生徒会の一族第2話「蠢(うごめ)く夜」

無事に生徒会の1員になった薩真と賀雄であったが、生徒会会長である真江から渡された1枚の紙…そこに書かれてあったのは5つの問いが書かれてあった。

※どんな問いだったかは別紙にあり。

そして、無事に生徒会からの洗礼を受けた2人は、机の上に顔を伏せていた。

賀雄「ち、ちくしょう…こんな醜態晒すなら…あんなこと言うんじゃなった…」

薩真「あのさ…賀雄…俺、巻き添えなんだが…」

その紙をまじまじと見る真江は、時折、ニヤニヤと笑みを浮かべ、ドン引きの顔をする。

そして、その紙を副会長の葵に手渡すと葵は、左手で受け取り、紙に目を通し始める。

真江「はい、2人ともご苦労様、これで無事に生徒会の1員よ」

薩真「こんなこと書かせて…何が目的だよ」

真江「何の話よ?」

薩真「どう考えたって、ただの個人情報晒しじゃないか」

真江「あら、ただの自己紹介じゃない」

薩真「あれのどこが自己紹介なんだ…特に最後の問いは、あれなんだよ」

真江「人の多くは、第1印象で決まるわ。就職面接やオーディションでもそうでしょ?そして、次に学歴や職歴、資格など…最後に対話で相手がどう言うのかを決める。現代社会において常識の範囲、ほとんどの学生って、甘く見られているのよ」

薩真「甘く見られている?」

真江「ええ、普通のそこら辺にある学校で教えられていることなんてたかがしれている。教えられたことだけやって、テストで良い点取って、単位を取得する。就職面接の練習だって決められたカリキュラムをやりこなすだけのロボット…それを人間と呼ぶのには値しないの」

