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復活当選は”悪しき制度”か

与党の過半数割れとなった衆議院選挙。今回の総選挙では、小選挙区と比例代表での重複立候補をしないと宣言する候補者が相次ぎました。たびたび批判される「復活当選」に対するアピールとみられますが、比例復活は悪しき制度なのでしょうか。

衆議院選挙、いわゆる「総選挙」では「小選挙区比例代表並立制」が採用されています。有権者は投票所で①小選挙区の候補者の名前(小選挙区)②支持する政党の名前(比例代表)ーーを記入します。

2つの選挙方式が同時採用されている形で、①で候補者自身が選挙区で当選するかどうかが決まり、②は得票数に応じて各政党に議席が割り振られます。衆議選では①②の両制度に同時立候補できるため、小選挙区で敗れても比例代表として「復活当選」する場合があります。

この制度に対し「選挙区で負けた候補が復活する仕組みはおかしい」といった不満の声がよく選挙後のニュースで取り上げられます。

こうした批判を回避するため、今回の選挙では与野党の党首らが相次いで小選挙区のみで戦うと宣言しました。特に自民党では裏金を指摘された一部候補が重複立候補を認められませんでした。

小選挙区のみに出馬することで「いさぎよし」「正々堂々」といった印象を有権者に与える思惑や、不祥事に対する禊の意味合いもありそうですが、「復活当選」が閉ざされ、公明党では現代表が小選挙区で敗れ落選となり、自民党でも当選回数10を超えるような大物議員の落選もありました。

では、「復活当選」は禁止すべき制度なのでしょうか。

一般に小選挙区制は2大政党を生みやすく、比例代表制は多党化につながるとされます。

小選挙区は、1位の候補だけが当選する分かりやすい仕組みですが、たとえ1票差であっても2位候補は落選となるため「死票」が多くなるほか、選挙結果が大きく振れやすい問題点が指摘されています。

例えば、主要国で小選挙区のみの「単純小選挙区制」を取り入れている英国では、今年5月の総選挙で、労働党が過半数の議席を獲得し14年ぶりに政権を担うことになりました。

労働党(現411議席)は選挙前から議席を209伸ばし、与党だった保守党(121議席)は244議席減らしました。一方、実際に有権者が各党の候補者に投じた割合は労働党33.7%、保守党23.7%とちょうど10%の差でした。得票率は3割程度にもかかわらず、労働党は議会(下院:650議席)の60%超の議席を獲得しました。

小選挙区制のみでは実際の得票率と獲得議席に乖離が生じやすい

一方、比例代表制は、少数派政党であっても得票に応じて議席を得ることができます。「死票」を減らし、より政治に民意を反映するという点では比例代表を同時に採用する方がメリットがありそうです。マイノリティなど「多様性」を尊重する上では重要な制度と言えます。

小選挙区と比例代表制を併用しても、党として確実に当選させたい人材や、毎度僅差で人気のライバル議員に敗れるといった候補者であれば「復活当選」が必ずしも否定されるものではないでしょう。

復活当選が批判の的になるのは、単純な惜敗率(どの程度僅差で敗れたか)もしくは単純な名簿順位(誰から順番に当選させるか)に基づくのではなく、惜敗率と名簿順位を巧妙に組み合わせ、特定の議員への「保険」のような印象を抱かせる運用方法に問題があるのではないでしょうか。

国民には不人気ながら党内で権力を持っているために優先的に名簿上位に掲載される、有名人に出馬を打診する際に必ず当選させるとの補償代わりに比例を用いる――こうした疑念を抱かせるような制度活用が「比例復活」に嫌悪感をもたらしているのかもしれません。

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