種を実らせる存在。
二子玉川で新たな取り組みが生まれている。
「二子玉川まちみちテラス」。
(一社)二子玉川エリアマネジメンツが二子玉川商店街振興組合と協働。
沿道の商店街飲食店の店舗内における密集を避け、
既存の交通規制時間内に限り、
区道及び国道の道路占用申請を行い、路上利用の取り組みを始めた。
この取り組みは、国土交通省が6月5日に通知した
「新型コロナウィルス感染症の影響に対応するための沿道飲食店等の路上利用に伴う道路占用の取り扱いについて」において、
飲食店等を支援するための緊急措置として路上利用の占用許可基準が
緩和されたことを受けて決行された。
二子玉川エリアでは、2019年1月、
一般社団法人二子玉川エリアマネジメンツが設立された。
正会員に玉川町会、東京急行電鉄、準会員には東神開発が加入し、
アドバイザーとして世田谷区が加わった。
地元の人、開発を進めた企業、行政がコラボレーションする組織が設立。
事務局は、東急株式会社の社員が担い、
地元在住の地域活動に関わっている方々がメンバーとして加わり、
地域との繋ぎ役として活躍している。
そんな中、なかなか一緒に活動できない組織があった。
二子玉川商店街振興組合。地元の商店街だ。
「エリアマネジメントを実施する上で、
『商売』に直結しない取り組みはなかなか発展性がない」
と各地のエリアマネジメント組織から聞く。
「協働体制を組みたいよね」と、口と頭では納得し、
ぜひ実行したいと思い続けていたが、
なかなかカタチを生み出すことができなかった。
大きなきっかけとなったのが、「二子玉川まちみちテラス」。
商店街の店舗と協力して、路上の利活用を試みた。
(一社)二子玉川エリアマネジメンツの内野洋介さんは、
二子玉川商店街振興組合の理事 鈴木 理英さんに相談。
「エリアマネジメンツさんが設立されてから、よく会話はしていました。
何か具体的なアクションを持てたらと思っていた中で
まちみちテラスのご提案を受けたんです。
加入されている店舗の皆さんは、日常の営業で手いっぱい。
イベントに参加するとなると、
従業員の数を増やさないといけなくなります。
そこまでして...参加するのか?というところが難しいところ。
『いかに通常営業の大きな負担にならずして、効果が生まれるか?』
というところがポイントになります。
今回は、まちみちテラスの実施前に、
商店街の方のご意見を聞く、対話の機会も設けてくれました」
と話す鈴木さん。今回の企画の発展性に期待を寄せているようだ。
対話の機会というのも、
『ゆるトーク』と題して、一方的に企画を打ち出すのではなく、
実践前にざっくばらんに考えていることを共有し合う場が設けられた。
そこに参加した方の中には、
「『まちみちテラス』などわざわざ実施しないでいいのでは?」
という厳しい意見も。
しかし、エリアマネジメント組織と商店街が膝を突き合わせて
会話をすることで、率直な意見交換ができた。
実際にゆるトークに参加してくださった店舗は参加しなかったが、
実践の場を見て、今後の取り組みに関する意見をくれるようになった。
実際に参加した店舗の方の感想は、
「店が少し奥まったところにあるので、路上に出ていくことができて、
認知度が高まりました。
表に出られることで、どんな店なんだろう?
という印象も消えようで、すごくよかったです」
と前向き。
「店内のスペースも限られているので、より多くのお客様に集ってもらえる
空間として店先が活用できるのはすごくありがたいです。」
と話す店舗も。
『協働』というのは、一回では確立・成立しない。
何度も何度も経験を積み重ねて、改善を試みて、
また次の『協働』の機会が生まれる。
対話の場を設けることも、その日は実りを感じないかもしれない。
でも積み重ね。対話の中で生まれた種が実る日が来るかもしれない。
「商店街の店舗の方々は日々の営業で本当に忙しい。
商店街全体のことや未来を考える時間をなかなか持てないのが実情です。
でも常にタッグを組める人や存在、団体を探しています。
もっとお客さんに商店街を通って欲しいという想いは
すごく強く持っているからです。
そのために"一緒に考えてくれる人"を探しているのです。
エリアマネジメンツさんには、そのような存在になって欲しい。
商店街という器を使って、
どんどんいろんな企画を生み出して欲しいです。」
と今後も積極的にコラボをしていきたい気持ちを鈴木さんは語った。
「こんにちは〜」と、
二子玉川商店街振興組合の事務所に足を運ぶ内野さん。
ランチを食べに行っても、相談話はあとをつきない。
エリアマネジメントってそういうことだ、と思った。
相談をして相談を持ちかけられて...
最初は、世間話かもしれない、
「制度を使ってみようか?」というきっかけかもしれない。
まちの一角から何が生まれるわからない。
その種を拾い集めて、対話を続けて、いつか実らせる。
その積み重ねなのだろう。
しかし、ただ実らせるだけではいけない難しさがある。
お金の生み出し方や効果も問われる。
そこは知恵を絞って、出し合って、まちの人と実らせていく。
その繰り返し。
今日はどんな種を内野さんは拾っているのだろうか。