賀雄「結構なこと言うじゃねぇか…まるでその目で見て来たかのようだぜ」

真江「それじゃ、なんでこの国における学力及び就職率、出生率が低いのか…わかる?」

薩真「なんでって…」

真江「貴方達、そんなことも知らないで生徒会に入ろうとしたの…正気の沙汰じゃないんだけど」

薩真「言いたいこと言いやがって…」

真江「桜華、お願い」

その詞に反応したのは仙理の頭を撫でていた女子生徒だった。

桜華「わかったわ。その問いに関する答えは、ただ1つ…幼い時からそう言うことに関して勉強してこなかったから」

薩真「それだけなのか」

桜華「ええ、これだけで充分なの。それじゃ、2人に聞くわ。この世で生きて行くために必要な3つのことは、何かわかる?」

賀雄「なんじゃそりゃ? 金か?」

桜華「間違いじゃ無いけど、ど素人の発言ね。それじゃ、2つ目は?」

薩真「ええっと…酸素?」

2人の回答に仙理を除く3人が大きなため息を吐く。

葵「お2人さん…それ、マジで言ってるのか?」

真江「先が思いやられるわ…」

桜華「ここから始まりって、ことね…」

仙理「…………」

真江「今日は、ここまで。2人ともお疲れ様、最後にこれ、持って帰って必ず覚えて来て。2人がどの役員に着くかは明日決めるわ」

薩真と賀雄は、真江から手渡された紙を受け取り、その内容を確認する。

薩真「生徒会の…」

賀雄「黙示録?」

真江「ええ、これを明日までに頭に叩き込んで来て」

薩真「マジかよ…」

※生徒会の黙示録は、別紙にあり

真江「あと…明日から2人が向かう教室は、学園の外にある。第2校舎だから」

賀雄「第2…校舎…」

薩真「そんなのがあるって、設定にも書いてなかったぞ」

真江「なんで設定の所で書いてあるのが全てだと思うわけ?そんなの普通過ぎ、何が楽しいのよ」

賀雄「た、確かにな…」

薩真「お、おい、納得すな」

桜華「この世において決められた線路の上を歩いて良いのは大富豪か国家権力者ぐらいよ。それ以外の奴らは歩いてはいけない。これが世界の常識よ」

薩真「それは、流石に言い過ぎじゃないか…」

葵「それじゃ、2人に聞くけどよ。あの時に真江やあたし、秋河に会ってなかったらこの出会いは、無かったと感じねぇ?」

薩真「まぁ…それは…」

真江「そして、賀雄くんが私に対してあの交渉を持ち掛けなかったら…そう、これらの行動は、全て決められた路線から逸脱した行為と呼べる」

賀雄「まさか…全て計画通りってことか…」 

真江「そうかもね。それじゃ、2人ともよろしくね。教科書とかは教室で渡されるわ」

そう言うと薩真と賀雄は、鞄を持って異世界とも呼べる生徒会室を出るといつもの光景が広がっていた。

薩真「なぁ…賀雄…」

賀雄「あぁ…俺達…とんでもねぇ所に手を出しちまった様だぜ…」

薩真「どうすんだよ…」

賀雄「お、俺に言うなよ…」

薩真「あれもこれも全て仕組まれていたって思うと…もう、この先、戦って行ける気がしない…」

賀雄「まぁ、もう、乗っちまった船、今更降りる訳には…いかねぇよな?」

薩真「俺は、今からでも降りたい…」

その詞を聞いた賀雄は、薩真の肩に乗っかる。

賀雄「良いじゃねぇか、あの…誰だっけ?あの髪の長い女子生徒…」

薩真「確か桜華だったかな」

賀雄「そいつが言ってただろ。決められた路線を歩いて良いのは大富豪か国家権力者のみだって」

薩真「それが?」

賀雄「俺達は、今、それに向かって走り出したってことさ」

薩真「ポジティブだな…ちゃんと先のこととか考えてるのか?」

賀雄「いや、まったく」

その詞に大きな溜め息を吐く薩真だった。

薩真「(相方がこいつで大丈夫か、俺…)」

賀雄「とりあえず、俺は、これからバイトだから先に行くぜ」

薩真「ああ」

そう言うと賀雄は、そそくさにどこかに向かって歩いて行くのだった。

1人になった薩真は、生徒会室の扉を見る。

薩真「(生徒会…)」

薩真は、手渡された生徒会の黙示録を見て、それを鞄の中に入れて家に帰るのだった。

〜生徒会室〜

薩真と賀雄がいなくなった生徒会室では4人とある1羽を加えた密会が行われていた。

真江「あれがね…」

葵「これ、見たけど…どう考えても普通の奴にしか見えないんだけど…そこら辺は?」

桜華「最初は、誰だってそうよ。彼らは、まだ始まったばかり…これから経験を積ませるの」

仙理「悪い人…じゃない…」

真江「何を考えてるのよ…理事長は」

葵「まあまあ、真江、これでも食べて…」

そう言って葵が机の上に置いてある個別に包装されたクッキーを手に取り、真江に渡そうとした時、何が葵の前を勢い良く通り過ぎる。

手元を見ると持っていたはずの包装されたクッキーが無くなっていた。

葵「なんで、あいつは、いつもあたしのを取って行くんだよ…」

葵がある方向を見るとそこにいたのは葵が持っていた包装されたクッキーを口に咥えている1羽の鷹がデスクトップの上に止まっていた。

鷹「クワァ」

※続きは、有料版、生徒会の一族(裏口)にて公開

〜神原家〜

学園から帰って来た薩真は、自分の部屋に戻り、制服を脱ぎ捨て、パジャマ姿に着替えると布団の上で仰向けになって寝転がり、今日の出来事を思い出していた。

薩真「転校初日に…訳のわからない出来事ばかり起きて頭が痛い…あの動物は、どこに消えたんだ…確か生徒会長は、愛されて罪が許されたから消えたって言ってたな…愛されて罪が許されたら消える…そんな宗教みたいな…馬鹿馬鹿しい…」

そう言うと薩真は、布団から起き上がり、部屋を出て1階に向かう階段の途中で何かの気配を感じたのか後ろを振り返るもそこには誰もいなかった。

薩真「気の…せいか」

そう言って薩真が1階に降りてリビングに入ると壁から人間の単眼球が現れ、左右を確認する。

そして、静かに壁の中に消えて行くのだった。

冷蔵庫から低温殺菌と書かれた牛乳のパックを左手で取り出し、近くにあったグラスを右手で持つと左肘で冷蔵庫の扉を軽く突き、冷蔵庫の扉を閉める。

そして、牛乳パックとグラスをテーブルの上に置くとグラスの中に牛乳を注ぎ、ある程度入れたら牛乳パックをテーブルの上に置いてグラスを持ち上げて飲み始める。

薩真「ん…ん…ふぅ…」

牛乳を飲み終えた薩真は、グラスをテーブルの上に置くとリビングに飾ってある額縁に納められた1枚の絵を見る。

薩真「光と闇…」

そこに描かれていたのは背中から白い翼を広げて白い鎧を纏い、白馬に乗った騎士と黒い翼を広げて黒い鎧を纏い、黒馬に乗った騎士が互いの剣を交え、その上には北斗7星とその周りを13個の星が囲んでいた。

