ミナシゴノシゴトの仕事│⑤お仕事開始
▶ミナシゴノシゴトの開始
話は戻り、ミナシゴノシゴトの企画が通り、さあ仕事の開始だ! という出発からすべてが目まぐるしく動いた。
結果として思うのは、マネージメント、ライターチーム、イラストチーム、音楽制作、声優さん、また面白いゲーム性をはじめ、関わってくれている全ての方が、本当に素晴らしい仕事をして頂いていること。
当然ながら一人で作ってる訳ではない。
多くの方にご尽力頂き、この僕もあくまで原作者というシゴト(役割)であり、皆さまのご寵愛とご尽力の上で今日のミナシゴが、ゲームとして世に出ている。
ただ「つまらなければ僕の責任だ」という気持ちだけは持つようにしてきた。責任感のある仕事が僕の信条だからだ。
多岐にわたる各チームの役割や感謝も述べたいところだが、とてつもなく長くなりそうなので、引き続き、あくまで僕個人の目線の話を公で話せる範囲で続けようと思う。
▶カニの産卵
制作時は苦労よりも楽しいことのほうが多いくらいだが、最も印象的なことの一つは、「無事にリリースしたことそのもの」だ。
ゲームを含めたあらゆる商業作品すべてに言えることだが、そもそもお客様の手に作品が届くこと自体が〝奇跡〟だと思ってほしい。
ミナシゴノシゴトの企画が通ってからおよそ2年間でリリースに至るのだが、実はこの間も、無数の作品が企画倒れしていた。
そういった話は嫌でも僕の耳にまで届く。
1つ1つ様々な大人の事情があるのだが、例えると──ゴールの見えない長距離走を続ける中、横を走っていた競争者が次々と倒れ、屍を超えていくような気分だった。
しかもそのゴールは、時々目の前で、「道路工事の影響でさらに数キロ先にゴールを再設置することになりました」もうちょっとです、頑張って走りましょう、という事態もある。
ライバルの屍に囲まれ、暗いトンネルを走る。カニの産卵のように、大量に生まれるも、成熟できるカニは極一部だと過る──そんな気分だ。
また、リリースした後にもすぐにサービス終了を迎えるゲームがあるのも事実だ。
競争そのもののヒリヒリした感覚は実は大好きだし、ありがたいことに過去ヒット作にも恵まれたが、すべてにおいて、作品を世に出してから安心したことは一度もない。
▶仕事の財産
もちろん、企画発足からこの間もちゃんと原稿料などは貰っている。
ただ個人的に一番の財産は、仕事で関わる専門分野の方の仕事ぶりやお話を間近で見聞きできていることだ。
制作時は仕事で関わる方たちと、飲みに行き、ミナシゴの未来を語り合ったのも美しい思い出の一つだ。(コロナ禍以前のお話です)
実はそういった繋がりが、何よりもモチベーションになった。
本当に素晴らしい、各分野のエキスパートに恵まれ、そういった方から専門的なお話を聞くだけでも本当に楽しかった。
飲みに行くことに難色を示す妻が、あまりに僕が楽しい様子に、いつも快く送り出してくれたほどだ。
今はコロナ禍なので控えているが、またみんなで餃子とか食べながら飲みに行けるのが本当に楽しみで仕方がない。
つづく