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データから見える今季のRB大宮アルディージャの展望。「襲いかかる」とは?

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チップってやつです。


2024シーズン総括と見え隠れする課題

Jリーグより2024シーズンの総括記事が公開された。
記事はこちらより。

昨シーズン、大宮アルディージャは「負けてもおかしくない」という状況から逃れることができなかった。決定機を多く作られ、その結果が笠原のセーブ率(リーグ1位77.1%)に繋がった側面はある。しかし、そこにはデータでは見えない、シュートコースを限定するなどの個人戦術が機能していたからこその内容とも言える。
ここからは、データと私個人の主観を交えながら、昨季の大宮の戦いを振り返り、次のステップを考察していく。

✅️ピックアップポイント
・ディフェンシブサードではボールロスト率がリーグで1番低い
・アタッキングサードでのボール回しがリーグ1位

長澤監督が着手した、失点を減らすための"マインドセット"

まず着手したのは、守備の部分そのものではなかった、と私は考えている。

シーズン序盤から長澤監督は「昨シーズンの失点数」に特にフォーカスを当てていた。大宮アルディージャは2023シーズン、幾つもの失点を重ね、J3へと降格してしまった。

長澤監督は、マインドセットの改革として、23シーズンの失点シーンを幾度となく選手に見せたという話がある。新加入選手にも、当事者意識を植え付けたい狙いがあったのだろう。

では、具体的に何を植え付けたかったのか…?

それは、「大宮アルディージャは失点を多くするチーム」というネガティブなイメージを払拭し、「いかに失点をしないか」という意識を徹底させること、すなわち、失点に対するマインドセットの変革 だったのではないかと推測する。

そして、長澤監督が取った策は「いかにディフェンスで凌ぐか」ではなく、「いかに失点をしないか」という、より根本的な問題解決へのアプローチだった。

「J2では通用しない」の真意 ~守備戦術の課題~

24シーズンの大宮アルディージャは、果たしてディフェンスとしての仕組みづくりをどこまで完成させていたであろうか?

皆さんの答えを聞きたい。

しかし、シーズン中、多く聞こえたのは「これはJ2じゃ通用しない」という声だった。決定機を何度も作られ、守護神笠原が何度もチームを救った。前述したセーブ率77.1%の数字がそれを物語っている。

では、なぜそのような事態に陥ったのか。それは、「ディフェンスを構築して耐える」のではなく、「いかに失点をしないゲーム運びをするか」という、そもそも論点が異なるアプローチを選択したためだと考えられる。

長澤監督の解答 ~ボール保持の場所が鍵を握る~

あなたが監督の場合、「いかに失点をしない」ために何をするだろうか。

長澤監督の答えは明確だ。「ボールを持つのはアタッキングサードで。そうすれば、奪われたとしても決定的な失点シーンには結びつきにくい」というものだ。

この考えに基づき、大宮アルディージャはディフェンシブサードにおけるボールロスト数をリーグ最少に抑えることに成功。つまり、自陣ではボールを奪われていないというデータが、それを裏付けている。

大宮がなるべく素早く前進し、ボールを相手サイドに送り込みたいという意図は、試合の端々に表れていた。特に印象的だったのは、キックオフ直後のプレーだ。ボールをまずGKまで下げてロングボールを蹴る。せっかくのボール保持を放棄してまで、自陣ゴールからボールを遠ざけたのだ。

個人原則の徹底 ~シュートブロックとGKの存在~

しかし、ボール保持率を高めるだけでは、決定機を作られてしまう。そこで重要となるのが、個人原則であるシュートブロックだ。

チーム原則、つまりは戦術を植え付けるよりも先に、失点数を少なくし自信をつけるためか、身体でボールを受け止める原則を徹底させたのだろう。

沖縄キャンプ時には、特殊なトレーニングによって、手を使わずにシュートを止める技術を磨き、同時にシュートコースを限定する守備の仕方も取り入れた。これによって、元々シュートストップに定評のある笠原は、さらに頼もしい存在となったのだ。

このチームの原則「自陣ゴール近くでボールを持たない」と「身体でシュートを受ける」という個人原則の融合が、大宮の失点数を軽減させた。

しかし、ディフェンシブサードにおける、より緻密でクオリティの高い戦術は、まだ確立されていなかった。そのため、「決定機を作られたが、相手のクオリティが低かったおかげで助かった」という印象が強まってしまったと、私は考えている。

今後の大宮には、まさにそのディフェンシブサードでの戦術、もしくは相手チームに前進を許さないボール非保持時の攻撃の仕方、この両方のクオリティアップが必要不可欠だ。

ボール非保持時の攻撃 ~レッドブルグループの哲学~

そこで、「前進をさせないボール非保持時の攻撃」という言葉に着目したい。この戦術を体現しているクラブ、そしてそれを率いていた元監督をご存じだろうか。

何を隠そう、「レッドブルグループ」「ラングニック」「クロップ」である。

この3つには、大きなシナジーがある。それこそが「ボール非保持時の攻撃」だ。

ドイツサッカーにおいては、「ボールを持つ=攻撃」「ボールを持っていない=守備」という枠組みでは捉えないと言われている。これは、BoS理論の本にも書かれており、また『モダンサッカー3.0』では筆者が「新たな着眼点」と評しているように、まだまだ一般的ではない考え方の一つだろう。