そして、白い鎧の騎士の後ろには太陽が描かれ、黒い鎧の騎士の後ろには三日月が描かれていた。

薩真「幼い頃から見て来たけど…ただの落書きにしか見えない…少し腹が減ったな」

薩真は、牛乳パックを再び手に取りってグラスに注ぎ、冷蔵庫の扉を開けて冷蔵庫の中に入れると何か食べ物を探し始める。

薩真「えーっと…玉ねぎにセロリ…ピーマンに蓮根…豆腐に納豆…卵…レモンに葡萄…ヨーグルト…緑茶に麦茶か…料理をしようと思っても…目玉焼きぐらいか…」

薩真は、冷蔵庫の扉をゆっくり閉める。

薩真「仕方ない…買い出しに行ってくるか…」

ちなみにここから商店街のスーパーまで約30分は、かかる。

薩真は、渋々自分の部屋に戻り、私服に着替えると財布と家の鍵を持って外に出ると鍵を閉めて商店街に向かって歩いて行くのだった。

この地域にはコンビニと言う物が存在しない…いや、建ててはいけないと言う市の条例があるらしい。

そして、公共の交通機関と徒歩、ベビーカーを除く交通手段は、一切禁止とされている。

理由は、人間の生命(いのち)を脅かす物だからだそうだ。

かつて、この市では飲酒などによる悪質な自転車や乗用車による事故が多発して幼い子供達の生命(いのち)が犠牲になると言う悍ましい事件が起き、未来を護るためと作られた。

でも、それを良くと思わない連中が議会を潰しにかかっていたが、そこにある財閥が介入して物事は、収束した…しかし、その潰そうとした連中が今もこの市のどこかで息を潜めていると言う噂もある。

