始まる世界 最終話(仲村家・アーカイル家)
生命の樹ではみんながそれぞれの場所に足を運び、それぞれの島を創り出している時、ジンと一輝の2人は、真剣な話をしていた。
ジンさん…わかっているよね…
何がだ?
もう、後戻り出来ないからね
俺がそんな女々しい奴だと思うか?
うん…
そうか
まだ、みんなのことを想っているんだね
想わない訳がないだろ…
でもね、ジンさん
わかってる。俺達は、何度も止めたのにそれをやったのはあいつらだってことだろ
はぁ…いい加減にしてくれないかな…聖人様…もう、奴らは、貴方が知っているあの時の人達じゃないんだよ
だからと言って…だからと言って正しい奴まで一緒に殺して良い理由にはならない
甘いよ…どれだけ甘いの…貴方は…そんなんじゃ、何も守れない…そして、殺される…誓ったんじゃないのかい、2度と同じ悲劇、惨劇を繰り返さないって…それにこれも教えたよね?みんなは、連れて行けないって…
時間が欲しい
もう、無理だよ…時代がそれを望んでいる。新しい時代が聖人様を呼んでいるんだよ。このままだとまた世界は、混沌の闇に逆戻りになる…ジンさんが守りたい人達も殺される…それで良いの?
一輝
……なるべく、ジンさんの要望には応えて行くつもり…でもね…これは、ある1種の「けじめ」なんだよ…僕もいつまでも優しく出来ないから…
パンドラの箱か
かもね…ただ、僕もアーカイル家として…ユダヤとしての役目を果たさなきゃいけない…一族の人としての心を救うために…そのためにはあの世界の人口の半数以上の犠牲が必要になる…増え過ぎたんだよ…減らさないと自然が持っている石油も金も無限にある訳じゃないから…これは、遥か昔、自然と人間(ひと)の間に交わされた約束…自然を守るためにはこうするしかない
そうだな
なら、僕は、僕がこの心が正しいと感じたことを貫き通させてもらうよ
その先に…誰がいるんだ
さぁね…
そう言うと一輝は、左手首に着けてあるトライフォンでどこかと通信を始める。
こちら、一輝…予定通り、こちらにあれらの転送をお願い
しばらくすると天(そら)にアーカイル家の家紋が描かれた巨大な魔法陣が出現するとそこから2機の機体が出て来る。
そして、その2機は、一輝とジンの前にゆっくり降り立つ。
黒騎士
聖人様
一輝は、自機のphantom(ファントム)に乗り込む。
それじゃ…行って来るね…時間は、掛かるけど…みんなの機体がやって来るから誘導をお願いね…
わかった
そう言い残すと一輝は、phantomと一緒にどこかに向かって飛んで行くのだった。
なぁ、黒騎士
はい
なんで、お前が生まれたと思う?
自分が生まれた理由は、あの人達との約束を果たすためです
そうか…
何を考えていますか、聖人様
何を考えていると思う?
わかりません。ただ、もし、わかるのであれば……
そして、phantomに乗った一輝は、アーカイル家の家紋が展開されている所にやって来る。
ふぅ…
Master?
OK...NO Problem
Really?
Yes...But...He's too kind that anyone else...what do you think...
Yes. But...The darkness he hides inside is terrifying
Maybe it's just a matter of time...will he awaken as the seventh king of darkness or as a holy god...
Well,in any case,for us,it's just a win for us.
Is that really the case?
Why?
His potential is unknown.That's more than any saint that has ever existed in that world in the realm of nature
………nature
まぁ…いずれにせよ…今は、僕の役目を果たすよ…始めるよ、phantom
ヤー
そう言うと一輝は、何かをボソッと唱えると眼が赤くなり、瞳は、蒼色に変わる。
そして、一輝の正面や周りにあったモニターや機械の画面が全て真っ赤に染まり、そこには黄色でALERTと表示され、正面のモニターには巨大な人間(ひと)の単眼が現れる。
それと同時にphantomの姿が別の巨大な白金色の機体に変わる。
しかし、その機体には、足が無く、浮遊し、両腕は、異様に発達した長い腕をしていた。
その機体が何も無い空間に出ると大陸からだいぶ距離を取った場所にやって来る。
さぁ、おいで、「楽園」(エデン)よ
その機体の両腕がゆっくり動き、両手の平が天(そら)に向けられると天に巨大な亀裂が入り、その機体が左手で拳を作ると天が破壊され、裂け目の中から巨大な歪邪心空間が出現する。
そして、しばらくするとその空間の中からその裂け目より遥かに巨大な何かが出て来ようとする。
仕方ないね…
それを見た一輝は、天に伸ばしている右手をゆっくり下ろして行くとそれとシンクロする様にその巨大な何かも空間を削りながら出て来ようとする。
そして、右腕が完全に振り下ろされるとそこから現れたのは生命の樹の島とは真逆の真っ黒で悍ましく、禍々しい姿をした島でその中央には真っ黒で巨大な中世の城が聳え立っていた。
そう、それは、まるで人間(ひと)が持つあらゆる負の感情、欲望が入り混じり、混沌(カオス)となったかの様に。
一輝の近くにその島がやって来る。
とりあえず…
一輝は、生命の樹の方を向くと右手の人差し指の先に黒い光を集め、その方向に向かって人差し指を伸ばすとそこから黒い線が飛んで行く。
その線が生命の樹の島に入る寸前で止まると黒い魔法陣が展開される。
そして、その人差し指をほんの少し動かすと魔法陣が一瞬だけ歪みを見せ、元の姿に戻る。
これで良い…さて…行こうか、グラシャボラス
アールスギエラ
そして、一輝を乗せたグラシャボラスがその島の中に入って行くと今まで真っ黒だった島は、色を取り戻したかの様に色鮮やかな島の姿に変わるのだった。
その様子は、ジンだけがその目に焼き付けていた。
一輝…
聖人様
わかってる
ジンと黒騎士の後ろにはジンの世界から転送されて来たアルバトロス、シリウス、Guardian(ガーディアン)、リッパー、平等院鳳凰、久遠…そして、彰が操るバーサーカーが立っていた。
彰、それを雅樹の島に届けてくれ
それは、良いが、ちゃんと格納庫が出来ているんだろうな?
雅樹のことだ、心配は、いらない
なら、良いんだが。それじゃ、持って行くからな
頼む
そう言うと彰は、各機体に搭載されているAIに指示を送り、雅樹が創った島へと向かうのだった。
さて、これで準備は、整ったな
聖人様、1つだけお聞きしても良いか?
なんだ?
仲村家のことについて
俺のこと?
ええ
俺のことはどうでも良い。まずは、みんなをここに呼び戻すことが大切だ
そんな話をしているとジンの脳内に一輝の声が聞こえて来る。
みんなは、連れて行けないよ…さぁ、歪み消えた理論(モラル)、愚かになり、自然の頂点に居座る人間(ひと)を名乗る生命体共に審判を下す刻が来ました。遥か昔に自然と人間(ひと)の間に交わされた約束を果たす刻です。さぁ、日本の守護聖人様、ご命令を
…………
聖人様
わかった。これより……