ミナシゴノシゴトの仕事│⑥感動の再現
▶ミナシゴの制作│気持ちよくなってもらう
ミナシゴノシゴトの世界観を構築するお話に戻ろう。
楽しくやってきたとはいえ、制作初期から、いくつもの悩みにぶち当たった。
悩みとは大抵『課題』だ。
初期のほうにある、覚えている課題の一つは、「どういう感覚をユーザーの皆様に届けるか」だった。この感覚とは喜怒哀楽の感動・感情だ。
当然ターゲットは早くに把握する。第一のターゲットは自分と同じ成人男性となる。そういった層にどういう感覚をお届けるするか。
本作は美少女が活躍するゲームである。よって第一に、男性的欲求を満たしてもらうのが目的だ。
だが岡田伸一が関わるからには、独自性を提供したい。
また別途、こんなことがあった。都心のオフィスまで赴き、ちょっとだけ緊張感のある会議で、ある方から、「(ユーザーの皆様に)気持ちよくなってもらわないと」というフレーズがあった。
なるほど、と思い、この言葉をその後よく租借した。
この時すでに企画書はS氏協力の下、ほぼ完成していたが、それまでに作り上げたプロットの中で、この「気持ちよくなってもらう」「独自性のある感動を提供できているか」という部分を押し出すことが、大切な課題だった。
結果としてこの解決は、「子育てクイズマイエンジェル」という大好きなクイズゲームがヒントになり、僕の中ですんなりクリアした。
▶ミナシゴの制作│あの感覚の再現
以前あるメディア誌の取材でお答えしたが、この「子育てクイズマイエンジェル」というゲームは90年代に当時のナムコから出た、正解するクイズのジャンルによって娘が成長する傑作クイズゲームだ。
当時さくらんぼを舌で結ぶことに命を懸けていた中学生の僕は、ゲーム内の愛娘をなんかちょっぴり悪いギャルに育てたくて、ワクワクとかハラハラとか、何とも言えない感情を抱きながら、数分毎に5年という異常なスピードで成長する娘を夢中で見守りながらクイズを答えていったのは良い思い出である。
とにかく、そういう感情の名残が僕の中にあった。
当然ミナシゴとのゲーム性は全く違うが、この「愛娘がどこに向かうか、ハラハラしたり期待したり、何とも言えない感情」を、育児経験あるなし関わらず、今回の企画で、ある種疑似的に再現できないか。
それが与えたい感動の出発点の一つだった。
なので初期段階では、ジャンヌやアリスの幼年期の設定も作り、実際にストーリーで登場する想定も考えていた。むしろ幼年期のユニットからプレイアブルできないかまで伝えた。
しかしこれはゲームで表現する上で何かと弊害があり、僕も納得するかたちで、ジャンヌと黒騎士が初めて出会った、本編序盤にも登場するコンセプトアートの一枚絵に集約することになった。
また余談になってくるが、現在YouTubeでも読めるムラナコ先生作画のミナシゴのモーションコミックはほぼ僕がストーリーを書き、監修した。
実はここで、ジャンヌとアリスの幼少期が登場する。
第0話とも言うべきストーリーが描かれ、ここまで紹介した使われないと思っていた裏設定も、大いに活かされた。ちなみにこのモーションコミックは大変好評だったと聞いている。
実はコンセプトアートもモーションコミックも、「やるからには」、と本編のメインストーリーの今後にも深く関わる小ネタや伏線がある。
観なくても楽しめるが、ジャンヌとアリスの声優さんにも入って頂き、ゴージャスな内容なので、まだの方は是非一度見てみてほしい。
つづく