そして、ようやく商店街に到着してその中にあるスーパーマーケット四季にやって来る。

薩真「あー…遠い…とっとと買い物して帰ろ…」

スーパーの中に入り、買って出て来る頃には外は、夜になり、スーパーの袋を左手に来た道を戻って行くのだった。

しばらく歩いていると壁に貼られてあるの安全第一のポスターの前を向いて通過する。

そして、さらにしばらく歩いていると同じ安全第一のポスターが現れる。

薩真「(あれ…このポスター…さっきも…気のせいだよな)」

薩真は、ゆっくり歩いて行くと再び安全第一のポスターが貼られた壁が現れ、そのポスターを通り過ぎた所で歩みを止める。

薩真「おかしい…さっきから同じ所を歩いている気がする」

薩真が周りを見回すも誰もいなかった。

その時、どこからか子供の声が聞こえて来る。

「みぃ〜つけた」

薩真「誰だ!」

その瞬間、右手の甲に激痛が走る。

薩真「ぐっ!こ、この…痛みは…!」

そう、忘れもしない夢の中で感じたあの痛みだった。

あまりの痛さに買い物袋を地面に落とし、左手で強く抑える。

それと同時に近くにあったカーブミラーにヒビが入り、粉々に砕け散る。

薩真「い、一体…なにが!」

すると、闇の中からゆっくり人間(ひと)らしき者が3人現れる。

薩真「な、なんだ…」

???「ウゥ…」

そいつらは、薩真に向かってゆっくり歩いて来る。

明らかに危険だと感じた薩真は、その場から逃げようと反対側を見るもそこにも同じ様な奴が3人立っていた。

薩真「囲まれた…」

そして、その中の1人が口を開き、鋭い歯を見せながら薩真に向かって襲いかかる。

薩真「ひぃ!」

薩真は、目を閉じたその時だった。

薩真とその人間(ひと)らしき者の間に黒装束を纏った奴が割り込むとその人間(ひと)らしき者の左頬を左手の裏拳で思いっきり殴る。

殴られたそいつは、側にあったコンクリートの壁に頭を突っ込むとそれを見た他の奴が怯え始める。

薩真「あ…あんたは…」

???「…………」

黒装束は、まず目の前にいるそいつらに向かって走り出すと次々と蹴り飛ばし、殴り倒す。

それが終わると次は、薩真の後ろにいるそいつらを同じ様に蹴り飛ばしては殴り倒すとそいつらは黒い霧となって消えて行くのだった。

その黒装束の背中には赤色で破の文字が刻まれていた。

そして、黒装束の奴が今度は、薩真の方をゆっくり振り向くと薩真は、まだ痛む右手を抑えていた。

それを見た黒装束は、今度は、薩真に向かって走って行く。

薩真「く、来る…!」

黒装束が薩真に向かって殴りかかろうとした時、2人の間に1つの人影が割り込んで来る。

割り込んで来た奴が持っていた刀が納められた鞘の部分でその拳を受け止める。

薩真「だ、誰…」

薩真の目の前にいたのは紅橙色の戦闘服に身を包み、紅色の長髪をした1人の少女だった。

???「はあぁ!」

その少女が黒装束の拳を押し返すと黒装束は、空中で身体を捻り、体勢を立て直すと地面にゆっくり降り立つ。

薩真の前にいる少女は、鞘の中から刀を引き抜くと黒装束に刃先を向ける。

???「ようやく、現れたわね」

???「……………」

それを見た黒装束は、右手の中に何もない空間から剣を構築し、実体化させる。

薩真「剣が…」

???「やっぱり…」

???「そこをどけ…お前に用は、ない」

???「あんたに用が無くても…私には用があるのよ!」

そう言うと紅い長髪の少女は、黒装束に向かって刀を構えながら走って行く。

それを見た黒装束は、剣に黒紫色の光を纏わせてその光を紅い長髪の少女に向かって飛ばす。

少女は、飛んで来た光を斬り裂くと黒装束に向かって刀を突き刺そうとするも何かに遮られる。

???「くっ…」

???「無駄だ…」

今度は、黒装束が右手を前に突き出して少女を押し返すと少女は、刀を地面に突き刺して吹き飛びを緩和させる。

???「つ、強い…」

???「貴様も知っているはずだ。そいつが特異点になろうとしていることを…奴らが現れたのはそいつの魂を喰らうためだ」

薩真「特異点…」

???「それぐらい知ってるわよ」

???「奴らに奪われるぐらいなら…ここで始末した方が良い。どうせ、今までの奴らと同じで途中で食い殺されるだけだ」

???「今度は、護れる」

???「その今度は、何度目の今度だ? もう、良い加減…聞き飽きた。そんなお前らが特異点の抑止力になれるとは到底思えない。たとえ、抑止力になれたとしても…暴走させるだけだ」

薩真「(特異点…抑止力…暴走…一体何のことなんだ…何を話しているんだ…)」

???「自我が覚醒する前に処刑する」

???「そんなことは、させない!」

その時、少女の背後から一筋の水色の細い光線が飛んで来ると少女の右肩の上を通過して黒装束に向かって飛んで行く。

それを察知した黒装束は、身体を左に反らし光線を避けるも装束に小さな穴が空く。

???「……………」

黒装束は、そのままどこかに向かって逃げて行くのだった。

薩真「逃げた…」

それを見た少女は、刀を鞘の中に納めると左腰に装着する。

???「君、大丈夫かしら?」

薩真「は、はい…」

???「アカネ」

2人が声のした方を向くとそこにはスナイパーライフル銃を片手に蒼翠色の戦闘服を身に纏い、蒼色の短髪をした少女がゆっくりこっちに向かって歩いて来ていた。

アカネ「援護、ご苦労さま、アオナ」

アオナ「まったく…単独で行動するなって、司令官からあれほど言われてたのに…どう言うつもり?」

アカネ「一般人が奴らに襲われてるのに見過ごせる訳ないでしょ?」

アオナ「それだけかしら」

アカネ「何が言いたいわけ…はっきり言いなさいよ」

アオナ「遠くから見てたけどあいつらは、奴が倒してその後にアカネが来てたわよね」

薩真「(遠くから見てたんだったら援護してくれよ…)」

アオナ「司令官から言われているでしょ、あの黒装束の奴には関わるなって」

アカネ「わかってるわよ、そんなこと!」

アカネの怒号で場の空気が凍てついてしまう。

3人の間にしばらく静寂が続く中で口火を切ったのは薩真だった。

薩真「あ、あの…」

アカネ「なによ…」

薩真「俺…帰って良いですか?」

アカネ「だめよ」

薩真「(ですよねー)」

アカネ「戦闘規則第6条1項により、貴方をこれから重要参考人として身柄を保護します」

薩真「せ、戦闘規則って…なに…そもそも、こんな武器を持ってたら銃刀法違反で捕まるんじゃ…」

アオナ「その心配は、無いわ。貴方がいるこの空間は、歪邪心空間で現実とは別の時空にいるの。この空間内では時間軸が崩壊してるから現実での時間とは別…ここでの1秒は、向こうの0.0001秒になるの」