日本で人気の高いスポーツである野球は、攻撃と守備が明確に区別されている。そのため、日本人のDNAには、攻撃と守備を繰り返すという思考が根付いている、と読んだことがある。

しかし、サッカーはそれとは異なる。PK戦ではないのだ。

サッカーの捉え方 ~4局面で考える重要性~

一般的に、サッカーは「攻撃→守備→攻撃…」と繰り返されるものだと考えられがちだ。その考え方も悪くはないし、私自身、その視点でサッカーを見るのは楽しい。しかし、もっと楽しむためには、

「ボール保持→ネガティブトランジション→ボール非保持→ポジティブトランジション→ボール保持…」という、4局面で考えると、面白みが増す。

さて、このnoteを読んでいる方の中には、「トランジション」とは何か?と思われる方も多いだろう。補足すると、「転換」と訳せるが、一般的なサッカー用語では「切り替え」の方がわかりやすい。

「ポジティブトランジション」はボールを奪った際の切り替え、「ネガティブトランジション」はボールを奪われた際の切り替えを指す。

注目すべきは、「攻撃」「守備」という言葉がないことだ。

ボールを持っていることが攻撃なのか?

ボールを持っていないことが守備なのか?

あなたはどう思うだろうか。

モウリーニョの戦術から見る、攻撃と守備の曖昧さ

私が好きだった監督に、ジョゼ・モウリーニョがいる。

彼は、基本的には自陣に引いて守り、ボールを奪ってからの速攻を得意としていた。相手にボールを渡し、自陣に招き入れてカウンターを仕掛けるのだが、その際、当然ボールは持っていない。

それは守備だったのか?

また、モウリーニョはポゼッションサッカーを展開することもあった。なぜなら、ボールを持っていれば、相手はゴールを狙えないからだ。ポルトとマンチェスター・ユナイテッドの試合で、あのサー・アレックス・ファーガソンが「ボールを持っているのに攻めてこない」と話した、とどこかで読んだ記憶がある(勘違いかもしれない)。それは、失点をしないために、ボールを持つことを選択した戦い方だった。

さて、それはボールを持っていたが、攻撃だったのか?

RB大宮への期待 ~エクストリームプレッシングの可能性~

話を戻そう。先述の三者(レッドブル、ラングニック、クロップ)は、「ボール非保持時の攻撃」を展開する代表格だ。

レッドブルとラングニックは、相手にボールを渡してでも、ゴールに近い位置でボールを奪い、得点することを狙った。クロップは、グアルディオラのボール非保持時の動き方を研究し、一大ムーブメントとなったゲーゲンプレスへと発展させた。

彼らは、ボールを持っていない時に、ゴールを奪うための守備を実行する代表格であり、今後の大宮が進むべき方向性を示唆していると、私は考える。

つまり、大宮のこれまでの戦い方をベースに、発展させやすいシステムにしやすいということだ。自陣でボールを持たず、相手陣地でボールを回したい。たとえボール非保持の状態であっても、アタッキングサードにボールを追いやりたい。

そこで、有効な攻撃パターンの一つが、「エクストリームプレッシング」もしくは「ゲーゲンプレス」になるのではないかと推測する。

両者とも、アタッキングサードでボールを奪い、得点することに特化している。そして、そのノウハウを、大宮アルディージャはJリーグで最も手に入れやすい位置にいる。それが、"RB"を冠するクラブの宿命でもあり、私個人としては、そういった戦い方を見てみたい。

これは結果的に、相手に前進を許さない守備となり、これまでの積み上げを発展させる継続案とも考えられる。

おまけ:攻撃面の展望 ~戸田コーチの役割とは?~

また、攻撃面に関しても、多角的な戦術が必要となるだろう。

相手が非保持型のチームだった場合、ボールを預けて奪うという攻撃が停滞する可能性も考えられる。

そこで、川崎フロンターレから加わった戸田光洋コーチの存在が重要になってくる。大宮が好むアタッキングサードは、スペースが少ない局地戦になる。そこでは、川崎仕込みの「止めて、蹴る」の技術、その発展型が必要になるだろう。戸田コーチの招聘には、そういった狙いも含まれている可能性がある(おそらく、もっと他の明確な理由があると思われるが、それはまた別の機会に考察したい)。

長澤監督の言葉と、RB大宮アルディージャの未来

話が再びそれたが、思い出してほしい。

長澤監督の言葉だ。

「すべての試合で襲いかかります」

レッドブル流のサッカー。相手にわざとボールを持たせ、弾き飛ばすほどのパワーでプレスを仕掛け、ボールを奪い、フィニッシュまで持っていく。

それが、次のステージの大宮アルディージャ、いや、RB大宮アルディージャ の『失点をしない』ための仕組みづくりの一つになるのかもしれない。

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