsilon }$$
これは $${f\left( x \right)}$$が連続関数であることを示している。
「ウリゾーン(Urysohn)」として知られる数学者、パヴェル・サムイロヴィッチ・ウリゾーン(Pavel Samuilovich Urysohn)は、1898年2月3日、ロシアのオデッサで生まれ、1924年8月17日にフランスのビアリッツ近郊で若くして亡くなりました。彼の主な研究分野は、位相空間論(トポロジー)であり、特に「ウリゾーンのメトリックス」や「ウリゾーンのレンマ」として知られる貢献で有名です。
ウリゾーンは、モスクワ大学で研究を行い、後に位相空間論の基礎を築く研究に着手しました。彼は距離空間(メトリック空間)の構造に関心を持ち、任意の正規空間にメトリックが付加できることを証明するという重要な成果を上げました。これが「ウリゾーンのメトリックス」という概念です。また、彼の研究の中で知られる「ウリゾーンのレンマ」は、位相空間で分離性を扱う際に用いられ、現代の数学でも頻繁に使われる概念となっています。
残念ながら、ウリゾーンは26歳という若さで事故により命を落としました。
by chatGPT
オデッサはいまはウクライナ、1898年のときはロシア帝国だったのか。