薩真「わ、歪邪心空間…あ、頭、お菓子に(おかしく)なるで」

アカネ「あぁ…ダメだこいつ、やっぱり、殺そう」

薩真「あー!今、殺そうとか言ったーひでぇー」

アカネ「あんたが面白くないことを言うからでしょうが」

薩真「はい、すいませんでした」

アカネ「まったく…アオナ、彼、特異点なの」

アオナ「その様ね。その右手の甲に浮かんでいる刻印からとても強い念を感じるわ」

薩真「お、俺は、これからどうすれば…買い物の帰りなんだが…」

アカネ「それじゃ、明日の夜、楠公園に来てくれないかしら」

薩真「わ、わかった…」

アオナ「まずは、ここから脱出しないとダメね」

そう言うとアオナが片手に持っていたスナイパーライフル銃の銃口を安全第一と描かれたポスターに向ける。

そして、そのポスターに向かって銃爪を引くと蒼弾が発射され、ポスターに直撃する。

蒼弾が直撃したポスターからは黒紫色の液体が噴出し、奇声を上げながら黒い霧になって消えて行くのだった。

薩真「ポ、ポスターから…血が…」

アオナ「あのポスター自体が生命体の判定だったのよ」

薩真「ポスターが…生命体…つまり、意識を持ってるってこと…」

アカネ「ええ、奴を倒したことによって、歪邪心空間が無くなるわ。あたし達プレイヤーは、この空間内でしか存在出来ないの。また、会いましょう」

薩真「ちょっと待って、この空間って…何なんですか? プレイヤーと言うことはゲームかヴァーチャルか何かなんですか?」

アオナ「まぁ、今は、その認識で良いわ」

アカネ「良いわね。明日の夜、楠公園に来て」

その詞を残してアカネとアオナは、空間が消えると同時に白い光になって消えて行くのだった。

薩真「消えた…」

薩真は、周りを見回すとそこは歩いて来た道に戻り、穴が空いていた壁も無くなっていた。

薩真「幻…だったのか…」

薩真は、激痛が走っていた右手の甲を見て、握ったり開いたりする。

薩真「(何にも…ない。そうだ、あのアカネって、奴が明日の夜、楠公園に来いって…行かなかったらどうなるんだろうなw)」

しばらく考えた後に薩真は、手放した買い物袋の取っ手を握り、ゆっくり持ち上げて家に向かって歩き始める。

薩真「てか、なんで、あいつ、楠公園のことを知ってるんだ…まるでこの地域に長いこと住んでたかの様に…あっ、卵…」

薩真が買い物袋の中を覗くと…。

薩真「………まっ、割る手間が省けたからいっか…こっちの1秒は、向こうの0.0001…時空学か何かだろうか…でも、腹減ったな…」

そんなことを考えながら帰路に着き、家に帰って来ると買い物袋を置いて洗面台に向かうと手洗いとうがいを終わらせる。

そして、台所に戻って来ると買ってきた食材達、冷蔵庫にあった食材達と割れてしまった卵を使って料理を作って行く。

料理を作り終わると料理達を先にテーブルに持って行き、朝から保温状態からにしていた釜のなかから白飯を茶碗に移してテーブルに持って行く。

再び台所に戻ると使った料理器具達をお湯で洗い、食洗機に入れて朝の分と一緒に洗い始めるのだった。

そして、テーブルに戻るとPCの電源を押して、立ち上がるまでゆっくり料理を食べ始める。

薩真「頂きます」

両手を合わせて料理を食べているとスマホに1通のメッセージが届く。

薩真は、傍に置いていたスマホを手に取り、画面を確認するとさっき呟いたSNSアプリDに1のマークが出ていた。

薩真「(俺のフォロワーは、賀雄と変な奴が勝手にしてる奴を含めて4人…俺の呟きは、他の奴から見たら全く持って面白く無い。そんなのに必ず返信してる奴…それは…)」

薩真「やっぱりか…」

画面に映っていたのはさっきアップした料理の画像とコメにライオンのアイコンと東堂 賀雄と書かれた奴がコメをしていた。

「ま〜た、1人飯かよwてか、毎回思うんだけどよ、お前もバイトしたら良いじゃねぇかw」

まだ、呟いて10分もしない内にこの何気ないコメに2万5000人の閲覧者とグッド5000人…リコメが約3500人…コメは、1000を超えている。

