20210717 渡らないハクチョウ

自宅のほど近くの河原の高水敷に、今春渡ることのなかったハクチョウ(注1)が1羽住み着いている。ハクチョウは鳴き声を上げることもなく、ゆっくりとあたりを見回しながらひっそりと草むらの中に佇んでいる。冬の雪原では目立たないからだも、緑の草原の中では白さがひときわ目立っていた。

ひと月ほど前に、そのハクチョウは少し下流の堰に移動したと思われ、そこで別のハクチョウと合流して最近は2羽一緒にいるところを良く見かける。明らかに1羽の時よりも、堂々とした態度になっている。仲間がいれば周囲の警戒の時間も分散できるし、心理的な安心感もひとりの時とは全く異なるものになるのだろう。

なぜ渡らないハクチョウがいるのか。外傷、病気、老化による運動機能の低下、といった理由が思い浮かぶ。冬に大群でけたたましく鳴きかわすのとは真逆のひっそりした姿に、同情心のようなものも湧いてくるが、とりたてて飢えて衰弱しているように見えるわけでもない。どうやらハクチョウは渡らなくても自らの命を繋いでいくことはできるようだ。

そこで疑問なのが、渡らなくても命を維持できるのに、なぜ渡り鳥はより過酷と思われる渡りを行うのか、ということ。繁殖のみが目的なら、繁殖に参加できない個体がもっと渡りに参加しないはずではないか。

渡り鳥が渡るのには文化的な側面があるんではないか、と思ってみたりもする。例えばある野鳥を人間が飼いならしたとしても、彼らは渡りを行いたいと思うだろうか?そういう事例を私は知らないので何とも言えないけれども、たぶん渡らないのではないだろうか。

注1 オオハクチョウかコハクチョウか識別できていないのでハクチョウと書きました。渡らないコブハクチョウではないです。

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