薩真「本当に不思議な奴…どうやったらこうなるんだ…俺がバイトしたら誰がこの家の面倒を見るんだよと書いて返信しておいた」

そして、立ち上がったPCで音楽をかけてゆっくりな時間を過ごし、食べ終わると食器を台所に持って行き、水で軽く洗い、中身が空になった釜の中に水を浸す。

そして、風呂場に行き、給湯を押して自分部屋に戻ってYarTubeで動画を見ながら風呂が沸くのを待つこと50分後、風呂が沸いた知らせであるアナウンスが流れる。

薩真は、パジャマと下着を持って風呂場に向かい、脱衣所で服を脱ぎ、近くにあった洗濯機に投げ入れると風呂場に入って行くのだった。

風呂が終わり、身体を拭き、ドライヤーで髪を乾かすと先に歯を磨き、そのまま自分の部屋に戻る。

そして、今日という日が終わりを迎えるのだった。

自然科がある第2校舎に向かい、賀雄と一緒に教室に入ると1枚の紙が机の上に置かれてあり、そこに書かれてたのはたった2文字の詞だった。

「休学!」

そして、言われた通り生徒会室に行き、役員を貰った。

その日の夜、私服姿で楠公園に足を運ぶ。

薩真は、今、自分が置かれている状況に気が付く。

薩真「てかさ…夜の公園に男が1人で立ってたらさ…職質案件だよな…」

そう考えているといきなり後ろから声をかけられる。

???「ちょっと、そこの君」

薩真「(きたーーーーわぁーーーー!)」

薩真が恐る恐る後ろを振り返るとそこには警察官ではなく黒服の男性が立っていた。

薩真「(連れて行かれるーーーどっかの組に連れて行かれるーー)」

薩真「は、はい、な、なんでしょう」

???「そう固くならないでくれ。決して怪し者では無い」

薩真「(りむーこのシーンでこの演出で怪しい者では無いと豪語するの、りむーーー)」

???「実は、ある人から君を身柄を保護する様に言われて来たんだ」

薩真「(おわたー俺の人生おわたー短かったー)」

???「それでは、薩真様、こちらへ」

そう言うとその黒服の男性は、滑り台が付いているジャングルジムに向かって歩いて行く。

そのジャングルジムの前に立つとジャングルジムのある鉄の棒を掴む。

すると、滑り台の地面に降り立つ地面が開き、地下に通じる道が現れる。

???「それでは、行きましょう」

薩真「(え?え?なんか鉄の棒を掴んだら地面開いたし、これが普通ですよみたいにされてるし。頭お菓子になるで!)」

???「薩真様?」

薩真「あっ!は、はい!でも、どうすれば…」

???「そのまま滑ってくだい。あとは、道なりに案内してくれますので」

薩真「は、はぁ…」

俺は、半信半疑になりながらも滑り台に座る。

薩真「(良いんだよな…本当に良いんだよな…)」

そう考えていると自分の後ろにさっきの黒服の人がやって来る。

薩真「?」

???「とっとと行かんかい!」

その言葉と同時に背中を押されると滑り台を一気に滑り落ちて行く。

薩真「あーーーーーー!」

その後に続いて黒服も滑り落ちて行くと開いてた部分が閉じる。

滑り落ちること数分後、飛び出した所には大きなクッションがあり、そこに身を預けることになる。

薩真「た、助かった…」

気を落ち着かせた薩真は、クッションからゆっくり降りるとそこは本棚や椅子、机にベッドとまるで勉強部屋の様な景色が広がっていた。

薩真「ここは…」

しばらく周りを見ていると部屋の扉の方からさっき聞こえていた人の声が聞こえて来る。

???「どうやら、無事のようだな」

薩摩が扉を見るとそこにはある制服を身に纏った1人の男性の姿があった。

薩真「貴方は…もしかして、さっきの…」

???「記憶力は、良い様だな。ああ、さっきの黒服は、私だよ。そして、私自身の名は、ガーデン、アーカイル・レイ・ガーデン、このSATG(スタッグ)基地の長だ」

次回へ続く…。

次回 第3話「光と闇」

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